二十三話
皆さんゴールデンウィークはどのようにお過ごしですか?
私は日がななにもしておりません。三度寝最高なのです。
あ、ケータイ買い換えました。五千文字越えても普通にかける。タッチした場所がずれる事もないです。これからも細々とやっていきます。
「つぅ~・・・」
「大丈夫か?」
ミカはぶつけた頭をさすりながら立ち上がる。またもリリィが、近くにいたが今回は膝枕をされていたということはなかった。
その代わり横で頭を撫でられていたようだが。
「起きたか」
なにやらギルド組で話し合っていたようだがミカが起きたのに気づいて近寄ってくる。
「何を話してたんですか?」
「お前さんの魔法特性についてだ」
ミカの疑問にギルド長が答える。
「お前さんがどうして熱属性の魔法が使えないのか全く分からなくてな。他の魔法も見てみたいんだが・・・」
「ダメです。ミカさんは今日魔法を知ったばかりですよ?いろいろ試してますから消耗してるはずです」
ギルド長の言葉を結構強めにルルが止める。
「妾としては己の扱える魔法は早めに知っておく方が良いと思うのだが、無理をしてまでやることではない」
「ミカさんはどうしたい?」
リリィの言葉に続けるようにしてナナが問いかける。話が平行線になっているからであろう。
「・・・僕は続けたいですね」
「しゃあ!」
ギルド長が握り拳を作って声を上げる。
そんなギルド長にジト目を向け、ルルはミカに心配そうな表情を見せる。
「ミカさんが言うならいいんですけど・・・。無理はしないでくださいね?どこか違和感があったらすぐに報告すること。これは守ってね。いい?」
「ええ。了解しました」
ルルはミカの返事を聞いて少し離れる。それでもまだ不安そうな表情を隠しきれていない。
「じゃあミカ、早速魔法の実けーーンン、あー・・・検証?を始めようか」
「ギルド長・・・。ミカさん、本当に無理はしないでくださいね?」
「ええ。もしものときはルルさんにすがることにします」
不安になったのか、ちょっとした安全策を作っておくミカだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔法の実験を始めるということで、ルルだけでなくナナとリリィもミカ達から離れる。
場所は同じく魔法の訓練所。そこの中央辺りでミカはギルド長と並んで立っている。
「じゃあ、まずはどの属性が使えて、どの属性が使えないのかを調べるぞ」
「はい」
「熱属性と風属性はもういいな。まずは雷属性だ」
ギルド長は掌を上に向けて唱える。
「サンダーボール」
バチバチバチ!と球形の雷が表れ、上空に飛び、ビシャン!と弾けて消えた。
「やってみろ」
ミカは頷き集中する。
「・・・サンダーボール」
何も起こらなかった。
ミカは逃げたくなるのを必死に堪える。
「雷属性もダメか・・・。次だ。アクアボール」
今度は水の球体がぽよん、と跳ねてべちゃっ、と落ちる。
「・・・見た目がよろしくないですね」
「うっせぇ。水は苦手なんだよ」
ミカはそれを見て、ああ、強い人でもできないことがあるんだ、と少し落ち着きを取り戻し、魔法を発動する。
「アクアボール」
ピチャン、という音をたてて水球が出来上がった。
「・・・」
ミカの手を包むようにして。
「・・・できた?」
ミカはなんとも言えない表情で呟く。これも飛ぶイメージをしていたつもりだったのだ。
「それは、飛ぶのか?」
ギルド長の問いに答えるようにミカは手を前に突きだし唱える。イメージは目の前の水球が前に飛ぶように。
「アクアショット」
何も起こらなかった。
ミカは腕を振りながら唱える。イメージは刃が前方に飛ぶように。
「・・・ウォータースラッシュ」
ビシュ!という音をたてて水球の形が変化した。
まるで高圧で流れているかのような状態でミカの手を包んでいる。外側がとても薄い。そのさまは刃のようだ。
だが、飛ばない。
「・・・変化はしました」
「ああ、変化は、な。で?飛ばねぇのか?」
「・・・飛びません」
ミカは何度も腕を振ったり、突きだしたりして飛ばそうとするが、水はミカの手から離れない。
「ふむ。形は変わるが飛ばないか・・・。発動がおかしいって訳じゃなさそうなんだが・・・。にしても、面白いな・・・纏う魔法は結構危険だったと思うんだが・・・」
ミカの魔法を見てギルド長は誰にも聞こえないような声でぶつぶつと呟く。
「えっと・・・どうします?」
ミカは水の刃を消して問いかける。魔法を消すのはイメージを止めればいいだけで楽だ。
「ん?ああ、次は地属性だな。上位属性はミスると危険すぎるから止めておく。とりあえずこれがラストだ」
ミカの問いにギルド長は、こういうことは魔法に詳しい人に聞くのがいいと思い直す。ここは冒険者ギルド。そういった輩は多い。そうでなくとも副長は魔法タイプだ。判断は任せよう。
そんなことを思いつつ講義を再開する。
「んじゃ、いくぞーーーロックランス」
ギルド長が地面に手を置くと同時に土が盛り上がり大きな槍が出来上がる。
「おおー」
ミカは感嘆の声を上げる。大きさは五メートル程で、紋様も描かれている。槍にしては大きな刃が本当に土でできているのかと疑いたくなるような光沢を放っている。
「ほれ、やってみろ」
おそらく、ギルド長は地属性が得意魔法なのであろう。どや顔でミカに言ってきた。
「いや、こんなのできませんよ。レベルを考えてください」
当然、ミカは首を横に振る。
「別にここまでのことは求めてねぇよ。それにこれは次の検証に使うものでもあるからな。地面で作る槍は不格好でいい。発動が出来るかを見るだけだ、棘でもいい」
ギルド長は自分が作った槍の強度を確かめるように叩きながら言う。表情は笑顔。満足のいくできだったのだろう。
ミカは諦めて両手を地に付け、唱える。
「ロックランス」
何も起こらなかった。
ミカはもう慣れたのかため息を吐いただけだった。
「よし、次は威力だ。風か水の刃でこれを斬ってみろ」
ポンと手を槍に付けて言う。ギルド長も魔法が発動しなかったことについてはスルーしている。
「ウィンドカッター」
ミカは待ってましたとばかりにすぐさま風の刃を作る。威力についてはミカもずっと気になっていたのだ。
ミカは無言で槍に近づき風を纏った手刀を放つ。
抵抗は感じなかった。
(これって。鎧男の時の?)
ミカはリリィと初めて会ったときの戦闘でのことを思い出した。
あのとき、ミカはこの魔法を使って鎧男の首を斬り飛ばしたのだ。
「「嘘っ!?」」
「・・・マジかよ」
槍がスライドするようにして落ち、倒れる。
それをギルド組があり得ないものを見たといった表情で凝視している。
「も、もう一度だ」
ギルド長が言う。プライドが刺激されたようだ。
再度地面が盛り上がる。先程と違い刃が上下に付いている。
両刃槍と呼ばれるものだ。ただし、大きさが五メートル程あるが。
ギルド長はそれを手に持ち防御の構えを取る。
「来い!」
「ええっと・・・。では、行きますね?」
初心者相手に本気になっているギルド長に少々引きながらもミカは纏ったままの魔法を当てるために近づく。
流石はギルド長と言うべきか、その構えには隙が見当たらない。
(まぁ、今回は関係ないからいいけ、ど!)
ミカは手刀を降り下ろす。狙いは真ん中辺りの持ち手部分。もちろん、ギルド長の腕は避けるようにして。
ミカは先程、簡単に槍を斬ることが出来たせいで油断していたのかもしれない。
ギチッ...ガッ!
「痛っつ!」
「ははぁ・・・なるほどなぁ」
ミカの手刀は両刃槍と一瞬拮抗するように止まる。拮抗したのは本当に一瞬。すぐに動いたミカの手刀は両刃槍に傷ひとつ付けることができず、両刃槍の柄に手を強打する。
それを見て、ギルド長はしきりに頷く。
「ミカ。確信が欲しい。もう一度だ」
「何で二回目がダメだったのかはーーー」
「やったら教えてやる」
ギルド長が再度構える。
ミカは痛い思いをしたくなかったので何が『なるほどなぁ』なのかを教えてもらいたかったが、それを言い切る前にギルド長に止められた。
ミカはため息を吐いてもう一度魔法を使う。
「ウィンドカッター」
風の刃がミカの手刀に宿る。
ミカはそれを確認してギルド長に向き直る。
(実戦では、軽く使えるようにならないと)
実戦で敵から視線を離すのは自殺行為だ。だが、今のミカは魔力に集中しないと魔法を発動できない。これでは、実戦で使えない。
(まぁ、そのための実験だから、気にしない気にしない)
その場で手刀を軽く振るって意識を切り替える。失敗は当たり前、と。
ギルド長の構えには先程のような迫力が感じられなかった。構え事態は同じだから意識が違うのだろう。
「では、行きます」
ミカは先程と同じように両刃槍の柄に手刀を降り下ろす。
ギチッ...ガッ!
「痛っつ!」
結果も同じだった。
ミカは涙目でギルド長を睨む。痛い思いをしたんだから収穫は有ったんだよね?という意味を込めて。
「最初に斬った槍と、斬れなかった槍の違いが分かるか?」
だが、返ってきたのはまさかの質問だった。
「・・・刃の数ですか?」
ミカは正直、結果を言えよと思っていたが、自分が教えられている立場だということを理解しているので、しぶしぶ答える。
「違う」
「・・・材質ですか?」
「違う」
「・・・手に持ってるか否かですか?」
「正解」
ギルド長は槍をクルクルと回しながら言う。
「正確には、魔力を槍に流し続けているか否かだがな」
「魔法には魔力が使用され続けているのではないのですか?」
ミカはギルド長の言葉に首を傾げる。この世界最初の夜のときにリリィの言った、燃やし続けるには魔力を消費する。と言う言葉を覚えていたのだ。
ギルド長は槍を回す手を止めて、説明を始める。
「いや、それは違う。魔法は放つ際に魔力を消費し、打ち出す。その後は自然現象だ。炎なら燃えるし、地属性の魔法なら隆起した大地や、植物がそこに残る。もちろん、火の点くものがなければ炎は消えるし、創られた植物はすぐに枯れて消えるが、それを魔力で補うこともできる。お前さんが言ってるのはこっちのことだろう?」
だろう?と言われてもミカは分からないのでリリィを見る。
「?」
彼女は話を聞いていなかったようで、ミカに見られている理由が分からずに首を傾げる。
「でだ、お前さんの扱う纏うタイプの魔法は魔力を消費し続けるものだ。自然現象にならず、魔法現象として存在し続けている」
ミカ達のやり取りを無視してギルド長は続ける。
ミカもこの話は重要だと分かっているので、文句を言うことなく真剣に耳を傾ける。
「魔法で創られたものと魔法で創られているものは・・・あー、なんつぅか・・・あれだーーー」
「物質には優先度があり、魔力によって上下関係を変えることが可能だ。魔法によって過去創られた物は既に自然物として確立されており、魔法によって現在創られておる物は魔法の領域として現実を塗り替えておる最中のため、自然物としてそこにあるものよりも優先度が高くなっておるのだ。
つまり、ただの物質は魔法に弱い」
ギルド長が説明に窮し、リリィが代わりに説明をする。先程まで聞いていなかった子とは思えないほどに難しい言葉をスラスラと言っている。
ミカには彼女のいっている言葉、その最初と最後の一文しか理解できなかった。
「おお、詳しいな嬢ちゃん。助かった。
もちろん、魔力を流しているからといって全ての物質を斬ったり穿ったりできる訳じゃねぇ。
さっきも言った優先度。これを魔力の質が上回ってねぇとダメだ。自然に存在している物質にも優先度にバラつきがある。
壊れにくいものが優先度の高いものって覚えときゃいい」
そこでギルド長は一旦言葉を切って、足下に転がっている斬られた方の槍を持つ。
「お前さんの魔法は魔力の質がかなり高ぇ。俺のロックランスはそう簡単に斬れるもんじゃないと自負してたんだがな。抵抗、感じたか?」
「・・・ええっと、その、失礼だと思いますが、全く感じませんでした」
ミカは何となく罪悪感に苛まれながら答える。
「今まで、この槍を傷つけた奴なんて数人だけだったんだが、俺も衰えたのかねぇ。そんな歳じゃねぇはずなんだがなぁ…」
ギルド長の呟き。その姿はどことなく哀愁が漂っていた。
「二回目が斬れなかったのは、魔力の質で負けたからですか?」
「いや、違う。そもそも質は生まれつきのものだ。力を込めたって質はほとんど変わらない」
ミカの予想をギルド長は否定する。
「でも魔法の威力は質によって変わるんですよね?」
「それは対象物が自然物の場合だ。魔法同士がぶつかる場合、質より密度の高い方が勝つ」
ミカは首を傾げる。頭が少々こんがらがってきはじめたようだ。
「お前さんの魔法の中身がすっからかんって訳じゃねぇ。必要最低限の魔力だけで魔法を発動してんだ。それこそ、素人が漏らしている魔力よりも少ない量で一切の無駄なくな。遠距離魔法が全く使えないくせに魔力のコントロールが恐ろしいほどに上手い。玄人顔負けのレベルだ」
ミカが首を傾げているにもかかわらずギルド長は説明を続ける。
「話を戻すぞ?量が少なければ高密度の物は作れない。お前さんの魔法は魔力が少ないから圧縮ができねぇんだ。その状態だと魔力のコントロールができてない素人、いや、戦闘に関わってない奴さえ斬れない。無意識に垂れ流してる魔力よりも密度が薄いんだ。これはある意味では凄いことだが、戦闘では使えない」
「でも、使ってみてわかったことなんですが、これ、僕は前にも一度使ったことがあるんです。それでは敵を斬ることができたんですけど?」
ミカは敵、と曖昧な言葉で言っているが、つまりはこの魔法で人を殺したことがあるが、それだと話がおかしくなってしまうのだ。ミカの魔法は魔力を持つものを斬れないと言われたのだから。
「へぇ。お前さん、結構強いのと当たったんだな」
ギルド長は意外そうに眉を上げながら言う。だが、それは敵を斬れたことにではなく、魔法もろくに使えない状態で強敵に勝利していることにたいしてだ。
「お前さんが斬れないのは魔力をコントロールできてない奴だ」
「できてない?普通逆じゃないですか?」
「ベテランは長期でも戦えるように力を温存する。そのためには魔力を漏らさずにコントロールし体内に留めるのが一番いい。魔力は体内で貯蓄しておくってこともできるからな」
「それが、何で、僕の魔法で斬れるようになるんですか?」
ミカの質問にギルド長は首を横に振りつつ答える。
「詳しくはわかってねぇ。が、体内にある魔力は外に出た魔力と別物なのではないか、つぅ説がある。ここら辺は現在研究中だ。...どこから手をつけていいかさえわかってねぇらしいがな」
歯切れ悪くギルド長が言う。
「・・・ふむ。要するに、僕の魔法で相手の魔法を斬ることは不可能ってことですね」
ミカは、ふむ。とか、要するに。とか言っているが半分以上理解していない。
「いや、不可能じゃねぇぞ?。流し込む魔力を増やせば良いだけだ。それに、流し込む魔力を増やせば効率は良くねぇが壊れなかった自然物を壊すことも可能だしな」
質は量で補えるってことだな。人と同じだ。とギルド長は締めくくり、パン!と手を叩く。
「ちょうど話に出たし、やってみるか」
そう言ってギルド長は槍をつき出す。
「魔力を流しとくから、斬ってみろ」
「・・・流し込む魔力を増やせばいいんですよね?」
「そうだ。ただし、俺のはそう簡単に斬れるもんじゃねぇぜ?」
ギルド長がどや顔をして言っているが、ミカはそれを無視して集中する。
「ウィンドカッター」
ミカの手を風の刃が包む。
(ここから更に魔力を流し込む!)
ミカはもう片方の手で腕を持ち、グッ、と力を込める。
魔法はイメージできれば効果が表れる。
ミカの手を包んでいる風がうっすらと緑色に変わる。前回が透明だったので確証はないが、刃も伸びている気がする。
「・・・行きます!」
ミカは槍に手刀を降り下ろす。
ギチギチギチ。今回は拮抗する。
「お?中々いい線いってんじゃねぇか」
だが、ギルド長の槍は斬れない。
ミカは更に魔力を込める。が、
「・・・痛ッ!」
唐突にミカは頭を押さえてうずくまる。魔法をイメージし続けることができず、風の刃は霧散した。
「「「ミカ(さん)!!」」」
離れたところで見ていた三人がミカに駆け寄る。そして、三人全員がギルド長を睨む。
「いや俺のせいじゃねぇよ!なにもやってねぇって!おい!」
ギルド長が喚いても睨み続ける女性陣。
「すみません。大丈夫です。ありがとうございます」
ミカの頭痛はすぐに収まり、ミカは頭を下げる。
三人はホッと胸をなでおろす。その拍子に双子の双子山がたゆんと揺れてミカは視線をそらす。
そらした先はギルド長が考え事をしていた。
「ミカ、ここまでだな。おそらくそれは魔力が枯渇しかけてるサインだ。無理しない方がいい」
先程まで狼狽えていたのが嘘のように落ち着いた声でギルド長からのストップを出される。
「分かりました。ありがとうございました!」
ミカは立ち上がって頭を下げる。体育系のスポーツをやっていたのでこれは癖だ。
「おう、結果は後でな」
そう言ってギルド長は出口に向かう。
「え?・・・あ、はい」
ミカはギルド登録に来ていたことをすっかり忘れていた。
以上、魔法の説明でした。
もちろん、まだまだ主人公さんには隠し設定があります。
・・・そこまで行けると良いなぁ~。
頑張ります。
あと、書けなかったのでここに書きますが、ベテランは必要な魔力を必要な場所にだけ持っていったりしています。ミカが、鎧男を斬れたのは、避けられると思っておらず、対応が全くできてなかったからです。
次週
お金と貴族はトラブル源、です。




