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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
二章 武闘大会
19/111

十七話

デジモンワールド発売!!

今からプレイです\(^-^)/

 合図と共にフェルディナ選手が居合いの構えで飛び込んでくる。

 最初は様子見なのかその速度は少し足の速い人程度。今までの彼女の試合とは比べ物にならない。おそらく、身体強化を行っていないのだろう。


 ミカはその居合い斬りを受け止めて首をかしげる。威力の方も大したことはない。

 彼女は最初から全力でくるような性格をしていると思っていたミカは、無理やり鍔迫り合いの形に持っていって疑問を投げ掛ける。


「どうしたんですか?体調、悪いんですか?」


「貴方が身体強化を行わないので。勝負は対等であるべきです。何故、貴方は強化魔法を使わないのですか?」


 騎士道精神溢れる言葉が返ってきた。


(いや、使わないんじゃなくて、使い方を知らないだけなんだけど・・・)


 ミカはそんなことを思いながら、フェルディナ選手にだけ見えるように、相手を見下した視線を送りながら笑顔を浮かべる。


「必要ないからですよ。貴女程度では・・・。どうぞ、お構い無く本気で来てください。僕に魔法を使わせたら称賛いたしますよ?(いや、ホントに)」


 ここまで勝ち残ったミカはちょっと調子に乗ってそんなことを口走る。ただ、意味もなく強者を演じたかった。

 最後の一言だけは誰にも聞こえないように口の中で呟く。できないことをさせたら本当にすごいと思う。これだけは本心だ。


 当然、これを直接聞いたフェルディナ選手は怒気を放ちながらミカを至近で睨んでいる。


 ミカはちょっと後悔した。


 彼女の力がどんどんと強くなっていく。魔法を自分にかけたのだろう。

 近くで見れば何かしらの変化が分かるかもと思ったが、詠唱も、光ったりも、魔方陣が現れたりもせず、静かな身体強化だった。

 本当に怒りだけで力が強くなったのかもと一瞬思ったが、リリィの放ったシャドウエッジやシャドウホールも音や魔方陣は無かったのでこれが一般的なのだろう。戦闘ではやりにくい。


(あれ?じゃあ何で僕が身体強化してないって分かったんだろ?)


 考察をしているうちに、フッ、と力が消える。


(あ、ヤバッ!!)


 正面にフェルディナ選手の姿が無くなっている。


 ミカはとっさに前へと跳ぶ。


 直後に背後から、先程ミカの首があった場所に剣線が走る。


(ちょっ!?殺す気満々ですか!?)


 勢いそのままに前転して立ち上がり、すぐさま振り返る。フェルディナ選手は不敵に笑っていた。


 ミカは挑発したことを本気で後悔した。


「私程度(・・)の攻撃で随分と慌てていたようですね?」


 彼女は再度、居合いの構えを取りながらミカに問いかける。問いかけてはいるが、答えを聞くつもりは無いようで、そのままミカへと突進する。

 今度は身体強化を行っているようで、霞むような速度だ。


 一瞬でミカの真横を通過して、またも首を狙った居合い斬りをスレ違いざまに放つ。


 ミカはそれを、剣の腹で斜め上へと受け流す。頭上ギリギリを通過したため、ミカの長い髪が数本斬り飛ばされている。ミカは安堵の息を吐いて振り返る。


「そんな、ありえない・・・」


 フェルディナ選手は驚愕の表情を浮かべていた。


「何が、ありえないんです?」


 答えは分かっているがミカは問い返す。


「生身でこの速度についてこられるはずが無い」


「自分の目で見たのでしょう?それが真実です」


「・・・先程の斬撃は見えるものではないはず。それを一体、どうすれば生身で対応できるというのですか」


「戦っている相手が、それを答えるわけ無いでしょう。・・・そう言えば、貴方はどうやって剣を交える前に魔法の有無を?」


「向かい合えば分かるものです」


 ミカは、これだから天才は・・・、と呟く。

 彼女は警戒して攻めてこない。それをいいことにミカは彼女の全身をじっくりと見つめる。

 別に彼女が美人だからとかそんな理由ではなく、彼女がどうやって魔法の有無を見極めているのかが気になったからだ。

 ミカは彼女の言葉をそのまま信じたりなどはしなかった。戦闘では言葉も攻撃のひとつと理解しているからだ。


 ミカの思い付いた可能性は二つ。


 一つは生まれつき、あるいは、何かしらの努力によって魔力を見ることのできる目、魔眼を持っている可能性。真っ先にこれを思い付き、期待している辺り、ミカの中二病はまだ治りきっていないようだ。


 もう一つは、魔道具的な目立たない何かを装備しているとかだ。アクセサリーと言い換えてもいいかもしれない。


 前者は調べる方法が無い。いや、それでもミカはフェルディナ選手の目を大分凝視していたが、色が変わる等ということは無いようだ。表情には出さないが、ミカはちょっと落胆していた。


 となると、調べることができるのは後者しかない。

 ミカは彼女のさまざまな部位を染みひとつ逃さないように見つめる。その視線が胸の方に多く向けられているのはミカも男ということだろう。


 そして、見つける。トラックに乗っていた時は着けていなかったアクセサリー。


「・・・イアリング」


「ッ!?」


 彼女がピクッと反応する。驚愕の表情も隠しきれていない。やはり、このような行いには慣れていないのだろう。

 彼女の両耳たぶには穴を開けないで、挟んで止めるタイプの銀色ピアスが付けられている。髪が銀色なので見つけにくかった。


(まぁ、分かったところでそもそも僕、魔法使えないから関係無いんだけどね)


 ミカはそもそも魔法を教わったりしていない。その魔道具がいくら高性能で、例え発動前に魔法の予測ができたとしても使えない相手には意味がない。


「おや?どうしたんですか?」


 ミカは少し嫌らしい笑みを浮かべている。


「・・・」


 フェルディナ選手は無言で構える。ルドゥマナ選手との試合で使っていた連続での居合い斬りの構えだ。


 ミカもそれを見て構えを変える。

 それは構えとは言えないような構え。全身の無駄な力をすべて抜いて、相手がどのような動きに出てもすぐに防御に回れるようにする、攻撃を一切考えない構え。

 ガラデューク選手相手に見せた構えだ。


 フェルディナ選手はミカの構えていないような構えを見ても警戒を弛めるようなことはしない。


 会場も、しん・・・、と静まり返っている。


 まるで合図を待っているかのような状態で互いに睨み合う。


 どのくらい経過したか分からないが、突然その睨み合いは終わり、試合が動き出す。


 当然、防御の構えだったミカは動いていない。


 フェルディナ選手が霞むような速度で動きミカに迫る。先程と違うのは、やはり、彼女の表情。防がれる、あるいは避けられるとを前提に考えている一切の油断をしていない表情だ。

 そして、もう一つ。狙いが首ではなく胴体になっている。


 ミカはその一撃をきちっと防ぐ。


 が、彼女の攻撃はここからだ。ミカとすれ違ったフェルディナ選手は反転し、再度飛び出す。

 ミカは何とか振り返るのが間に合い、彼女の構えを一瞬だが、見ることができた。


 二撃目の狙いは少し浅目の左横腹。


 ミカは回避を選択する。右に跳びながら半回転をして、彼女の動きを観察する。


 三撃目は先程よりもほんの少し速くなっている。狙いは同じ。


 ミカは足の動きを注視しながら防ぐ。


 四撃目もまた同じ斬撃。だが、ミカは振り返っていない。防いだせいで間に合わない。


(当たる!)


 フェルディナ選手はそう思ったが、


 ミカは振り返ろうともせずに前へと跳ぶことで回避する。


「ッ!?」


 フェルディナ選手は回避されたことに驚愕するが、攻撃を止めずに再度振り返り、飛び出す。


 ミカは振り返らなかったため、目の前で彼女の動きを見ることができた。

 ミカは彼女の足を視界の隅に入れて、腕や手の握りなどを注視する。


 五度目の斬撃をミカは剣を滑らせるようにして受け流す。


 ミカは振り返らない。


(もらった!!)


 フェルディナ選手はここで狙いを変え、ミカの後ろ首を狙った居合い斬りを放ち、



 キィ!!とミカは背中を見せたまま(・・・・・・・・)逆手に持ち換えた剣で斬撃をそらす。


「なっ!?ッ!?」


 ミカは驚愕の表情を浮かべているフェルディナ選手に向けて、背中を見せたまま、剣の向きを変える。


 そのまま突っ込めば顔に突き刺さるように。


 フェルディナ選手はとっさに転がるようにして回避する。

 速度がそのままだったのですぐには止まらず、ゴロゴロと全身を地に打ち付けながらも何とか剣を地に刺し、停止する。


 ミカはその場を動かない。

 ただ、じっとフェルディナ選手を見つめている。


(見切られた?この短い間に?)


 フェルディナ選手は再度構えながら思う。ありえないと。

 確かめるために同じ技を使おうとして、


「初撃は僕の左足の付け根」


 フェルディナ選手は飛び出す。ミカの呟いたのと同じ場所を狙って。


「な、ん」


「停止するのは僕の背後、右に三十度前後」


 スレ違いざまに再度ミカが呟く。


 そして宣言通りの場所で停止する。


「何故・・・」


「次は僕の右脇腹を狙ってたでしょ?」


「・・・何故、そう思うのです?」


 振り返りながらのミカの台詞を聞いて、フェルディナ選手は一瞬だけ驚愕の表情を見せた。図星だったようだ。

 それでも、表情を隠しているつもりのようでフェルディナ選手は落ち着いた声でミカに問いかける。


「貴女はとても分かりやすいですね」


「何?」


 ミカの小さく笑いながらの台詞にフェルディナ選手の目が鋭くなる。

 それでもミカは笑顔を崩さない。


「貴女の攻撃には癖があります。その上、その技にある欠点。癖はともかく、欠点の方は貴女もわかっているのでしょう?」


「・・・」


 フェルディナ選手は何も言わず、続きを促す。


「言っていいんですか?

 貴女のその技、前半はともかく後半の速度は貴女自身の動体視力を越えていますね?」


「ええ。まだ貴方にはそこまでの速度は出しきれていなかったのによくわかりましたね?ですが、それのどこが欠点だと?」


「本気で言ってますか?」


「・・・」


 彼女は何も言わない。


「ちゃんと理解しているんですね」


 ミカは笑顔のまま話を続ける。


「そのせいで攻撃が分かりやすくなっていることに」


「ええ。ですがそれは速度で誤魔化せる」


「本気で言ってますか?」


「え?」


 ミカの全く同じ問いかけに今度はフェルディナ選手が疑問の声を上げる。

 その声にミカは落胆の表情を見せる。


「ありえない。本気だったんですね。では、一つ宣言しますよ。貴女のその技、どれだけ速度を上げようと僕にはもう永遠に当たりませんよ」


「ほう?試してみるか?」


 ミカの台詞にフェルディナ選手は構え、答えも聞かずに飛び出す。

 速度は先程の倍近く出ている。


 ミカは慌てず初撃をそらし、二撃目を背中を向けたままさらにそらす。


 その後も、十数秒で二十をゆうに越える斬撃を、奇数撃は正面を向き合って斬撃を見ながらそらし、偶数撃は背中を見せたままそらす。


 どれだけ速度を上げてもフェルディナ選手の攻撃はそらされる。


 斬撃が五十を越えたころフェルディナ選手が停止する。


 フェルディナ選手は肩で息をしているが、ミカは涼しい顔で立っている。これはフェルディナ選手の方が体力が少ない、ということではなく、運動量の差だ。

 彼女は動き回っていたのに対して、ミカはその場をほとんど動かなかったのだ。


「ハッ・・・ハァ・・・、クッ。何故、当たらない」


「言ったではありませんか。貴女の攻撃は分かりやすい、と」


「見ていない、攻撃まで・・・。私の、癖の、せいだとでも言うのか?」


正解(せいか~い)


 フェルディナ選手が独り言のように呟いた言葉にミカは片手で剣を(もてあそ)びながら答える。


「長くなるけど、説明、欲しいですか?」


 ミカの問いに、フェルディナ選手は少し悩んで首肯する。

 目的は時間稼ぎだろうがミカはあえてそれに乗って説明する。


「まず、視線。貴女の攻撃は最初の構えで初撃の位置、一度停止する位置、二撃目の位置の順に目を向けています。その後は常に次の停止する位置と二撃先の攻撃場所を見ています。これは自身の動体視力を越えているせいで、そうしないと攻撃が雑になるからでしょう。背後に居るときは目を見ることができませんが、正面から来るのなら貴女の攻撃を見ながら対処ができます。


 次に足。貴女の構えは真っ直ぐ相手の背後に回るときは足を肩幅に開いて、右足を少し前に出して構えています。貴女から見て、相手の右背後を取る場合は右足の先が少し外側を向いています。左背後を取る場合は足が肩幅より大きく開いています。これも背後に居るときは構えを見ることができませんが、攻撃位置は視線でわかっています。あとは、大体の位置から攻撃角度を計算すれば、防ぐのは難しくありませんし、背後から前に出てくるので位置を見逃すことはありません。


 次に腕。威力が低い連続重視の攻撃は必ず一度柄から手を離し握り直しています。重たい、決め手の攻撃の際は二撃前に左手で鞘を強く握り、直前の時は柄から手を離さず握りしめています。


 これらの情報が貴女の構えにあるのです。見切るのはそう難しくありません」


 フェイントもありませんからね、ミカはそう締め括る。


 簡単そうに言っているが、フェルディナ選手の構えは本当に一瞬だけだ。その一瞬でミカは三ヶ所もの癖を全て見切っているのだ。


「ありえません。一瞬で、そこまで見切るなど不可能です」


「目には自信があります」


 彼女の言葉にミカは即答気味に答える。


「さて、この技しかないのなら貴女には勝ち目がないので降参を薦めます。どうしますか?」


「まさか。するわけが無いでしょう?それに、先程の剣撃で分かったことがあります」


「何です?」


 ミカの提案をあっさりと捨ててフェルディナ選手は言う。言葉を使ってミカが隠そうとしていたことを。


「技など無い純粋な剣技では私の方が上ですね。貴方と違い、何十と打ち合わなければ分かりませんでしたが」


 後半の台詞は少し自嘲気味に言う。


 ミカの家には剣があり、剣術も父から教わっていたため、剣を扱えるがミカは剣士では無い。

 純粋な騎士に剣技で勝てる道理など無いのだ。


「貴方には小細工などないほうが良いようですね」


 そう言って、彼女は細剣を抜いて突きの構えを取る。呼吸は既に整っている。


「そうですね。あくまで、純粋な剣技は、ですけれど。その判断は僕も間違ってないと思います。ですので、次はこちらが技をお見せ致します」


 ミカは彼女とは逆に剣を鞘にしまい、構える。


「なんの真似ですか」


「保険だよ」


 ミカの構えは、鞘に入ったままの剣を右手に、人指し指と中指で鍔を挟むようにして、逆手に持っている。親指と人指し指は柄を握り、中指、薬指、小指は鞘の上に乗せ、その腕を背に隠し、左手で地面を掴んでいる。足は肩幅より少し大きく開いて前後にずらしている。スタートダッシュの構えに似ている。


「殺さないための」


 ミカは今まで明るかった声や表情を急に消す。


 フェルディナ選手は急に変わった雰囲気に一瞬だけ固まり、その隙にミカが彼女の懐に飛び込む。この試合で一度も見せなかった攻撃的な行動。


 ミカは全力で彼女の側頭部を狙った横凪ぎを放つ。


 フェルディナ選手はとっさに細剣を盾にして防ぐ。


 ぶつかった瞬間、ガキィ!!と大きな音が、会場に鳴り響く。それに紛れて、小さな、真横でですら聞き逃しそうな、スッ、という音。


 フェルディナ選手の視線は激突の一瞬だけミカの剣を、正確には鞘を見ていた。その瞬間はミカから視線を外していた。


「え?」


 小さな音に反応したフェルディナ選手が再度ミカを見たとき彼は右から左へと剣を振り切った体制を取っていた。


 彼女の横で鞘が落下を始める。


(なんーーー)


ベルン流(・・・・)虚に惑う死の一閃(ホロウ・リッパー)


 疑問を思う暇もなく腹部中央を狙った抜き身(・・・)の剣による突きが放たれる。


 フェルディナ選手はとっさに身を捻り、致命傷だけは避けるも、横腹に深くミカの剣が差し込まれる。


「うぐぅ!?」


 フェルディナ選手は痛みに耐えながら剣を抜き、同時に離れるため背後に真っ直ぐ跳ぶ。


 ベルン流。これはミカの、三神家の道場で、家族にのみ教えられている剣術。

 周りに教えないのは歴史が浅すぎるからだ。ミカ達の祖父が作った剣術らしい。

 胡散臭い。きっと、他者の剣術をいろいろパクったものだろうというのが三神兄弟の共通認識だ。ついでに、祖父は中二を卒業できなかったのだろうということも。

 なぜなら、この剣技、漫画とかに出そうなものが多い。

 ミカ達が初めて見たある奥義書にはこう書いてあった。


『剣先に 力を集中させ、六つの刃を作り 己を中心に離れた敵を等間隔に切り裂く。その刃にさらに 力を込めて爆発させ 粉砕する。残った痕から、血の()海に()浮かぶ()六枚()花弁()と名付ける』


 バカじゃないの。読んだ二人は口を揃えてそう言ったらしい。ついでに本気で練習していた父にも。


 内心で格好いいとか思ったことは一切表に出さず。


 このベルン流はミカではなく、弟の大蛇が得意としている剣術だ。

 もちろん、こんな馬鹿げた説明の技だの、秘術だの、奥義だのは大蛇も使えない。

 一応、比較的まともな奥義書とかはあったので大蛇はそちらだけ使える。


 ミカの使った剣技、虚に惑う死の一閃(ホロウ・リッパー)もそのうちの一つ。この技だけは大蛇に勝てると自負している唯一の剣技。


 この技は簡単に言えば騙し討ちだ。

 鞘を叩きつける前に腕を大きく後ろに持っていくことで剣の鍔辺りを隠し、その間に鞘からほんの少しだけ剣を抜く。

 この時、剣を振った際に鞘が吹っ飛ばないように、かつ、少し力を入れれば簡単に抜けるようにする。これがかなり難しい。


 そして、その鞘付きの剣を相手に叩きつけ、その力によって抜けた剣を可能な限り鞘に触れさせず、かつ、素早く抜き、振りきるようにして、突きの構えに持っていく。

 これを行うためには、剣を鞘から抜く際にどの向きどのくらいの力加減で抜くと音が出にくいかを気が遠くなる程何度も何度も鞘から剣を抜く作業を繰り返して見つけ、そこからさらに体に覚えさせるために同じ作業を繰り返さなければならない。


 そして、突きの構えを取ったあとは、相手の隙だらけの体に剣を突き込むだけだ。


 相手が鞘を意識したときには既に中身は(うつろ)。それに惑わされた相手の正面にできた死角から死の一閃を与える技だ。


(やっぱ、朝のあれだけじゃダメだったか。音が出た)


 ミカは舌打ちをしたい気分だった。


 ミカはこの剣技を自宅の剣では無音で放つことができていた。この行為が普通不可能だということに、三神家の者は気づいていない。


 今回漏れたのはかなり小さい、目の前で聞かなければ気づかないほど小さな音。だが、その音にフェルディナ選手は反応して致命傷を与えることができなかった。


 ミカは剣を納刀しながらフェルディナ選手を見つめる。


 大きな傷は与えたが、継戦が不可能になるほどではない。


 自分の最も得意な剣技で決めることができなかったことでミカの熱が冷めた。

 それによって思い出したことにミカは頭を抱えたい気分に陥った。


(あー、何で目立ってまで勝ち残ってるの?僕・・・)


 元々目立ちたくないとか思って偽名を使っているくせに、現在、周りからの注目がものすごいことになっている。


「避けられるとは思いませんでしたよ」


 思っていることを一切表に出さずにミカはフェルディナ選手に話しかける。


「貴方は、殺す気はないと言ってなかったか?」


 対して、フェルディナ選手の表情は分かりやすいほどの怒りに染まっている。


 だが、その視線を受けてもミカはへらへらと笑いながら言う。


「敵の言葉を信じるなんて、甘い騎士さんですね」


 会話をしながらミカは剣を納刀する。


「リリィ!」


 ミカは、ポイッ、と納刀した剣を鞘ごと特別観戦席に居るリリィへと投げ渡す。


 彼の行動にフェルディナ選手も観客もそろって首を傾げる。何故武器を捨てたのか分からなかった。


 ミカは目立たないことを諦める。

 弟に自分の位置を知らせる方法を思い付いたのだ。開き直ったとも言う。


「・・・何の真似です?」


 フェルディナ選手の疑問に対してミカは宣言する様に口を開く。


「先の一撃をしのいだ貴殿に敬意を評して、()が神月流の一端、お見せ致します」


 自分の、この世界には(・・・・・・)存在しない武術名を。





一話で終わりませんでした

ケータイで書いてるので7000文字を越えるとなかなか書けなくなってしまいます

ごめんなさい

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