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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

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第358話 ◆不敵な七海総一郎3

 部屋に充満する殺気、その場にいるだけで御剣の身体は大きく震え始める。

 ガタガタと震えるその身体を抱こうにも、拘束具がそれを許さない。

 呼吸さえ奪われるような殺気に、玖命は即座に動いた。


「まずいっ!」


 玖命の手から放たれたのは微弱な風魔法。

 その風は瞬時に御剣の拘束を切り裂くも、御剣自身はその場に蹲ってしまい、動く事さえ叶わない。


「くっ!」


 その時点で御剣の一番近くにいたのが鳴神だった。

 救助を試みた鳴神が御剣に手を伸ばした瞬間――、


「っ!?」


 鳴神の右腕は千切れ飛んでしまったのだ。


「翔っ!」

「後輩!」

「鳴神さん!」

「鳴神クン!」


【命謳】メンバーの心配をよそに、不気味な雰囲気を漂わせる七海がボソりと言う。


「僕の麻衣に手を出すんじゃないよ……!」


 未だ宙を舞う翔の腕。

 歯を食いしばるも、鳴神のダメージは深刻。

 玖命は一直線に鳴神の腕に向かって飛び、それを掴む。


「ちと痛むが許せよ、後輩!」


 そして、山井は鳴神の胸元に足を乗せ、腕をキャッチした玖命に向かって押し出すようにして蹴り飛ばしたのだ。


「ナイスたっくん!」


 玖命が山井のアシストを称賛するも、山井の正面には未知の力を見せる七海。


「カァアアアアアアアアアッ!」


 山井が気合いと共に双剣を振る。

 しかし、その全ては見えないナニカによって防がれてしまう。


「なんとっ!? こやつ一般人ではなかったのか!?」


 山井の疑問に、誰も答える事は出来ない。


「装備しているアーティファクトがあるみたいですけど、それだけでこんな強さは……!?」


 そんな川奈の言葉を、水谷が否定する。


「ただのアーティファクトとはいえ、一般人には劇物も同じよ! 何でアーティファクトの衝撃に耐えられるのっ!?」


 疑問は新たな疑問を呼び、その疑問を解消する手段はどこにもない。

 ただ、目の前にいる七海総一郎の戦力が、圧倒的だという事。

【命謳】メンバーはそれだけを理解し、覚悟を決めた。


「【パワーアップ】、【闇駆け】……!」


 玖命の天恵によって、皆の戦力を更に底上げさせる。


「ららちん、援護を頼む!」

「むぉっちろんですよ!」


 大盾を構え、ヘイトを集める川奈。

 側面に飛び、山井の攻撃の間を縫うように水谷が奇襲をかける。

 その間、玖命は鳴神の回復に専念する。


「翔、しっかりしろ!」

「カ、カカカカ……中々いてぇじゃ……ねぇか」


 強がる翔に苦笑するも、玖命の心配は別にあった。


(一体、何だあの強さは……? 第五段階以上の戦力と互角以上に渡り合える能力……天恵? だとすれば――)


 相手が一般人だという概念を(かぶり)を振って捨て去り、玖命は【天眼】を発動させる。

 その目に映ったモノは――――、


 ――七海(ななうみ)総一郎(そういちろう)

 ――生年月日:西暦20XX年7月16日

 ――身長:179cm・体重:67kg

 ――天恵:【影法士(かげほうし)


「っ! 発現しているっ!?」


 玖命のその言葉だけで皆は悟った。

 七海が一般人ではなく、既に天才に至っているという事を。


「クククク……流石は【魔王】。バレてしまったか……!」


 ニタリと笑う七海の後ろでは、気を失った御剣が宙に浮く。


「……ありゃ、何の冗談じゃ……?」

「浮いてる! 浮いてますよ、山じーさん!」

「こ、こういうのは種とかしかけがあるんだよ、うん!」


 山井、川奈、水谷の焦りを横目に、天恵の名を見ていた玖命がいち早く気付く。


「ッ! 影だ! 七海の影に注意しろ!」


 玖命の指摘により、山井、川奈、水谷は、御剣の影を担ぐ人間のような影を見つける。


「こりゃまた珍妙な……!」

「何か影の人、おっきいですよ!?」

「うーん……流石に影との戦闘は修練してこなかったなぁ……」


 しかし、種がバレたところで、七海の余裕は変わらない。


「クククク……ご名答! ハッ!」


 直後、七海の影から無数の影が生まれたのだ。


「わっ!? わっ!?」


 急激に攻撃の手数が増え、守りを常とする川奈の負担が増大する。

 しかも、見なければいけないのは、正面ではなく、地面に映る影。

 距離感が掴めず、身動きも取れない。


「くっ!」


 山井が攻勢に移ろうとするも、やはり全てが弾かれてしまう。


「この……っ!」


 水谷の刺突連撃も、七海の影に阻まれてしまう。

 ハンドポケットで余裕を見せる七海だったが、その余裕が玖命によって崩される。


「【ファイヤーウォール】……!」


 直後に吹き上がった炎の壁。これによって七海の影がかき消されてしまう。

 それを見て、七海は苛立ちを見せる。


「チッ、流石に対応が早いな……!」


 睨みつける先には【ファイヤーウォール】を発動した伊達玖命。

 しかし、その腕に抱えられていた存在が見受けられない。

 瞬間、七海は焦りを顔に浮かべる。


「さっきはよくもやってくれたな〇〇〇〇野郎がぁあああああっ!!!!」


 吼える獣の正体はクラン【命謳】の【特攻隊長(ぶっこみ)】――【鳴神(なるがみ)(しょう)】。


「なっ!? くそっ!」


 既に腕はくっつき、回復を終えた鳴神は山井と共に猛攻を繰り広げる。

 攻撃を防ぐのは、七海の影の精鋭たち。


「何と、服の中からも出て来るのか!?」


 それを見て、山井がぎょっと驚きを見せる。


「外部の影が全てだと思わない事だな! ははははっ!」

「しゃらくせぇ! 数はそんな多くねぇ! 行くぞ先輩っ!」

「合点じゃ、後輩! カァアアアアアアアアアアア!!」

「るぉああああああああああああっ!!」


 ギアをトップまで上げた山井と鳴神。

 その全てを受けるも、そこに水谷が入れば話は別。


「これなら、どう!?」


 這うように、七海の死角から現れた水谷の攻撃により、遂に七海が劣勢に傾く。

 しかし、やはりそれでも尚、七海の余裕は崩れなかった。

 不審に思った玖命が先の七海との会話を思い出す。


 ――三つ、私には、クラン【命謳(めいおう)】に対抗する力がある……!


(違う……これがそれなら……その前は……?)


 (かぶり)を振って今一度遡る玖命。


 ―― 二つ、私にはこの場を打開する策(、、、、、)がある。


 ハッとする玖命。


(まだだ……まだ七海には……何か残っている……!)


 そう判断し、早急にこの場の処理をすべく、玖命は戦線に加わるのだった。

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