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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

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第357話 ◆不敵な七海総一郎2

 重力室の制御装置を奪い、腕にはめる事で従来の戦力を取り戻した山井、鳴神、川奈、水谷。

 それまでとの差は歴然で、七海が用意したはぐれたちを瞬く間に倒して行く。

 しかし、それでも尚、七海の表情が揺らぐ事はない。


「おぅら! ぶっとべ!」

「ららちん、パスじゃ!」

「はいっ! どーん!」

「後少しだよ、玖命クン!」


 水谷の言葉通り、天才(はぐれ)の集団は最早(もはや)数える程。

 8人、7人と意識を失い、玖命が3人まとめて倒すと同時、鳴神、山井、川奈、水谷が最後に一人ずつ倒す。


「はっ! 【命謳(ウチ)】と張り合おうなんざ、十億万年はえーんだよ! カカカカッ!」


 鼻息荒く、鳴神が七海を見上げる。


「小僧、いい加減その女子(おなご)を解放せい……!」


 山井の殺気を当てられながらも、七海は涼しい顔である。


「七海さん、しっかり罪を償ってくださいっ!」


 川奈の言葉も、


「ん~、まだ何か策があるとでも?」


 水谷の疑問も、


「七海総一郎……抵抗すれば、武力を以て制します。膝を突き、両手を頭の後ろで組んでください」


 玖命がそう勧告するも、七海は首を傾げながら返す。


「……何故……?」


 その開き直りに、鳴神でさえも口をあんぐりと開ける。


「お主……一体……?」


 山井も、七海の言葉を受け入れる事が出来ない様子。

 眼前には日本一の戦力を有する【命謳】代表、伊達玖命。

 更には第五段階を超える天才たちが、一足飛びで首を刈り取れる状況。

 それでも尚、屈服しない様子に、玖命も一瞬驚きを見せる。

 しかし、それは一瞬の事。

 すぐにその戸惑いを追い出し、玖命は行動に移った。


 ――正に一足飛び。


 玖命は、一瞬にして七海と御剣の間に入り、七海の後ろ手を取ろうとした。

 その後、関節を極め、捕縛。

 伊達玖命が自ら動き、捕縛するのだ。間違えるはずもない。

 ……と、誰もがそう想像し、そう起こるものだと確信していた。

 ただ一人…………【七海総一郎】を除いて。


「私が『何故?』と聞いたのにはいくつか理由がある。わかるかな、【魔王】伊達玖命?」


 玖命が取ろうとしていた後ろ手が消える。

 七海が振り返り、玖命に問いかけたからだ。


「「っ!?」」


 命謳の全員がその問いに驚いたのではない。

 玖命の動きに反応出来た事に驚いたのだ。

 直後、玖命は後方へ飛び退()く。

 ニヤリと笑う七海が一つ指を立てる。


「一つ、私はパラティア共和国の国籍を持っている」

「「っ!?」」


 これには玖命も驚かずにはいられない。

 何故なら、七海は自ら日本国民でないと断言し、天才、政界問わず、アンタッチャブルなパラティア共和国の国籍を持っていると明言したからである。


「私を害すれば、それはパラティア共和国との……対立。それが何を意味するか……天才であるお前たちならわからない訳ではないだろう?」


 自分たちの行動如何で、自国(にほん)に対し大きなリスクが伴う。

【命謳】全員が硬直するには十分過ぎる理由だった。


「荒神薫……どうせこの状況を聞いてるんだろう? さっさとこいつらをケージに戻すんだな」


 天才派遣所所長の名前が出、困った様子の山井が(ふところ)にしまっておいたスマートフォンをスピーカーフォンに切り替える。


『……七海総一郎』


 山井のスマートフォンから聞こえたのは――、


「やはり聞いていたか、クソババア……!」

『随分な物言いだね、七海の小僧が』

「相変わらず高みの見物か。まぁ、殻に籠るのが上手かったからそのポストにいる訳だが?」

『それより、さっき聞き捨てならない話が聞こえたね』

「ふんっ、私は私に害成す者を蹴散らすまでだ」

『パラティアの後ろ盾があるからと言って、それが武器になるとでも?』

「はっ! 現に、お前の兵隊共は委縮してしまってるじゃないか?」


 鼻で笑う七海に、荒神の圧が強まる。


『別に私はパラティアとの対立に怯えてる訳じゃない。七海の小僧如きのためにパラティアが動くのか疑問なだけだよ』

「……ほぉ、私にその価値がないとでも?」

『あると思っているのであれば治療が必要だね、頭の』


 その煽り文句に、鳴神が口を尖らせる。


「言うじゃねーか、荒神のばーさんも」


 そんな鳴神に山井が小言を零す。


「薫ちゃんのは年季が入っとるからな、あぁいう手合いにはこれが一番じゃ」


 荒神の言葉にピクリと反応するも、七海は表情を崩さずまた言い返す。

 しかし、それは荒神に対してではなかった。


「【魔王】伊達玖命……先程の話、何か気付いた事はないかな?」


 その質問に、皆が沈黙する。

 ただ、冷静に話を聞いていた玖命だけが、それに答える事が出来た。


「『いくつか理由がある(、、、、、、、、、)』……そう言ってましたね」


 言いながら玖命が腰を落とす。


「その通り、無恵の秀才とはよく言ったものじゃないか……クククク」


 それが何を意味するか、【命謳】のメンバーは厳戒態勢を以て理解を示したのだ。


「二つ、私にはこの場を打開する策がある」


 二つ目の指を立てた七海。


「総員! 戦闘準備っ!」


 全員が武器を構えた時、七海の三つ目の指が立てられる。


「三つ、私には、クラン【命謳(めいおう)】に対抗する力がある……!」


 直後、七海の周囲には強烈な殺気が広がったのだった。

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