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天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第六部

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第359話 ◆七海の打開策1

 不敵な七海を前に、一抹(いちまつ)の不安を感じ取った伊達玖命は、一瞬にしてその背後へと回った。


「ほぉ、流石に速いな、伊達玖命!」


 七海は振り返り玖命を迎え撃とうと動く。

 しかし、今の今まで相手していたのは鳴神、山井、水谷。

 日本を代表する戦力を保有する三人が、そう易々と七海の好きにさせるはずがない。


「させっかよ、アホンダラァアアアッッ!!」

「そう都合よく小僧の思う通りになると思うてかっ!」

「よそ見厳禁だよっ!」


 苛烈極める猛攻に、流石の七海も苛立ちを見せる。


「チッ、邪魔なゴミ共め……!」


 七海の影の中から新たな影を呼び、その影が何かを取り出した時、三人に異変が起こる。


「んなっ!?」

「これは……!?」

「ヘイト集め?!」


 そう、女らしき影が取り出したのは大盾。

 その影を見た時、玖命がそれにいち早く気付く。


「まさかっ!?」


 繰り出す玖命の攻撃を受け止めていた影。

 新たに現れた大盾を持った女らしき影。


「くっ!?」


 玖命が攻撃の手を緩め、注視したのは先程の戦闘現場。

 重力室で未だ倒れているはぐれの集団たち。

 彼らに意識はない。

 しかし、彼らと背格好が似ている影が……玖命たちの目の前にいるのだ。

 そして、大盾女の背格好は……一身になって多くの攻撃を引き受けている川奈ららに酷似していた。


「それは川奈さんの影だ!」


 玖命の言葉が助言となって皆の耳に届く。

 ただそれだけの情報で皆は理解した。


「こっちの影まで操れるってかっ!? メンドクセー野郎だ!」

「後輩の影まで出てきおった!」

「うぇぇ!? 玖命クンの影なんて出されたら大変だよっ!?」

「伊達さん! 側面注意です!」


 川奈は、皆への助言、そして瞬間的にも戦闘から目を離した玖命の側面に玖命自身の影が現れている事に気付いた。

 だが、その速度は川奈の声よりも早かった。


「ぐっ!?」


 辛うじて間に合った防御も、態勢が悪く受け止めきれない。

 衝撃をのがすため即座に後方へ飛ぶも、玖命の後を追うように玖命、山井、水谷の影が迫る。


「く……ハァッ!」


 咄嗟に出した炎の魔法。

【ファイヤーボール】は影たちの動きを制御し、限定した。

 影たちの活路を瞬間的に見定めた玖命は、そのルートを潰すように立ち回る。

 それだけで玖命は刹那の窮地から逃れたのだ。


「クククク、私との初めての戦闘でそこまで対処し切るとは、流石は世界からも注目される天才という訳だ」


 防御が間に合った玖命は、七海の軽口に付き合う事はなく、落ち着いて影の精鋭たちの攻撃を防ぎ、再び攻勢へと回った。

 そして、仲間への驚くべき指示を出したのだ。


「翔!」

「あん?」

「たっくん!」

「何じゃ?」

「水谷さん!」

「呼んだかなっ!?」

「川奈さん!」

「ここにいますよ!」


 次の瞬間、四人は目を丸くする。


「後方50メートル地点で待機っ!」


 それは、玖命からの戦闘離脱指示。

 鳴神と山井はちらりと見合い、その意図を探るも答えは出ない。

 水谷は目を丸くし、川奈は小首を傾げる。

 だが――、


「早くしろっ!」


 玖命の強い指示がそれを急がせた。

 四人は後方へ飛び、七海との距離を空ける。


「くっ!?」


 瞬間的に玖命への負担が増大するも、それは一瞬の出来事だった。

 それを見た山井が気付く。

 玖命が四人を後方へ移動させた意味を。


「そうか、影の操作範囲!」


 山井の言葉で鳴神がその思考に追いつく。


「なるほどな。俺様たちが離れれば、戦闘現場に俺らの影はねぇ。つまり操れる影があの場に残ってるのは、ノビてるはぐれたちと、(ヘッド)だけ……そーゆーこった」


 頭をガリガリと掻き、困った様子を見せる翔。


「完全に多対多用の天恵だね。数で押し切られて私たちが気絶でもしようものなら、影をあの場に残して状況の不利が確定……んもう、面倒臭い天恵ねっ!」


 腕を組み、苛立ちを見せる水谷。


「伊達さんは、一人で戦う事を選んだ。そうしなくちゃ、いずれ負けていた……スゴイ……!」


 玖命の意図に気付いた川奈はゾクりと肩を震わせ、適切な指示に感心を見せる。


「やれやれ、我らが大将ながらよく気付くもんじゃ」

「だがよー先輩?」

「何じゃ?」

「あの影をどうにかしねーと、いくら(ヘッド)でもキチィだろ?」

「うむ、ならば我らがすべきは……彼奴(きゃつ)らじゃな」


 山井の視線の先には、重力室で気を失っているはぐれたち。


「そっか、あいつらを運搬して七海の影の操作範囲から離してやれば……――」

「――七海さんの手数が減って、伊達さんにも勝機が生まれます!」


 四人は、玖命を救うべく四人がすべき事を理解し、見合い、頷いた。


「とは言っても、私じゃ迷惑かけちゃいますよね……うぅ」


 そう、川奈の速度では現場にいる時間が増えてしまう。


「いやいやららちゃん、私の速度でも、玖命クンに大きな負担が出来ちゃうよ……」


 水谷をもってしても、瞬間的にはぐれを運び出すのは至難の業。


「んま、ここは俺様と――」


 ガシっと両の拳を突き合わせる翔と、


「――儂、という事じゃな」


 腰をとんとんと叩きながら立ち上がる山井。


「運搬の瞬間、ナイフを飛ばすわ」

「私も、遠いけどヘイトを集めてみます!」


 そう言った直後、その背後に四人の救援が現れる。


「話は無線で聞いてたわ、これが必要でしょ」


KW-00T(レックスT)】を担ぎやって来たのは――月見里(やまなし)梓。


「おっ、気が利くじゃねーか。何ならおめーも運ぶの手伝うか?」

「私は死にたくないの、わかる?」


 そう言って、月見里(やまなし)はすぐに射撃態勢に入る。

 その迅速な行動が、皆の決断を急がせた。


「時間がない。時間をかければそれだけ玖命の負担が増える」

「おうよ! 準備はいいか野郎共!?」


 翔の問いかけは虚空に消え――、


「それじゃ、いきますっ! こっちですっ!」


 野郎以外の代表である川奈ららのヘイト集めによって、玖命の救援作戦は始まったのだった。

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