第338話 偶然?の出会い
「では伊達殿…………ん?」
「……ん?」
「え?」
防音室の扉を開けると、まず越田さんが足を止め、俺も続いて足を止めた。
最後尾の御剣さんは一般人。気付かないのも当然だ。
おかしい、天才が二人いる。
非常に強い存在感を持つ天才が一人。強い存在感を持つ天才が一人。そして、おそらく戦闘系でない天才が一人。
確かにここはBar派遣所。
天才が集い、揃う場所。
しかし、この感覚は……知ってる気配に感じるのは気のせいだろうか?
「何やら知ってる気配ですね」
あれ? 越田さんもか。
「越田さんもですか。実は俺もそうなんです」
歩きながら話していると、その正体が判明する。
「「ん?」」
「「ん?」」
俺と目が合う二人。やはり知ってる人だ。
何で川奈さんと四条さんがここにいるんだ?
しかも、【大いなる鐘】の茜真紀さんと一緒に?
「真紀、何故ここにいる? 特訓はどうした?」
「教官の棗ちゃんたちに連れ込まれちゃったのよ」
越田さんの問いに肩を竦ませながら茜さんが言う。
教官って何だ? 四条さんがメガホン持ちながら、茜さんや立華さんを奮起させているアレが原因だろうか?
まぁ、アレのおかげで茜さんの錬度も上がっている。
年が明ける頃には、彼女も第五段階に達しているかもしれない。
「川奈さん、どうしてここに?」
「あ、茜さんに偶然会いましてっ!」
おかしい、茜さんとの供述に合致しない。
そう思い、俺は四条さんに目を向ける。
「いや、うん! 茜に色々教わりたい事があってさ! うん! ららに付き添ってもらってさ! うん!」
センテンス毎に言い訳の筋が通ってるか確認してるかのようだ。まぁ、それなら話はわかるが……いやまぁ、筋は通ってないんだけどな。
俺たちがこの場にいた時はいなかったし、来たばかりといったところか。
「そ、それよりきゅーめー!」
「何です?」
「何で御剣と一緒なんだよっ?」
「あぁ、ちょうどよかった」
「え?」
四条さんがキョトンと小首を傾げる。
「しばらく【命謳】で護衛する事になりました、御剣さんです」
「お久しぶりです。改めて御剣です。よろしくお願いします……」
御剣は申し訳なさそうに深く頭を下げた。
そして、四条さんはそのまま川奈さんに顔を向け、同じ行動をしていた川奈さんの目を合わせ、互いに言った。
「「ん?」」
見合った後、二人で何故か小声でボソボソ話し始めた。
そして、その内緒話が一区切りついたのか……、
「「よろしくお願いします」」
二人揃って御剣さんに挨拶を返したのだった。
一体何を話してたのだろうか?
そんな俺たちを見て、茜さんは越田さんに言った。
「どういう事?」
「それは事務所までの道中で説明しよう。伊達殿、私はこれで失礼します。詳しい事がわかり次第、またご連絡を」
「じゃあね、坊や~」
「あ、はい! ありがとうございました!」
俺は深々と頭を下げ、越田さんと茜さんを見送った。
頭を上げた直後、俺は違和感を覚えた。
何故か俺の袖を、川奈さんと四条さんが掴んでいたのだ。
「……ん?」
そのまま弱い力で、しかし抗えない力で引っ張られながら、俺は再び防音室前までやって来た。そう、御剣さんを置いて。
「えっと、どうしました?」
「何がどうしてこうなった?!」
「詳しく聞かせてくださいっ!」
肉薄する四条さんと川奈さん。
顔がとても近い。
「詳しい話は事務所までの道中で説明するって事で……どうですか?」
今日は越田さんの言葉を引用する機会が多いな。
「「むぅ……!」」
二人は何か言いたそうにしていたが、それ以上の言葉は出てこなかった。
俺はそのまま三人を連れ、会計をしようとすると――、
「会計なら最初から越田君でつけちゃってるよ」
ダンディなマスターにそう言われてしまった。
「きゅーめー、これがスマートってやつだぞ?」
「ぐぅ……!?」
ニヤニヤと言う四条さんの言葉が胸に突き刺さる。
「はははは、Bar派遣所は【大いなる鐘】の幹部メンバー限定でツケをやってるからね。月末にまとめて請求するんだよ」
マスターの補足を聞き、俺は知る。
【大いなる鐘】の信用はそこまでのものか、と。
やはり契約書とかあるのだろうか?
越田さんの事だ、書面には起こしてるだろうけど……【命謳】では難しいだろうなぁ。
「近所のラーメン屋さんとか交渉してみますか?」
真顔に聞く川奈さん。これ、本当に真面目に聞いてるんだろうなぁ。
ラーメン屋のツケ……いや、何か違わないか?
せめて話し合いとかで使う喫茶店とか、こういうBarとかそういう方面だと思うんだが。
……いや、川奈さんと翔なら、普通にラーメン屋を話し合いの場に利用しそうだ。食べながら。
そんな事を考えていると、四条さんがスマートフォンを取り出し、何か見ている。
そして、思わぬ質問をしてきたのだ。
「きゅーめー、運転出来るか?」
「運転って……自動車ですか? 天才派遣所のサービス使って一応一通りの免許は持ってますけど……?」
「よし、それじゃあ今から池袋な」
「へ?」
俺が頭に?を浮かべていると、川奈さんが思い出したように言う。
「あ、準備出来たんですか? 【命謳】の【KW-ZXM】!」
【命謳】に軍用装甲車両……だと?




