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第二十六話 連れ戻さなきゃ

「なぁ、この国を出ないか?」

 そう話したのは竹山重(たけやましげる)


「は?この国を出るって__」

 タクミは訳が分からないというように足を止め、皆もその場に立ち止まる。


「俺たちさ、なんかいいように使われてるじゃん?俺たちもう戦闘訓練でレベルも上がってスキルの使い方も学んだしよ。実践はまだだけど……余裕だろ。ってかそもそも戦わないでどこか違う国にでも行って異世界人ってことを隠してのんびり生活してみねぇ?」


「のんびり?例えば?」

 眉をひそめるタクミ


「ほら、見知らぬ場所で商売やってみたり、ギルドって薬草採取とかそんな楽そうな仕事でもお金もらえるらしいじゃん。そんなんで稼いで適当に生きて……もしかしたらどこか違う国に帰還方法があるかもよ?今引率もいねぇし。どうよ、冒険してみねぇ?」

 ニヤリと笑うシゲル


「うーん……」

 タクミは考える仕草をして首を横に振る


「俺はいいや、アイコいねぇし。アイコいるなら行ったけど。」


「なんだよ……連れねぇな」

乗らなかったせいか、気まずい雰囲気が流れる。


「とりあえず……倒しに行こうか」

 タケルが歩き出し、それに続き皆は足を進める


しばらく歩いたところ____固く封鎖された扉。そう、ダンジョンである。前とは違い扉が三重に重なっていた。

 恐らくブリザードウルフが出てこないようにするためであろう。


タケルとマリコは、地獄を見た、そうトラウマとも言える場所であろうか、中はどうなっているのか、我々がどうやって出てきたのか、覚えてはいない、覚えているのは血塗れたクラスメイトと死の恐怖。


 目を逸らした2人は横道にズレる


「この先からブラックウルフが出現する……らしいけど」


何時でもどこから出てきてもいいように、訓練で学んだ陣形を組む。

 戦闘訓練では模擬戦を、魔物の生体の講義で魔物の生体を。


 ブラックウルフに対する陣形。

 ブラックウルフは繁殖期以外の一頭のオスをリーダーに群れる。別の群れのリーダーと戦い殺し合い。リーダーが死ねばその群れは勝った方の群れにつく。そうして数体だったのが数十匹に増え更に──っと数を増す。


「おい、こっちの方から足音がした」

 耳をすませ、神経を研ぎ澄ます。


報告も、警戒も怠らない──それは、死にたくないがゆえか。気を引き締める


 マリコとタケルは特に意識を全集中させていた。

詠唱を済ませいつでも魔法を展開できるように構え──


 ──ガサッ

 そう、微かに風では無い何かが茂みを揺らした瞬間。



ウィンドカッター(風の刃)!」

 マリコの振った杖から風の刃が飛び出し茂みを切り裂く


 切り裂いた茂み、そこからはブラックウルフが飛び出してくる


「マリコ!あと何秒何回だ!」


「風は適正じゃないの!詠唱に5秒。あと魔力的に3回!」


タケルの言葉にマリコは即座に返事し、タケルが詠唱中のマリコを庇うように剣をふるい落とす


 それを唖然として眺める3人。


「お、おいガリ勉どうしちまったんだよ」

そう、 逢沢尚人(あいざわなおと)が驚いた様子で声をかける。


「そっち!行ったぞ!」

タケルが大声を出し、ようやくハッとしたナオトは間一髪振り向き剣を振るう。

 ザクッ──っと鈍い音を立て鮮血が地面に模様を作り上げ。唸り声の主が宙で生を失う。


タケルが3体、マリコ3体、タクミが0、ナオトが1体、シゲルが0体。計7体を討伐した。


 周りを散策したがもうブラックウルフは見当たらなかった。


「任務完了__だな」

 抜いていた剣を収めようやく一息つくタケルに体当たりのような形でシゲルが肩を組む


「なんだなんだ、地下ダンジョン転落組おかしいんじゃねぇのか?妙に真面目つーか。」

「命がかかってるんだ。ふざけれるわけない」

 そう、肩の腕を払うと、シゲルはタケルを睨みつける


「お前調子乗ってんじゃねぇのか、本職が勇者だかなんだか知らねぇけど、本物の勇者にでもなった気か?たまたまなんだろ?おめぇのようなガリ勉が勇者になんかなれるはずねぇんだから。それになんだよ真面目ぶってかっこわりい」


 肩をドンッと押すもタケルは1歩も後ろに仰け反らなかった。その事に驚くシゲル


「俺は、死にたくない、俺は生きるために進むから」

 強く__。意思も眼光も言葉の圧も強いタケルがはっきりと言い放つ。


「本当にどうしちまったんだよ」

 シゲルとナオトは顔を見合せた。


「決めたんだ、俺___早く帰らないといけない。けれど反発してるだけじゃ帰れない、わがまま言っても戻れはしない、やらなきゃ…。俺の妹病気だったんだけど、もうすぐ退院できるんだ。そんな時に俺がいないと__きっと両親にも妹にも迷惑を、心配をかけてしまう」


 ギュッと拳を握りしめたタケル


「まぁ、俺も大会あるし」っとタクミも便乗した。


「帰るってもなぁ?帰還方法が本当にあるのかすらわかんねぇし……それに小難しい勉強しなくても遊んで暮らせるのめっちゃ良くね?」


「それ、適当に力つけて異世界人様〜って崇められて……」

 シゲルとナオトは意気投合したようで、もしも__という話をし始める。


「逃げるんなら勝手にすればいいじゃねぇか、俺はアイコを守るために力つけて早く帰る。それが最短の道だし。ガリ勉に賛成。」

はっきりと自分の意見を言った、それもタケルの意見に……驚いた顔を向けるタケルとマリコに

「なんだよその顔」っと不貞腐れたようにそっぽを向く。


「じゃぁ、俺らは行くか。ほかの街見てみたいしな……ギルドカードも貰ったし、ほかの街にもギルドあるって聞いたしそこで適当に稼いで適当に生きようぜ」


 タケル達とは反対の方向に歩き出す



 ――――――――――――――――――――――――


タケルはチラチラと後ろを振り返る。

「なんだよガリ勉、アイツらが心配なのかよ」


「うん……ちょっと気になって。アイデンさんも、森を出るなみたいなこと言ってたから。」


「女王陛下の許可が必要なんだっけ」

 マリコも一緒に後ろを振り返る。確かにアイデンさんの警告、守っておいた方が__っと思い始めた。


「やっぱりちょっと連1回連れ戻してくる!」

「おい、ほっとけって」


タクミがタケルの肩を掴む

「でも__」


 



「あなた方が行く必要はございませんよ。僕が行きますので」


「アルデンさん……」

 ニッコリと笑ったアルデンがそこに立っていた。


 


 


 


 

 

 


 


 



 

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