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第二十五話 出撃


「グリーンリーフ国出身。ルシアン・ノワール、女王サマの執事兼秘書になったからよろしくネ。護衛も兼ねてるヨ」


ニコニコとしながら。手を胸に当てお辞儀をするルシアン。いつものシルクハットの紳士服ではなく燕尾服を着ていた。


それに額に手を当てて点を仰ぎながら深い深いため息を吐くリリアン


「グリーンリーフ王国…」

ノーチェが顎に手を添え考える仕草をする。


「ノーチェ、聞いたことあるでしょ」

 天を仰ぎながら片手で長机の方に座って紅茶を飲んでいるアルデンの方を指さす。


「アルデン・グリーンリーフ(・・・・・・・)…ってまさか」


「リリアン女王?人に指をさしてはなりません」

 っと紅茶を揺らす


「どういう事だ、アルデン殿」

ため息を吐いたアルデンはノーチェに振り返る


「グリーンリーフは…この国からずっとずっとずっと南の方にある王国です。半数はエルフで、エルフの国と言ってもいいですね。僕は__グリーンリーフ王国の、現国王の息子です」


「…はぁ!?」

 しばらく頭で情報を整理していたノーチェが大きな声を出して驚く。


「もう抜けてこの国に身を捧げてますから、無関係…とはいきませんが、王族の枠からは抜けた身です。」


「グリーンリーフ王国とこのシルバーリーフ王国の初代は昔一緒に冒険した仲間…だなんて言われてるんだヨ。本読んだことナイ?」

結構有名な本だけド…っと首を傾げるルシアン。

「あ、ちなみにグリーンリーフの方はまだ初代がずっと国王やってるヨ!」

 なんて笑顔でサラッと話す。


「それで…そのグリーンリーフ王国からルシアン殿が来たと?」


「出身国ってだけで、そこから来たわけじゃなイ。まぁいろいろあるのサ。」


「…まぁ使用人として正式に雇われている以上、怪しいものでは無いのだろう。アルデン殿が直々に採用した…と聞くし」


「えぇ、この者は使えますので、リリアン様。こき使ってくれて構いませんよ」


「ひどいナ〜」

 見たところ、アルデンとルシアンは知り合いなのだろう。どういう知り合いかは分からない__わからないが。


「ルシアンはエルフ族なの?」

 だから、長い時を__と言ったのだろうか。

 でもエルフ族の特徴である耳は丸い


「ちがうヨ?」

 そうリリアンに振り返るルシアンの耳には宝石が付いていて。それが赤く光らない(・・・・・・)


 それは、リリアンが腕に着けている真意魔法が付属している宝石と一緒のものだった。元はルシアンの杖についていたもので、ルシアンはリリアンに嘘をつけなく、リリアンもまたルシアンに嘘をつけない。

 つくとそれが赤く光るのだ。


 それを確認してため息を吐く


「まぁ__もういいわ。情報過多で頭痛くなる。」

 アルデンの事は知っていたリリアンだが、ルシアンがそこの出身だということも知り合いだということも今初めて聞いたのだ。


 ルシアンの働きぶりはすごい。スケジュールの間違いは無いし、紅茶も美味。ミスはしないし細かいことに気づく、歯ぎしりするほどには完璧だった。


「ルシアン、何が目的なの?」

ベットのシーツを綺麗に整えるルシアンに声をかけるリリアン


「目的っテ?言ったきがするけど…面白そうだかラ」

 ニコリと笑うルシアンの耳元は赤く光らない。


「本当にそれなの…ありえない。」

 けど、それは1部に過ぎず本当の目的は別にあると考えているリリアンがルシアンを睨む


「ほらほら、ニコニコしないと〜怖いヨ?」

 リリアンの頬をつまんでニコリと上に口角を無理やりあげるルシアン。女王にこのようなことをするのはルシアンぐらいであろう。


 パシッとその手を払う

「まぁ安心してヨ、別に命狙ってるとか国を内側から…みたいなことは考えてなイし。情報商人も今はもうやってないシ。完全に君の味方だヨ」


 あ、あの子(アルデン)には情報商人のこと言ってないから内緒ネ?

 っと笑うルシアン。


「それも本当…もういいわ、好きにしてちょうだい」

疲れた顔をしたリリアンが大きな大きなため息を吐く。


 ○シルバーリーフ王国 王都レイク 魔法学校

 学校の講義が始まってから早1週間

 

リリアンが女王になる前、王女の頃に設立した学校で、各国の貴族を集め教育を受けさせる場であり。

 剣術や魔法、魔物の生体や歴史、様々な分野の講義がある。


本来は好きなコマを取り一定数の単位を取得することで卒業出来るのだが。この講義室だけは生徒が移動せず、講師が決まった時間にやってくるシステムだった。


 その講義室は___異世界召喚者専用


 耳を尖らせた講師が口を開く。

「で、あるからして、過去の文献によるとシルバーリーフ王国とグリーンリーフ王国の初代は一緒に旅をし魔王を倒した初めの英雄である。それから国をそれぞれ作ったとされ__また、初代の勇者は__」


 それをぼーっと聞いているもの、配られたノートに書くもの、教科書を読むもの、寝ているもの。様々であった。


 反発していながら、中でも真面目に取り組んでいたのはユイとソウタであった。


「……」

 マリコはぼーっとしながら窓の外をみる。


 見たこともない花が風に乗って舞う、日本で言う桜だろうか。真っ赤な花びらがヒラヒラと舞いながら窓に張り付く。


 (…ユイちゃんとミサはあれからずっと犬猿だし、ソウタくんはあれから情緒不安定でいきなり叫び出したりするし…。お母さんもお父さんも、お兄ちゃんも…今何してるのかな、心配してるかな。行方不明ってなってるのかな…スマホ使いたいな…)


 大きな大きなため息を吐いたマリコ。



 いつも通りの日常___であったはずなのに。

なぜ私達が選ばれたのか、なぜ、こんなことになったのか


何故か__なんて、いくら考えても分からない。


 前のダンジョンでの戦闘で、恐怖を植え付けられた。

 ただ、突きつけられるのはマリコらが召喚者である事実と、ゲームの世界だけど、ゲームじゃない。死んだら終わりだということ。


 もう嫌だ、逃げ出したい__と、思っても、死にかけても、手を伸ばしてくれる人はいない、背中を押され続け、強制的に足を踏み出さないといけない。

 死なないためにも、帰るためにも__進まないといけないのだ。

 反抗せず、こうやって不真面目ながらもこの講義室にいるのは、皆がそれを理解しているのだろう。


「マリコ!」

「な、なに!?」


「なにじゃないよ」

 隣のミサがマリコの腕をつついて、マリコはハッとする


「呼ばれてるよ」

 指をさした場所に目を移すと、いつの間にか講義は中断されていて、入口の方にアルデンさんがいてマリコの方を見て手招きしていた。


 皆の視線を感じながらも並んでる講義室の机の間をぬけ階段をおり外に出る。


 マリコの他にタケル、タクミと他に2人がいた。


「みなさん、今から屋敷に戻り装備を身につけ屋敷の入口に集合してください。」


「あの…一体なにが?」

タケルが首を傾げるとアルデンは相変わらずニコニコと笑顔を浮かべていた。


「あなた方5名には出撃命令が下されました。王都レイクの西側の森。あなた方がダンジョンに潜った森ですね、その奥の方で魔物の出現が確認されました。」


「おぉ!戦闘か!ようやくだな」

 嬉しそうにするタクミに対し、マリコとタケルは不安そうに眉を下げていた。


「ブリザードウルフではございません。適正Fランク。ブラックウルフ数体です。」


「でも…」

 それでも不安なタケル、だがタクミがバシバシと背中を叩く。


「大丈夫だってガリ勉!めちゃくちゃ楽勝だったぞ!」

ブラックウルフをダンジョンで討伐したことのあるタクミ、だがあれば盾役の冒険者キルがいたからこそ安全に倒せた魔物で…と、思ったがタケルは口には出さなかった。


それぞれ配られた装備に身を包み、馬車に乗ってレイクの門まで来た。


「はい。これはあなた方のギルドカードです。」


「ギルドカード?」


渡されたカードに首を傾げる、名前と申請した職業。そして種族名と召喚者の文字。

 嘘であるがタケルが申請した剣士という職業も刻まれていた。


「ギルドカードは本来冒険者にのみ配られますが、そのうちに他の国に(おもむ)く事もあるでしょう、それは身分証にもなるのです。そして犯罪歴、依頼履歴も残ります」


「犯罪歴…?」

タケルの言葉にコクンと頷く


「国によって法は変わります。冒険者はある程度細かい法律は免除されますが。殺人や窃盗、強盗などそう言った罪は免除されません。盗賊討伐の依頼などは別ですがね。そしてその国ごとに罰は違います。罰金だったり投獄であったり処刑であったり」


 処刑という言葉に少し緊張した様子のタケル。

 

「もし他の国に行く場合などは法律の書物を見ることをおすすめします。そして__犯罪歴が着けばそれはギルドカードに登録されます。この前の検査時に頂いた血液を使い登録させて頂きました。」


 確かに、ダンジョン後に全員の検査があったが…それでギルドカードが作られるのか。っと納得する一方。

 

マリコが小さく手を上げる

「もし、犯罪歴が残ったらどうなるんですか?」


「場合によっては入国を拒否されたり、ギルドの依頼も拒否、宿泊も拒否されることもあります。冒険者を辞めてカードを破棄したとしても、再び身分証を作る時に経歴を洗い出せることができますので。くれぐれもお気をつけて、まぁ今回はこの国での討伐であり他の国に行くことは出来ません、冒険者と違いあなた方は女王陛下の許可が必要です。この王都レイクの敷地から隣の街の敷地を跨ぐことも許可が必要になるのでくれぐれも__」


_________

 ○レイク西側 森


「西の森の奥をぬけた道に入るな__か。」

タケルはアルデンから古びた地図を貰い、それを頼りに先頭を歩いていた。


「なーまだかよ」

 タクミが頭の後ろに手をくんで飽きたように足に力を抜いて歩く。


「ダンジョンを通り過ぎた所だから……」

 まだ、ダンジョンも見えてはいない。まだまだ先なのだろう


その時、パーティの1人が呟く

「なぁ___このまま国を出れるんじゃないか?」









 



 

 

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