第24話 ゲス野郎だと思ってるけど
「大丈夫ですか、リリアン様」
「うん…問題ないよ」
本来王族の自室には侍女以外入ってはいけないのだが、リリアンは別にいいと騎士もアルデンも自由に出入りを許可していた。アルデンは空中で羽根ペンを走らせる。
羽根ペンはアルデンが手を離しても動きつづけ、空中に光の文字を記していく。
それを見慣れてるリリアンは驚きもせずアルデンの持ってきた紅茶を口に含む
「解毒効果のある紅茶です。それにしても__またですか」
「そうね…またよ」
「今回で5回目。同一犯でしょう」
「…おかげで耐性レベル上がったわ」
己のステータスを見てため息を吐くリリアン。
実はリリアンは先日ダンジョンから帰ってきた後、ディナーの席で毒を盛られていたのだ。
王女時代も何度かあったため、耐性がついていたおかげで死は免れたが___
「私の皿にだけ…今のところ料理人と持ってきたメイド、そして毒味役も拘束しているけど…」
「そうですね、ですが無関係のようです」
「えぇ。毒味役が盛ったのかと思ったけど、多数のメイドがそれを目撃し毒を入れている所も見ていないというし所持品もなんら問題はなかった…。それにテオの鼻避けも対策されているし」
テオは獣人族で鼻がとてもいい。匂いを嗅いで貰い犯人を特定しようとしたのだが
「テオは療養中です」
「そうね…」
鼻の良い者には刺激臭になる薬が使われていたようでテオはあまりの匂いに気絶してしまったのだ。
人間族には分からない匂いなのだとか。
「テオの事も知っているし、段々と巧妙になってきている…いつ入れたのかも分からない。毒も変化してきているし…。内部犯なのは確定として、一体誰が?毒もいつ入れたのか分からないし…。どうして毒味役は何も問題なかったのかしら、毒耐性のない人材を選んでいるはずだし」
「こちらで色々探して見ます。耐性がついているとはいえ無効では無いのです。気をつけてくださいね、今日はおやすみになってください」
アルデンが横になったリリアンのシーツをかける
「ありがとう、召喚者の学校の手続きも、竜神族の事も…色々あるのに」
「勿体ないお言葉です。僕は女王のために生き、女王の為に働くのが使命。気に病まないでください」
アルデンが出ていってボーッと天井を眺めるリリアン。
「殺される…って気持ちの良いものじゃないんだよね」
王が狙われるというのは珍しくない。恨みや憎しみ、依頼されて、他の国から___なんてことも。
心当たりを探すも多すぎて分からない。
「こんな所で死んだら__」
こんなところでしんだら復讐ができないでは無いか。
「そうだネ。君は死んだらもったいナイ」
その声が聞こえ視界の端にシルクハットが見え飛び起きる
「やァ」
「ルシアン…!一体どうやって…!」
リリアンの天蓋ベットに腰掛け片手を振るルシアン。
「君が来れるんだ、ボクが来れないわけないだろウ?」
いつもの暗い部屋とは違い、よく見えるレモンイエローの瞳が細められる
「いいから寝てなヨ?」
「誰のせいだと思ってんの」
ため息を吐いて再び横になるリリアンの髪を一束指に通す。
「顔色が悪いネ。毒盛られたんだっテ?」
「そーよ。なんでも全臓器を溶かすぐらいのやばい毒らしいわ」
「なんで生きてるんだイ???」
「耐性ついてるの、なかなか死なないからかそんな毒まで使い始めたのよ…。」
「ふぅん」
「それで、何しに来たの」
「いや別に何モ?」
「はぁ?」
そんなわけが無いというように起き上がろうとするリリアンの肩を押し返し再びリリアンはベットに沈む。
ギロッとルシアンを睨みつけるリリアン
「そんな目をしないでヨ!ボクのことなんだとおもってるのサ」
「悪趣味ゲスの情報商人」
「酷い言われようだ」
顔を覆ってしくしくと泣いた振りをしているルシアンにため息を吐く。
「それで、何しに来たの本当に。毒殺されそうになってる女王を見学に?」
ちなみに、この情報流したら許さないからね。っと付け足すリリアン
「いいや、お見舞いに来ただけサ」
「だから、なんでって話」
すると、訳が分からないというようにた首を傾げるルシアン
「親切心以外に何の理由があると?」
それこそありえないというように己を抱きしめ身体を震わせるリリアン
「そんな顔しなくてモ…」
ため息を吐いたルシアンはシルクハットを取り指でクルクルと回し始める
「ボクを使わないのかい?ボクを使えば__きっと犯人はすぐにわかるだろうサ」
「いらないわ」
リリアンはぼーっと上を見上げる
「へぇ?どうしテ?」
「あなたの言う通り、一人一人尋問したら犯人がわかるでしょうね。でも__表向きの犯人を捕まえても意味ないの。きっと裏に誰かいる、単独で暗殺を狙うとは思えない。裏の人間か、国か__」
「ふぅン。自分の命がかかってるのに呑気だネ、死んでしまえばそれまでなのニ」
ギシッとベットに乗っかりリリアンに寄るルシアン
「近い」
押しのけようと手を伸ばすとその手をヒョイっと避けられる。
「死ってのは遠いようで近い、すぐ側にあるんだヨ。ほら___すぐに」
リリアンの首に手を添え掴む仕草をする
「そうだよ、死は遠いようで近い。死ぬはずなんかない、そう思っていたのにある日ぽっくりと__なんてあるかもね。でも私はもう後悔しない、後悔しないようにやりたいことを成し遂げ、そしてから死ぬ。死ないわ!私は」
ふっと笑うリリアンに呆気にとられその手をパッと離したかと思えば
「ふふ…うはは!うははは!」
腹を抱えて笑いだしたルシアン
「怖い、何いきなり…怖すぎるんだけど」
首を絞められかけたと言うのにそちらの恐怖ではなく、いきなり笑い出した事の方が怖いというように…いやドン引きしているリリアン。
「きめたよ!ボクをここで働かせてくれないカイ?いいよネ?はい決定!」
「は??いきなりどういう…」
「気の遠くなるほど長い時、こんなに面白いのは初めてだ」
「??どういうこと__長い時ってそもそも働くって…!」
ガバッと起き上がったリリアンの手を取りその甲に唇を落とすルシアン
「よろしくネ女王サマ」
「だからちょっと待ってって言ってんの!話を聞けー!ってか近いって言ってんの!」




