第78話 ルスベルク辺境国の魔導士上がりーマリエッタと接触する
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そのあとマリエッタは夜道を尾行に警戒しながら義勇兵ギルド上階にある宿舎へと帰った。
追手の気配はなかったが、念のためにわざと駅馬車に乗って駅馬車の中央ターミナル駅まで行き、そこからさらに乗り合い馬車に乗って義勇兵ギルドまで戻った。
義勇兵ギルド内では夜ということあり、奥のレストラン兼酒場では昼間よりさらに熱風を伴う騒ぎになっていたが、マリエッタは一切気に留めずに自分の部屋へ戻る。
華奢でかわいい受付嬢がこれまた変身しているとはいえ今も元も美少女のマリエッタを笑顔で出迎えた。
マリエッタは無言でお辞儀して階段を上がる。
部屋のドアの前に着いた。
魔力でずっと探知していたが、部屋に侵入者や妙な細工をされた気配はない。
微弱な魔力でドアノブをチェックする。
毒物の塗布や呪いの類はかけられていなかった。
ドアを開けてそのまま鍵をかけ、そのままシャワーを浴びてその日は寝ることにした。
翌朝、マリエッタはレストランで黒パンと、この付近でとれた猪の自家製ソーセージ5本、地場産の放し飼いの養鶏所でとれたばかりの卵の目玉焼き、さらに地場産の朝採りたての野菜サラダで朝食をとった。調味料の塩は塩田で作られた混ぜ物のない純粋な塩。卵は天然物の良い飼料を与えているせいか、薄い白っぽいレモン色をしていた。
パンもいい小麦を使っていると食べていて感じたマリエッタは朝からたくさん食べても全く胃もたれしない事実に敵国が義勇兵にまで人間の食べられるものをきちんと供給しているのかと内心複雑になった。
これが帝国だとはっきり階級ごとに調達する食料は分けられる。
帝国貴族や第一級魔導士クラスならこの共和国の食事など目でもないほどさらに高品質なものが提供されるが、それ以下は生産性重視の物が与えられる。
帝国貴族の間では飼料をくれてやるとまで言われるほど末端兵士や第二級魔導士にすらまだまだなれない第4級以下の魔導士、仕官した他国の戦士などへの食事を一度つまみ食いしたことがマリエッタにはあったが、胃もたれがひどくて全部食えたものではなかった。
昔話を思い出すのは止めにして、それからマリエッタは何げなく外出し、通行人の振りをして回り道をしながら統合情報局と各軍病院へ向かった。乗り合い馬車には乗らない。
隙あらば潜入してやろうと思っていたが、現地に着いてそれをあきらめた。
周囲には特殊な魔導結界が張り巡らされ、その中では許可を得た者しか魔法を使えない、または制限されるセキュリティが施されていることをマリエッタはすぐに気づいた。
加えてその結界のせいでただでさえ微弱になってしまったエリカの魔力を探知するのはまず不可能だった。
おまけに第一級魔導士と、特殊訓練された対魔導士戦に対応する戦士部隊(魔力の加護などで強力な魔法耐性を持つよう訓練された戦士。混乱や即死、ステータス弱体化などの魔法が聞きにくく、攻撃魔法への耐久力と回避力も通常の兵士や冒険者とは段違いに高い)がざっと見ただけで100人以上はいる。
統合情報局への潜入は一旦あきらめて第一から第三までのカーツの軍病院を回った。
患者を装えば中に入れなくもないが、身分証明書や病名を言わなければならない可能性が高く、しかも、全体に統合情報局と同様、魔導結界が張られているせいでこちらもエリカの居所を突き止めることはできなかった。
仕方なく、また来た道とは別ルートで一旦義勇兵ギルドの宿舎へ戻る。
中央通りの噴水広場の近く。
ブルーメントリット家の諜報員から軍用マップを受け取った噴水付近でマリエッタは尾行の気配に気づいた。
隠しているがこちらへと視線を向ける魔力周波数を感じた。
種類からして辺境国ルスベルクの魔導士のものと一致。
気付かないふりをして人通りのない路地に走って入り込んだ。
後から走って近づいてくる音がする。
「くそ、どこ行ったあの娘!?」
周囲を慌てて見回す黒髪ロングの女。
ルスベルク共和国魔導士の制服のカーキに近い緑のローブとくたびれた魔女帽子を身にまとい、胸にはカーツ共和国義勇兵の記章がついている。
彼女は路地を見回すもマリエッタの姿を見失った。
「私をつけて何か御用?」
「!?」
ルスベルクの魔導士は急いで亜空間から魔法の杖を取り出そうとした。
が、その前にマリエッタは彼女の背後を取り、背中にCZ10オートマティックピストルを突き付けた。
「あなたの背中に突き付けたのはこの世界の弩とか矢を数10倍以上強力にした武器よ。私の言うことがウソでないことをあなたの体で証明しようかしら?」
「まっまって!私はあんたに話が合って後を追いかけたんだ!」
「あなたは誰?見た所、辺境ルスベルクの魔導士さんってとこかしら?」
「わたしゃマライア・フローン。おっしゃる通りルスベルク共和国の元魔導士で最近この国の義勇兵に志願したばっかりさ!」
「そんなルスベルクの魔導士様が一体何の御用?」
「あんた、さっき魔界の連中を血祭りにあげただろ!」
「あれを見たの?」
「待ってくれ!癇に障ったなら謝る!実はそそんなことはどうでもいいんだ!待ってくれよ!あんたにぜひ教えたいことがある!」
「何かしら?変なマネを少しでもしたらこの武器の性能を体で味わってもらうわよ?」
マリエッタはCZ・P10ピストルをさらに背中へと食い込ませるように突きつける。
「あっ、あんたが持ってるその武器!それを持っていた人間を知ってるんだ!」
「私と同じ武器だと!?誰だ!」
もしかしてエリカ!?
「そっ、そのまえに……。おっ、お願いださらにとっておきの情報があるんだ!それと抱き合わせで私に1000共和国ギダでいい。恵んでくれないか!?」
「素直に話せばやってもいいわ」
「私は中立のアポログラスであなたのとよく似た武器を持ってた在野の魔女を見た。確かアンナ・モル何とかって名乗ってた。私の直感じゃ多分偽名だ!そいつはやたらつっけんどんで私には心を開かなかったが、帝国軍の第一級魔導士が襲来してきたときにやたら動揺していた!」
帝国軍の魔導士と交戦して動揺!?間違いないエリカだ!
「どこにいるのその人は?」
「それは私にもわからん!けれど、こっからが本当のあんたに価値のある情報だと思うよ!さあ、約束してくれよ!あたしゃ日銭もなくて大変なんだよ!」
「話しなさい。素直に話せば1000共和国ギダくれてやってもいいわ」
「わたしゃ1週間前にここに義勇兵としてきた。それから4日ほど前、義勇兵の人事部長さんのエルミア魔導中尉さんが妙なことを話しているのを偶然登録書類を提出しに行った統合情報局の庁舎内で聞いたんだ。一瞬のことで誰なのかは分からないが誰かを自分の里へ連れていくとか言ってたのは聞こえたんだ」
「それが私とどう関係するの?」
「最後まで聞けよ!エルミア中尉はその時こうも言ってた。“あの人の使ってた異界からもたらされた武器は銃って言うんですよ♬”てな」
銃!?間違いない!エリカのことだ!
マリエッタは驚愕しながらも表情は冷静を装う。
「で、その情報をわざわざ私に教えて何の得があるの?」
「だから、お金だよお金!」
マリエッタは彼女の背中に突き付けたCZ・P10をゆっくり引くと、マライアを右前蹴りで蹴とばした。
うつ伏せに石畳の地面に顔を強打するルスベルクの元魔導士。
地面に1000共和国ギダの入った袋を放り投げた。
「さようなら、田舎魔女」
マリエッタは一瞬でその場から消えるように走り去った。
鼻血を出しながら起き上がったマライアは、お金の入った袋を鷲つかみにすると、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
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