第66話 “大魔女”エレーナ・ヴァ・ランスブルク中佐との再会
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そこにいたのはエレーナ・ヴァ・ランスブルク中佐だった。
大学内魔導士選抜課程時代から一般大学内でも評判だった飛行戦術の権威的存在。
若干15歳で魔導兵学校に飛び級入学を許されて2年で飛び級卒業し、帝国貴族出身であるとともに最前線でのたぐいまれな指揮統率能力で名を馳せた方だ。
兵学校のみならず大学内魔導士選抜課程で大学に講師として招かれていた彼女の必修講義を受けた時、ほぼ同い年くらいでありながら類い稀な戦闘理論と理路整然とした気品ある話し方で憧れていた方だ。
青みがかった黒のロングヘアにたぐいまれな美貌は同性の私でも正直ドキッとする。
だが、彼女は今、帝国内では紛れもない忌まわしき“大魔女”だ。
私が晴れて第一級魔導士に任官した直後の空中戦で彼女は戦時行方不明者になり、懸命の捜索にもかかわらず2ヶ月ほど経っても行方が分からず絶望視されていた。
それが突然、カーツのプロパガンダ放送に彼女が登場して帝国貴族の専制政治を批判した時、帝国内に与えた衝撃はかなりのものだった。
その時から彼女が著した戦術教本や戦略・作戦術・戦術各理論書、兵站概論などの軍内で重んじられていた著書などはすべて焚書されるか、全く別の無関係な人物が書いたものと改変された。
しかし、禁止されても前線の部隊内では密かに読まれ続けるほど彼女の戦い方とそれを支える理論は卓越していた。
具体的に話したのは大学時代と前線勤務の時の数回のみ。
それも面と向かって1対1で話すのはこれが初めてだ。
まさかあこがれの最優秀の魔導士にして“大魔女”と話すことになるなんて……。
明らかな動揺を浮かべる私に大魔女エレーナは微笑みかけた。
「久しぶりね、元気にしていたエリカ。今は私“大魔女”だそうだけどそう見える?」
きれいな長い黒髪に上品な口元。
眼元の泣きぼくろが彼女のはかなげな美しさを引き立てている。
「帝国ではあなたは裏切者と日々罵られています。なぜ共和国へ寝返ったのですか?」
「大神官どもが憎いからよ」
「あの連中の非道ぶりは知っているでしょう?私も帝国貴族としての誇りがある。それを理解してくれたのはブルーメントリット侯爵などごく少数だったわ」
「私の父は不可解な事故で亡くなったわ。それ以来我がランスベルク家は事実上没落に近い扱いを受けた」
「私も帝国を裏切るのは本意でない。けれど帝国に自浄能力はない。ならば外圧という形で改革をするしかないと思ったのが今の私の立場よ」
「エリカ、あなたも私と同じ立場のはずよ。あなたのヴァールハイト家は卓越した功績を残した立派な方だった。けれどあなたの一族を陥れたのはあのレンゲンカンプの一味よ」
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