第63話 帝国魔導士エリカ、捕虜として見た自由の国
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ウィラードはキノコのサラダと鹿のステーキ、さらに地場産の赤ワインを昼間から注文した。
いくら何でも4杯も飲むのはまずいだろう、勤務中だぞ、と敵共和国魔導士につい忠告したくなった。
エレノアはマス科の魚のグリル、自家製猪のソーセージにかぼちゃのスープを頼んでいた。
周りは賑やかで、異種族同士が他愛無い話に興じている。
トロフィーが飾る威圧感がありながら店内は白を基調とした清潔感ある店で、太陽光が入るガラス張りの天井と窓際が爽やかな時間を過ごさせてくれる。
昼食後、コーヒーを飲んでから私とウィラード、エレノアの3人で街中を歩くことになった。私も彼女たちも私服姿で、はたから見たらまず魔導士だと分からないだろう。
私の服はエレノアが渡してきたものだ。
上品な雰囲気で着心地は良い。
こうしていると女友達同士のショッピングのようだ。
ふと油断してしまう自分を心の中で諫める。
「そういえばさっきから思っていたけど、この国には繁華街があっても控えめね。……」
私がそう言うと、エレノアがニヤニヤ笑みを浮かべ始めた。
「エリカさん、割とそういうお店が好きなんですかあ~♬」
「違うわよ!」
ウィラードは割とまじめな表情で口を開く。
「我が国では一応、性関係の地区はあるよ。厳重に規制された許可制の上でね」
「売春などはとかく不道徳なものだ。あれを野放しにすると人は健康的な家庭を持てなくなり、国民道徳は荒廃する。でも人間の性である以上、厳格な許可制で我が国は運用しているのさ」
それを聞いて、私はここでもある意味とまどった。
無論私はそんなお店とかに興味はない。
男性経験など生まれてこの方皆無だ。
キスすらしたことがない。
性の力は魔法力に直結する。
故に一流の魔導士は魔力周波数の乱れと低下を招きかねない安直な性交渉などまずしないものだ。
かつて母に聞かされたはるかな異世界から伝わる話では、ある異世界の国を統一した英傑は売春婦を近づけなかったという。天下を取るものは遊女と呼ばれる売春婦を近づけなかった、それこそ一流の魔導士も見習うべき姿勢だと、母が言っていた言葉を今でも記憶に覚えている。
だが、帝国はこの点カーツとは建前と本音が違う。
帝国もカーツと同様、売春などの性産業は規制されてはいる。
しかし、実際は首都のはずれの地区では公然と性産業の店がわんさか堂々と営業している。
表向きは禁止されていても帝国では喫茶店や風呂屋、カジノ付属レストランなどの名目で届け出をすれば事実上“そういう”系統のお店が開けてしまう。
帝国の警察はこれらの業者から大量のリベートと選りすぐりの美少女や美少年をあてがわれているから絶対に取り締まらないという噂をよく聞く。
それらの店の上りは最終的に帝国貴族の懐に入っているともうわさで聞いたことがあるが、魔導士仲間もこの点については口が堅くて話していた記憶がない。
私も魔導士課程の同期生にモンスター系の中でもとびきりの●●が楽しめる“触手風呂”とかいう所を勧められたことがある。
無論断ったが、男気がないことなどをさんざんからかってくるうっとうしい女だった。
私が断り続けると、今度は“百合喫茶”と書かれたパンフレットを私に渡してきた。
「人間種もエルフも美人ぞろい。究極の(以下略)」
私はそいつの喉に水平チョップを見舞った。
街中は帝国に比べて装飾は質素だが活気があることはそのあとの散策でよくわかった。
2人を横眼に見る。
まず戦場などでは見せなかったウィラードとエレノアの自然な少女としての笑顔。
ふと私は自分も少女なのだと忘れていた自分に気が付いた。
敵魔導士に拘束されている捕虜の身分。
だが、そんな緊張下の中で、このままの時間が続けばよいのに……と思う自分が確かにその瞬間いた……。
日も暮れてきたころ、丁度私たちは徒歩で私が軟禁されている第1軍病院へ戻ってきた。
「さて、それでは明日から本題に入ろうか、エリカ君」
ウィラードの言葉にはっ!となった自分がいた。
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