第57話 12.7mmのとどめ 魔族化の代償
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魔族のような体に所々ヒビが入るような状態になり、そこからさらにかなりの魔法力が漏れていくのがエリカたちにははっきり見えた。
異常な魔法力を内包していたルナは見る見るうちに魔法力と体力が落ちていく。
「ばっばかなことがああああっっっ!!!!なぜ私の魔装薬の効果がああああ!!!!!!」
「きっ・・・・貴様ああああ!!!ヴァールハイト!何をした!?」
「私はあなたの防御魔法を破るためにこの銃という武器の矢の先端にラグナロク鋼をコーティングしてあなたに打ち込んだだけ。あなたも第一級魔導士の端くれゆえにまず通常の物理攻撃は通用しないと思ったから」
冷静な返答をするが、エリカは事態を今一つ吞み込めない。
たしかにラグナロク鋼は帝国軍魔導士の無敵に近い防御魔法も破る奥の手だ。
だが、ルナは防御魔法を破られただけでなく、デーモンの形態が解けて元の姿に戻りかけている!?
マリエッタも同様に分析する。
“ルナの奴が使ったのは恐らく魔界で産出する呪禁阿片をベースにした魔装薬。常用すると魔界の魔族に匹敵する魔法力を得られるけど、やがて魂も肉体もデーモン化して後には戻れなくなる禁断のクスリ。道理で限界を超える異常な魔力を集中させたから私の防御魔法を破ったわけか!?”
“しかし変だ……。あのクスリは使うと徐々ではあってももう元の人間には戻れなくなるはず……。ましてあれだけはっきりデーモンの特徴が身体に出ていたら……。それがなんで半分とはいえ人間に戻っているの……?”
だが!?
「まだ私はくたばっていないぞ魔女どもおおおお!!!!!」
マリエッタの疑問を尻目にルナは剥ぎだしの殺意を再びむき出しにした。
まだ奴は立ち上がろうとする。
ならば!
私はMG42をゆっくり丁寧に床に置いた。
2脚があるから置きやすい。
魔法箱に手を突っ込み、あれを取り出すよう念じる。
出てきたのは12.7mm×99という巨大な矢を使う巨大な銃だった。
教本によると、バーレットM82A1M(M107)というらしい。
本来相当な遠距離を狙撃するのに使うらしい。
私は躊躇なく巨大な矢を箱に詰める。
無論、銅で覆われた矢の先端部分にラグナロク鋼を念じてコーティングした。
それを銃本体に着けた。
モーゼルとは異なりボルトと呼ばれる部品を手で操作する必要がなく、一度チャージングハンドルと呼ばれる部品を手前に引いて離すとそれが元の位置に戻る。
すると、箱の中の矢がすべてなくなるまで連続で発射可能らしい。
目の前の、半ば元の姿に戻りかけてながらも片手の鉤爪でこちらに襲い掛からんとしているルナ・クロムシュタット。
私はバーレット本体上についている双眼鏡のような照準器をのぞき込んだ。
メモリが見える。
それで彼女の身体中央付近の最も面積が広いデーモン化した皮膚のあたりに照準を合わせた。
その弱弱しくなったがしかし、殺意は十分伝わってくる魔女へ。
躊躇なく引き金を絞った。
ドゴォォォォッッッッッッッ!!!!!!
ガレキが散乱するホテルの床から木くずや大理石の破片と粉が舞い上がった。
オークの連中辺りが使う黒色火薬を使った原始的な大砲をさらに鋭くしたような響きの轟音と共にほんの一瞬だが銃身が後退したのが分かった。
そういえばオークの大砲を思い浮かべて今更気づいたが、この異世界の銃というものは発射してもオークの大砲と違って煙がほとんど出ない。だから連続射撃しやすいと肌で実感する。
まだ魔族の体が中途半端に残っていたルナの体が宙に舞った。
そのままホテル廊下をまっすぐ吹き飛び、突き当りの壁に派手に激突した!
大理石の壁が砕け、高価な調度品の皿や絵画が粉々に粉砕されるか、見るも無残にひしゃげている。
天井のシャンデリアの部品の一部が衝撃で落ちてくる。
倒れたロウソクの火が赤いカーペットを一部焦がして煙と共に消えた。
その向こうでは完全に人間に戻ったルナが虫の息状態だった。
身にまとうものはもはやなく、ただ暗い元の表情に戻っていた。
「話してもらおうか?私がなぜ投獄されたのか?」
「オ……、お前に……いうことなん・・・…か・・・ない!」
エリカは魔法箱からエリクサーを取り出す。
それも年間で僅かしか産出されない上級物。
瀕死の重傷をもたちどころに治せる超レア回復アイテムだ。
「あなたが真実を話してくれるというならこれをあげてもいい」
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