第34話 隠れ家へ逃げ帰る
面白かったらブクマしていただけると励みになります。
「分かった。あとはこちらで調査する。ありがとう」
アポログラス共和国首都ジェラード中心部・最高級ホテル・インペラトール。
最高級アドミラルスイートでウィラード大尉は食事をしながら通信魔法で本国と隠語を交えて連絡する。
食事は行者ニンニクと玉ねぎを添えた1.5キロのTボーンステーキにエビとホタテのクラムチャウダースープ2杯。
アポログラス共和国首都近郊のブドウ畑でとれた在来種ブドウを酒場のホイリゲが醸造したばかりの新酒の辛口白ワイン5杯を飲みながら偵察飛行隊からの緊急入電を統合情報局本部経由で直接脳内で聞く。
「大体このあたりに潜んでいると網を張っていたが、やはり傭兵ギルドのあたりか!」
ウィラード大尉は食事を終えると、部屋の窓から傭兵ギルドの建物がある方向へと見下ろす。
ニヤリとした彼女の端正な顔立ちが窓ガラスに映った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギルドの酒場に帝国と同じく魔法による映像が投影される。
時刻は夜6時頃。
エリカは今、傭兵ギルドの酒場へとようやく戻ってこれた。
魔法玉の魔力が枯渇し、自身はほぼ魔力が封じられているがゆえに5時間以上も歩いてここに帰ってきたのだ。
共和国にはそれほど鮮明に映像を全国に流せる魔導技術は確立されていないと聞いていたが、ここの映像は帝国と遜色ない。
アポログラスも帝国レベルの魔導映写技術が確立されたとは聞いていないが・・・・・・。
「昨日、我が国の領空を侵犯したカーツ共和国魔導士に対し、我が国は迎撃に成功しました。政府はカーツ共和国政府に抗議するとともに……」
おかしい?
領空侵犯したのはカーツ共和国の魔導士だけでなく帝国の魔導士も同じだ!?
だが、魔導放送では帝国の魔導士が領空侵犯した件には触れていない。
私はギルドのカウンターで防空アルバイトの報酬をもらう。
速くこの国を出たい!
速く隠れ家へ戻りたい!
書類の名前と顔写真は当然アンナ・モルコフスキーだ。
もうこの名前と写真は当面見たくない……。
「ちったあこの国の実態が分かったかいお嬢ちゃん」
ルスベルグの在野がいつの間にかカウンターに座っていた。
初めて会った時と同様、ジンをビールで割った酒をあおっている。
「何があったか分からないがお嬢ちゃん、あんた帝国の魔導士かなんかだった口だろ?」
私は一切沈黙する。
表情も一切変えない。
「まあいい、誰でも答えたくないことはあるもんだ……」
「失礼する!」
私は入手した物品一式の内、魔法箱に入りきらなかった分をトランク2つ分持ってそそくさと酒場を出る。
「だが、お嬢ちゃん!世界はきたねえもんだ!私はそこで生き残るために在野の外道魔法だろうと何でも身につけてきた!あんたが知りたいこともいろいろともしかしたら知ってるかもってことは覚えておいてくれよ!」
私は聞く耳を持たずにギルドを出た。
夜だが、一刻も早くここを出たかった。
私は馬に荷物を載せると、急いでジェラードを出た。
道の途中で彼女を監視する容姿端麗な女性が馬に乗って彼女をひそかに追跡する。




