第32話 照準、その先に親友
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「う・・・・・・くあああ!!!!!」
ドサッッッ!!!!!!私は引っかかっていた木から落ちた。
ごくわずかに残っていた魔力を集中したとはいえ、かなりの衝撃で全身を強打した。
頭がフラフラする……。
森に墜落するとき、ギリギリマリエッタのくれた高所から落ちるときに衝撃を和らげるアイテムも併せて駆使してもやはり痛い。
ふらつく頭がはっきりしてくるとエリカの表情に恐怖がともった。
立ち上がるとそこには既にアリスが無表情でこちらを見ていたのだ。
飛んでいる時よりはっきり顔が見えるが、目には全く光がない。
「アリス、止めて!どうしちゃったの!?私よ、エリカ・ヴァールハイトよ!!」
エリカの呼びかけにアリスは無表情のまま両手で魔法陣を展開し、強力な魔力を凝縮していく!
アリスは極大火炎魔法・ローゼンフォイアの術式を唱え始めた。
彼女の目の前に展開された魔法陣からバラの花の形をした炎が見る見るうちに燃え上がり始める。
“ローゼンフォイアをここで!?第一級魔導士が放てば半径3キロは確実に炎上して3日3晩は燃え続けるのに!?”
私は腰に差していた皮ケースから、反射的に”けんじゅう”を抜いた!
異世界から召喚した”CZ75”と呼ばれる銃。
私はCZ75と呼ばれる名称の銃の柄の中にある空洞に”まがじん“という金属の矢が入った箱を差し込んだ。
“すらいど”と呼ばれる銃上部の動く部品を手前に引いて思い切って離す。
“すらいど”という部品は鈍い金属音をたてながら元の位置に戻った。
すでに“はんまー”と呼ばれる手元に近い部品は“すらいど”を引いたときに起き上がっていた。
本によればこの銃もこれで矢を発射可能なはずだ。
帝国の第一級魔導士の防御魔法は戦闘時または緊急時に瞬時に展開されるよう私たちは厳しく訓練される。それゆえに第一級魔導士は誰でも危機が迫った時は無意識にそれを展開できる。
そして、それは怪力のオーガやゴーレムの一撃でもびくともしないほど強力なもの。
通常ならこの異世界のどのような物理攻撃や武器でも歯が立たない。
けれどあのネクロトロールを一発で仕留めたラグナロク鋼のコーティングをすれば!
私の手に握られている“けんじゅう”と呼ばれるそれは、手で握る柄の中に”まがじん”と呼ばれる矢の収納箱を収めるようになっている。
今、”けんじゅう”本体に差し込まれた”まがじん”には15個の先が丸い小型の矢が入っている。
どうやら9mm×19パラベラムと呼ばれる、モーゼルという名の長い”らいふる”とは違う小型の矢を使う。
ウージーと呼ばれる連続で矢を射撃ができる銃と同じ矢を使うタイプだ。
丁度手の中でそれを握って構えた状態なので、手のひらの中で先が丸い小型の矢の銅色の部分を頭の中でイメージする。
すると構えたままの状態で矢の先端にラグナロク鋼をコーティングできた。
私にはほとんど魔力は残されていない。
この“10分間”だけ対象にコーティングできるラグナロク鋼の精製もいつまでできるか……。
アリスの表情に全くためらいはない。
間違いなくこちらに極大火炎魔法を撃ってくるつもりだ!
私はためらいながらレバーを絞った!
タンッッッッ!!!
乾いた音とともに放たれた矢はアリスの右の髪をかすめた。
その時、初めて無表情で目に光がないアリスに動揺の表情が浮かんだ。
あわせて一瞬、目に意識の光が戻った。
が、すぐに元に戻る。
思った通りラグナロク鋼でコーティングした矢は帝国軍第一級魔導士の防御魔法をも容易に貫通できた。
けれど。
アリスに傷はない。
無意識のうちに外していた。
無理だ……。
私には撃てない……。
そんなエリカに構わずアリスはローゼンフォイアを放たんとする。
その時!
「何だらだらしてんだよ馬鹿―!!!!!!」
上空から聞き覚えのある叫び声。
アリスは魔法を強制キャンセルしてその場から飛んだ!
そこにルスベルクの在野魔法使いが強烈な蹴りを撃ち込んだ。
彼女の強烈な飛び蹴りが先ほどまでアリスのいた地面にめり込む!
間一髪、アリスはそれをかわして5メートル先で着地した。
「馬鹿!!こいつは敵だぞ!!早く仕留めろ!!!」
「・・・できない・・・・・・」
「何を言っている、ここは戦場だぞバカやろー!!」
ルスベルクの在野は片手で何かを唱え始める。
「ネクロブラストっ!!!!!!!」
「止めろ!外道!!」
エリカはルスベルクの在野に掴みかった。
暴発を防ぐためにルスベルクの在野は魔法を強制キャンセルする。
「何を!?在野が苦労して取得した魔法を使って何が悪い!!」
エリカとルスベルクの在野が言い合っているうちに、アリスは仲間からの通信魔法を傍受した。
「カーツハ撤退シタ。タダチニ帰還サレタシ!」
ポーチから魔導具を取り出す。
煙幕を巻いた。
霧のような煙があたりをおおう。
「必ズ殺ス、帝国ノ敵!」
瞬時に帝国特製の金属製箒を魔法で現出し、それに跨って彼女は大空へと飛び立っていった。
「アリス……」
「あれは……、お嬢ちゃんのダチなのか……?」
エリカはルスベルクの在野に背を向けて森の中を歩き始める。
「何でもありません」
無表情を決め込む。
そのままエリカは一切振り返らずに木の年輪などを頼りに首都へと戻る。
ルスベルクの在野は追ってこなかった。
空を見上げる。
もうアリスの姿は見えなかった。
空を見上げるエリカの方を一筋の涙が流れる。
その涙は左腕から流れる鮮血と同時に彼女の肌を流れていく。
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