第27話 突然の領空侵犯
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翌朝5時に起きた私は身支度を整え、目玉焼き、トマトサラダ、レンズマメのスープにハムと黒パンの朝食を宿で取った。
それから8時くらいに出発し、目抜き通りへと向かう。
朝早くから市場が開かれ、あらゆる種族が珍しいものを売っている。
魔力の回復に必要なポーションや、医薬品、コンパクトな携行食など必要な物資を買い込む。
中立国の首都だけに品物ぞろいは帝国と遜色はない。
だが、油断はしてられない。
常にへんげの石とローブで顔と魔力周波数を隠しておかないとスパイがいる可能性が高いから気をつけないと!
どこに帝国やカーツのスパイがいるか分かったもんじゃない。
昨日の在野はスパイではないと思うが気をつけておかないと。
それは突然だった。
けたたましい警報音が町中に鳴り響いた。
これは空襲警報!?
同時に胸につけていた傭兵の証である赤い宝玉の記章が光った。
これは召集の合図だ。
実は帝国の記章でも同じ機能があるからすぐに分かった。
だが、同じ赤とはいえ、帝国第一級魔導士のそれとは作りが安っぽい。
私の心に惨めさが湧き上がる。
その時だった。
“!?”
私はとっさに目抜き通りの路地の建物の影に隠れた。
急いで魔法力をゼロに制御する。
すぐ近くを低空で箒に跨った魔導士たちの編隊が南に向けて飛んでいく。
一瞬だったが見えた。
帝国軍の魔導士だ。
だが、第一級魔導士ではなかった。
魔女帽子に入ったオレンジの線から第二級魔導士の編隊だった。
帝国は共和国と戦争状態だが、それはカーツ共和国等であり、アポログラス共和国は中立国のはず。
現実では中立国付近でも戦闘は行われる。
しかし中立国のなかでもアポログラス共和国は重要な国故に領空侵犯はめったにないはず。
最もどんな時でも中立を維持する為にアポログラスは躍起になって防空能力を強化するために私のような傭兵を雇っているのだが……。
恐らく偵察部隊だろうが、第二級魔導士に斥候をさせるとはまあいつもの帝国貴族のやり方らしい。
「ここにいたのかアンナ・モルコフスキー大尉!共和国が領空侵犯した!直ちに迎撃してくれ!」
いつの間にかギルドの係員が私を見つけて叫んだ。
「共和国?どこの?」
「カーツだ!早くしてくれ!!!」
ギルドの係員があわただしい。
アポログラスへの領空侵犯はそれほど起こらないはずなのに。
私は乗る気がしないが傭兵の出撃地点であるギルド北側の発着場へ向かった。
そこに行くと、既に発着場には色とりどりのローブや服装を着た魔法使い上がりたちがひしめき合い、準備ができた者から逐次箒で上空へ飛び立っていく。
内心、慌てている。
防空任務がこんな時にまわってくるなんて!
アポログラス共和国はヴァーンズハイトともカーツ共和国とも持ちつもたれつの関係故にそれほど領空侵犯は少ないという情報だったのに、よりによってこんな時に!?
私にはわずかな魔法しかないのに……。
その時になって私はマリエッタが渡してくれた魔法箱に仕舞っていた袋のことを思い出した。
それを探るときれいな翡翠色の玉が出てきた。
魔法玉。
主に帝国が開発生産する魔法力をためておける外部増強タンクのようなもの。
これなら強力な魔法は使えなくても最低限の魔法と箒は使える!
けれど時間は限られるからできるだけ激しい戦闘はしないように他の連中に隠れて戦っているふりをしよう。
「準備ができた者はさっさと行け!!今回の侵犯はかなりの数だぞ!!」
傭兵として雇われた魔法使い、元魔導士、魔女と呼ばれるそれら崩れの外道らが次々と箒に跨って空へと飛び立っていく。
箒と言っても中には魔法の杖に跨るものもいるし、槍に跨るものもいる。
私は第一級魔導士の資格をはく奪されて以来、久しぶりに箒に跨り、大空へと飛び立った。
ブランクはあっても体は飛行の仕方を覚えていた。
全く自然に優雅に飛べる。
けれど以前のように自由に飛び続けられない。
私自身の魔力は大きく封じられたままでほぼ魔法玉だけに頼った魔法力では持って1時間くらい。
「おーお嬢ちゃん!やっぱ出撃命令来たんだな!」
こんな時にまた在野のルスベルク上がりが近くまでやってきた。
年季の入った箒に跨り、私に横付けするように並行して飛ぶルスベルクの在野。
「今は敵が来ています。お話は後で」
「まあまあ、そう肩に力を入れるなって!ヤバくなったら逃げりゃいいんだし♬」
私が魔法力はほぼ使えない状態というのは絶対にバレないようにしないと!
そうこうしているうちにかすかに敵の編隊が前方に見えてきた!
限りなく魔法力を節約して測距魔法を使う。
距離約1キロ!
白い魔女帽子にローブ、そしてブーツ。
係員が言ってた通りカーツ共和国か!?
私は箒に跨ったまま、腰の後ろに付けたマリエッタがくれた小型魔法箱に手を突っ込む。
そこから“ウージーと呼ばれる銃を取り出した。
共和国の魔導士ならラグナロク鋼のコーティングなしでも何とかなるかもしれない。
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