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はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~  作者: せんぽー
第4章 七星祭編

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第68話 ベッドの中にいたのは

 小鳥のさえずりが聞こえ、そっと目を開ける。窓から差し込む朝日が眩しく、目を擦った所で昨日とは何か違うことに気づいた。

 なんだかすごく暖かいものが抱きついてるような……。

 

「!?」

 

 毛布を捲ると、俺の元ですやすや眠っていたのはカトリーナ。彼女は俺の胸に顔を擦り寄せ、足を絡ませてきていた。雪のごとく真っ白でもちもちの太ももが短パンから見える。


 華奢なようで太ももなどはしっかりもちもち。カトリーナが女子であることが分かる。

 肩に摺り寄せる頬っぺたもお餅のようにぷにぷにだった。永遠に触っていたくなる。


「カトリーナ、なんでここに……」


 この状況は非常にまずい、大変まずい。男子フロアとはいえ、このことが悪魔女やアスカたちの耳に入ってしまえば、大惨事に違いない。いじられる。


「ん……ネル、おはよ…」

「おはよう……ってそうじゃなくって」


 マイペースなカトリーナはこちらが驚いてるのも気にすることなく、上体を上げながら目を擦っていた。

 色々ツッコミたいことが山ほどあるな……。


「どうしたの…そんなのに驚いて」

「いや、どうやって入ってきたのかなと思いまして」

「普通に窓から入ったよ?」

「窓からってなぁ……で、なんでここにいるんだ?」

「ネルを夜這いしにきた。ネルには『ド変態ロリコンやろう』ってあだ名があったから、小っちゃい私相手なら襲ってくれるかなと思ったけど、ぐっすり眠ってて、ぺちぺち頬を叩いても起きてくれなかった……頑張ったのに残念」

「はぁ??」


 『ド変態ロリコンやろう』って……あれか、アスカと戦った時にリコリスが勝ってに付けたやつか。なんでカトリーナが知っているんだ…………。


「でも、ネルに触れてるとすごく暖かくって…気づいたら寝ちゃってた」

「お前なぁ…」


 このホテルは選手の宿泊施設に指定されているようにセキュリティは高く外からの侵入者を易々とは許さないだろう。しかし、カトリーナはそれを看破して堂々と窓から入ってくるとは…さすが勇者、恐れ入った。


「姫様ァ————!!!」

「どちらにいらっしゃいますかァ————!!!」


 案の定、外からはむさ苦しい男たちの声が響いてきた。朝から元気なこった。


「なぁ、カトリーナ。あれ、お前を探しているんじゃないのか? 昨日から放ってるんだろ? いいのか?」

「ん……そうだけど………気にしなくていいよ。私が部屋にいなくって探し回ってるだけだから」


 それって放置していてもいいのか…?

 結構大事になっているのでは?


「もうちょっとネルと寝たかったのに………んん………」


 寝ぼけ(まなこ)をごしごしと擦るカトリーナ。信者たちに起こされてご不満なようだった。


 大体にも薄いシルクのキャミソールを着ているカトリーナ。服が肩から落ち、危うく見えるところを俺は押さえ、服を直す。随分と危なっかしいお姫さんだ。


「ネル、おはようのキスして?」

「…………しません」

「じゃあ、一緒に朝ごはん食べよ?」

「まぁ、それなら」


 お姫さんはのほほんマイペースだが、まだ外から声が聞こえてくるな……さっきよりも大きくなってる気がする。大事にならないといいが……。


 カトリーナ本人が気にしなくてもいいというので、俺も彼女に従って外の声を無視。支度をすると、食堂へと向かった。食堂に踏み入れた途端、生徒たちの視線が一斉に俺たちに向いた。


「あれ、ゼルコバのネル・モナーとオブトゥサの“姫”が一緒にいるの?」

「そりゃあ、2人は勇者だから。親睦を深めているんだろ」

「でも、さっきオブトゥサ学園の男子たちが姫様を探していなかった?」


 俺たちを噂する声が聞こえてくる。

 先に来ていたメミたちを見つけると、あちらも気づいたのか駆け寄ってきた。


「おはようございます、お兄様。そちらの方は?」

「オブトゥサ学園の勇者の————」

「それは存じております。なぜ、兄様といらっしゃるのですか?」


 いつもより語気が強い。上品な口調がさらに圧を増している気がする。笑顔が余計に怖い。


 メミ怒ってるな……。

 あれかな……最近メミと遊んでないからかな?


「兄様、説明を」 

「それは私がネルの婚約者だから」

「なっ!?」


 横から入ってきたのはカトリーナ。俺の腕を取ると、腕を絡め身を寄せてきた。


 カトリーナさん??

 あなたは………一体何をおっしゃっているのです?

 婚約話なんて俺一度も聞いてないよ? 

 親父からもそんな連絡一度もないよ?


「何を言っているのですかっ!! こ、こ、婚約だなんて!」

「私とネルは近い将来結婚する仲なの。小姑さんは引っ込んでて」

「こ、小姑ぉ?!?!」


 関係ないからと言わんばかりにカトリーナの言葉に一刀両断され、思わず後ずさるメミ。

 いや、メミさん。こっちを見られても、兄様なーんにも知りません。兄様も今初めて知りました。

 カトリーナは俺に顔を近づけると、耳打ちをしてきた。


「この関係なら、外でネルと一緒におかしくないでしょ?」

「……まぁ確かに」


 捜査で行動を共にする以上、いくら隠密行動するとはいえ、俺たちは選手でもある。カトリーナなんて注目選手の一人だろう。


 たびたび会場から抜け出していたら、目撃される時だってある。その時のために、会場外でも会っていてもおかしくない“婚約関係”を一時的に作る。


 疑われるってことはないだろうが……でも、もっといい方法があっただろうに。といっても、代替案は思いつかないので、とりあえずカトリーナの案で進めていく。


「お兄様、私に何か隠し事をしていますね?」

「隠し事……?」


 なんと察しのいい妹だろう。とりあえず、俺は隠し事なんてないぞと、とぼけてみせる。


 メミの直感もいいとは分かっている。しかし、ここまで勘が鋭いものだろうか。まさかとは思わないが、この前話していたGPSを俺につけてるとかないよな?


 咄嗟に俺は変な機械がついていないか、服を確認する。ふぅ……良かった。それらしいものはない。


「私と兄様の仲です、とぼけられても私には分かりますよ。昨日もほとんど席におられませんでしたし…それで? 何を隠されているのです? そこの女(・・・・)には話せて、私には話せないようなことですか?」

「………」


 正直、メミを巻き込みたくはない。競技に集中してほしいし、大会を楽しんで欲しい。

 十中八九メミに協力してもらえば、全力で助けてくれるだろうが……普段から迷惑をかけているのだ、今回はできる限り巻き込みたくない。 


「ああ、お前には言えない」

「なっ、……」

「ただお前を信頼してないってわけじゃない。そこは誤解しないでくれ。お前には競技に集中してほしんだ。兄としてはお前が優勝して表彰台で笑ってる姿を見たい」

「兄様……」

「だからさ! 優勝はメミに任せた! リコリスのことも任せたぞ! お前に期待してるからな」

「……! はい! 分かりました! (わたくし)メミ・モナー、兄様のためにチームを絶対優勝に導いてみせます!」


 期待を寄せられていることにメミは全力で敬礼をする。一気に大会へと意識が向いた。メミはおかしなところはあるが、期待にはしっかり応えてくれる。昨年の大会も経験しているし、メミが一番信頼おけるだろう。


 ……よし、これで上手く誤魔化せたかな?


 本当は俺も観客席でメミを応援したいところだが、ここはリコリスやラクリアたちに任せよう。

 

「ではリコリスさん! 今日は頑張りますよ!」

「え? 何急にやる気出してるの? どうしちゃったの、メミ?」

「寝ぼけたこと言ってないで、準備しますよ! ではお兄様、ご武運を!」

「ちょ、まだ私朝ごはん食べてないんだけど~!!!」


 朝食にありつこうと手を伸ばすリコリスだが、首根っこを引っ張られ、食堂から退場していく。午後からの試合と聞いていたが、あれだと一時解放してはもらえないだろう。

 

 ああ、かわいそうに…………いい気味だ。


「じゃあ、俺たちも食べたら行くか」

「うん」


 その後、カトリーナと一緒にいる俺を見つけたアスカとラクリアたちからも、「なんで?」という顔をされたが、すぐにいつもの顔に戻った。問い詰められることはなかった。リナには呆れたような半眼で見られた。


 勘のいいアスカとラクリアは察したのだろう。

 ————俺が面倒事に巻き込まれているのだと。


 察したのなら助けて欲しい。ざまぁとでも言いたげな厭味ったらしい笑みで「おめでとさん」って拍手するんじゃなくってさ……「婚約おめでとうだYO~!! FOOOO!!」とか茶化すんじゃなくってさ……。


 かといって、俺から話すこともできず、カトリーナと朝食を終えると、捜査のため街へと出かけた。

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