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はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~  作者: せんぽー
第5章 迷宮攻略編

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閑話 メミの恋敵

 突然現れた彼女は、今まで見てきたリコリスとは違い、淡々としていた。

 うるさいとは真逆の存在。


 見た目はあのリコリスさんと全く同じ姿。

 しかし、やることなすこと全てが違った。


 目覚めたばかりだというのにベッドから起き上がり、テキパキと支度を始めたリコリスさん。いつもなら少しはごねるというのに、すんなりと兄様の言うことを聞いていた。


 廊下を歩く姿は凛々しく、無表情な彼女はいつものちゃらんぽらんなリコリスさんとは別人だった。


 冷静で知的で気が利く人。

 普段のリコリスさんも黙っていれば綺麗な人だった。


 だが、トラブルメーカーということもあって、惚れるよりも距離を置こうという思いの方が勝っていた。


 本当に、騒いでないと生きられないのかと思うほどうるさい人だった。


 そんな普段の姿を見ていたせいだろうか。

 いつもとのギャップに惹かれ、みんなの視線が彼女を追いかけていた。


 もちろん、兄様の視線もいつも彼女に――――。


「なんで……兄様のそばにいつも私がいるのに……」


 モテまくり、兄様の近くにいつもいた彼女に、私は分かりやすく嫉妬した。

 女子から見れば王子様、男子から見ればクールな美少女。

 

 そりゃあ、兄様がいなければ……今のリコリスさんに惹かれなくもないですけれど……。


 でも、それでも腹が立った。


 兄様に迷惑をかけるおバカな女が、今では一番兄様の役に立っている。

 そのポジションは本来私の物。

 活躍を見せれば見せるほど、兄様の見る目は変わった。


 でも、一番役に立っているのは私なのに。

 ぽっと出の女に、兄様を奪われるわけには……。


 決してリコリスさんをいじめたいとかそういう気持ちはない。兄様と秘密を共有した以上、リコリスさんをしっかり見守るつもりだった。

 ただ……兄様の隣を奪われるのが嫌だった。


 ――――いつものリコリスさんに戻ってほしい。

 ただそう思っていたのだけれど……。


 私たちで爆発魔法陣を破壊し、迷宮へ出る途中。

 

「メミさん、少しいいですか」

「はい、なんでしょうか?」


 私はリコリスさんに呼び止められた。

 兄様と距離を置き、私とリコリスさんで少し離れた場所を歩いていく。


「私が元に戻れば、きっとあなたにまたご迷惑をおかけするのでしょう。なので、先に謝罪しておきます。大変申し訳ございません」

「……どうにかするつもりはないのですね」

「はい、過去の私が未来の私を変えることは不可能ですので」


 その通りではある。

 今のリコリスさんは過去の記憶しかない。

 あの道化のような女に干渉することはできない。


 だから、せめてもの思いで、私たちに謝罪をしているのだろう。

 未来のリコリスは過去の自分にまで迷惑をかけるとは……。


「ネル様、メミ様、そしてご友人方に囲まれて私は良かったです。向こうの世界では知らないことばかりで、色々学ぶことができました」


 そう言って、リコリスは柔らかな笑みを浮かべる。

 この前まで笑えなかった人が笑えるようになっている……。


「メミさん、ありがとうございました」


 はぁ…………。

 この女、最後まで……。


「できれば、私も本当はあなたのままでいて欲しいんですけどね……」


 と、ふとこぼしていた。

 言うつもりなんてなかった。

 むしろ、恋敵として見ていたのに、早く元に戻ってほしいと願っていたのに……。


 訂正しようとした。

 だが、すでに遅く、リコリスはにこりと笑みを漏らしていた。


「そう言っていただけて嬉しいです。ですが、未来の私も見捨てないでやってください。本質はきっと私と変わらないでしょうから」


 そうして、地上に戻ると、過去のリコリスさんは兄様の記憶に鮮明に残ってしまうような言葉を残し、光の中へ消えていった。


 最後の最後まで悔しくって、ハンカチを噛んでいた。

 見送った後も少し泣いてしまった。


 でも、勝ち逃げされて悔しかったから、泣いただけ。

 別に、あの人が消えてからじゃないんだから……。


 そして、いつもの日常に戻った。

 リコリスさんもうるさいトラブル製造機へと戻った。


 昼休みに、兄様がいる図書館に行こうと、私は回廊を歩いていく。

 言い合いが聞こえてきた。

 複数聞こえてくる声の中には非常に聞き覚えるのある声があった。


 中庭へと行くと、言い合っているあの女と女学生を見つける。

 またあの女はトラブルを……。


「はぁ…………」


 思わず深くため息をついてしまう。

 いつも兄様に迷惑かけてばっかりで、性懲りもなくトラブルを起こす女。

 もういい加減静かに生きてくれないかと、兄様にこれ以上迷惑をかけるなと思うはずなのに。


 でも…………。


「なんででしょうかね……全くもう……」


 不思議と嫌な気持ちはなかった。

 面倒事のはずなのに、色んな所に謝罪をしなければならない時だってあるのに。


「でも、やっぱりおバカなリコリスさんがいいですね!」


 気づけば、私は笑っていた。

 トラブルメーカーの彼女の元に、私は走り出していた。

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