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始まりの街 28

「これで完成かな?」

「ああ、完成でいいと思うんだが開いてみないとな」

「ちょっと緊張するね」


そう言ってクリスは慎重にスクロールを開く。自分で丸めた紙ではあるが、改めて開いていくのは緊張感がある。

あと少しで全てが開くと言うところで、少しの引っ掛かりを感じる。これはクリスが作った糊がしっかり効いている証拠だ。その引っ掛かりをひと思いに開き、遂に魔法陣の全貌が露わになる。と、同時に魔法陣が発動し、ライトがクリスの頭上に現れた。


「おぉ」


ついつい声が出てしまう。顔は知らず知らずの内に緩んでいるようだった。


「追跡するか確かめてみようぜ」

「分かった」


未来に言われ、クリスは席を立ち一歩、二歩と歩いてみる。既存のスクロールと同じくライトが付いてくるのを確認して未来と二人、成功だねと確認し合う。


ここは教会の個室。最近では1〜2週間に1回程部屋を借りて魔法陣作成に取り組んでいた。そして今日ついに思い描いていた形の魔法陣が完成したのだ。


「あとはこれがお昼の鐘まで持てばいいんだよね。」

「あぁ、3時間持たせるつもりだからな。その1つ前の鐘以上には持たせたいな。」


魔法陣の実験は意外にもスムーズに行かなかった。まず、“待機”の象徴(シンボル)のつなぎ方でつまずいた。

1つの待機は簡単にできたのだが、2つ待機を繋げた魔法陣はライトの光源となる球がただ大きくなるだけとなった。どう言うことかと既存のライトのスクロールの模様を確認したところ、いくつかのつなぎ方がある事が確認できた。

それらを一つ一つ試してみたら、ライトの光源が大きくなる場合、ライトの持続時間が長くなる場合、ライトの光量が増える場合など、複数のパターンがあることが分かった。


「電気回路の並列、直列つなぎの違いに似てるけど、ちょっと違うんだよなぁ」


と、未来は何か心当たりがあるようで理解は早かったのだが、それでも未来の知識とこの魔法陣では若干異なるようで、ライトの待機を思うように繋ぐのに手間取ってしまったのだ。

さらに、なるべく長くライトを持続させたいと2個から3個へ、3個から4個へと待機の象徴を増やすごとにそのつなぎ方のパターンが複雑になることが分かり、こちらでもつまずいた。

クリスにはとてもじゃないがそのパターンに慣れる事が出来ず、未来に言われるがまま魔法陣を描く他なかった。理解できなかったのは悔しくもあったのだが、先に進みたいと言う思いもあり未来に素直に従った。


「後で私がちゃんと理解できたら、クリスにも説明するからな、ごめんな!」


と、一応気にしてくれている未来ではあったが、未来は好きなこと気になることにはとことん熱中する質のようで、一方的な指示は時に厳しく、未来が一人悩んでいる時は静かにしていないといけないような雰囲気を出してくるのでクリスは居心地の悪さを感じていた。

待機の象徴の次は追跡の象徴であったが、こちらは1つ書けば済むのでそこまでの苦労はなかった。

そして、以前より計画していた二重線を糊で貼るやり方だがこれはクリスが、


「スクロールって紙を丸めるでしょ?だからさ、紙の裏側に二重線を書いて、それが魔法陣に重なるようにしたらどうかな?余計な紙を使わなくて済むし、開いた瞬間発動して手間も減るよ?」


というアイデアを出し、未来もその案に賛同した。紙の裏側に縦向きの二重線を端から端まで書き、その二重線と魔法陣を重ねる際に余白の部分数カ所に糊を塗った。こうして紙を巻いていき、最後に円を閉じるようにあらかじめ作っておいた魔法陣の切れ目に加筆して完了である。


魔法陣作成で試したこと、学んだこと、失敗した魔法陣や今回成功したと思われる魔法陣は全てノートにまとめてある。これは、魔法陣作成を始めて直ぐに買ったものだ。紙は安いものではない。さらに、ノートともなれば結構値が張る。しかしこれは必ず必要だと言うことで、未来と相談したくさん書けるページ数の多いものを購入した。


「これは、ヴィレリーさんに見せた方がいいかな?」

「直ぐに見せる必要もないだろ。まずはクリスがこの構造を理解した方がいいと思うぞ」

「うっ…、そうだね、全然理解できてないからね」


感慨深げに頭上に浮かぶライトを眺めながらクリスは先のことを思いヴィレリーへの相談をほのめかしたが、未来はまだ時期ではないとクリスを止める。

未来に言われるまま書いていた魔法陣である。クリスがもう一度書くことは可能かと言われれば、それはなんとかできると言える。しかし自分で持続時間を増やしたり、光量を変化させることはできない。つまりはコピーしか出来ない状態なのである。未来はそれを良しとはしないのだ。クリスもそれはいけないと分かっているし、出来れば理解したいとは思っているのだが、如何せん魔法陣に関する今までの未来の態度が怖くて素直に頷けなかった。


「もう私だって焦っているわけではないし、懇切丁寧に教えるからさ」


懇切丁寧とは、自分自身で言うものだろうか。その基準はどこにあるのか。一抹の不安を感じながらもクリスは未来に魔法陣についての講義をお願いした。

お読みいただきありがとうございます。

今後の活動について、活動報告にあげています。

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