↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/38

始まりの街 17

「それではこれから魔導具解体ショーを始めます!」


そう心の中に響くのはテンションの高い未来の声。クリスとしてはどうしてこうなってしまったのかと言う気持ちが強い。今クリスの目の前に置かれているのは、ヴィレリーの魔導具屋で1枚15ペーリで売られているライトのスクロール3枚だ。

解体ショーと言いながらスクロールは解体できる魔導具ではない。スクロールに書いてある魔法陣を見て、どのような構造なのかを読み取ろうと言うのが本来の意味である。

以前図書館に行った時に読んだ魔導具の本には、魔法陣についての簡単な説明が書いてあった。曰く、魔法陣にはそれぞれの決まった事象を起こす為の象徴(シンボル)があり、その象徴の組み合わせと鍵となる言葉で構成されると書かれていた。象徴についてはいくつか例が載っていたのだが、肝心の魔法陣自体は一切載っていなかった。

その為、実際の魔法陣を見てどのようなものなのかが知りたいと未来が騒いだのだ。


「魔法を使うだけなら想像するだけで使えるけど、流石に魔法陣はこの世界の法則に従わないと使えないからね。

 しかも記号と文字で構成されているなんて、暗号を解き明かすみたいな、新しい言語に出会うような、なんだか心ときめかないかね?クリスくん!」


徐々に熱のこもった語気になる未来に、クリスは徐々に引いていった。しかし、一方でこれはチャンスかもしれないと考えていた。魔力供給のおかげで将来食いっぱぐれることは無いだろうがそれだけでは張り合いがない。ここで魔導具や魔法陣について学ぶ事ができれば、それは稼ぎを増やせるかもしれないし、今以上のやりがいを感じられるかもしれないと思ったのだ。

ちなみに錬金術については、本を読んだ時未来が、「ちょっと有機物は苦手なんだ…」と言ってクリスには意味が分からない理由であまり乗り気ではなかった。

そんな事情もありながら、結局クリス自身にも前向きな考えがあった為、1枚15ペーリもするライトのスクロールを3枚も購入したのだ。

なぜ3枚か未来に尋ねたら、大切なものは3つ買う癖がついていると言っていた。これもよく分からない。


いざ気合を入れてクリスは1枚のスクロールを手に取り、開いた。

ごわついた紙はクリスが両手を広げたよりも少し大きく、クリーム色をしている。そこに魔石の色である紫で模様が描かれていた。これが魔法陣なのだろう。二重の円で縁取られ、その中に三角や曲線や四角など、複数の模様が重なったり接したりして描かれている。所々にクリスの世界の文字が書かれているが、“光”とか“継続”とかの単語が書かれているようだ。難しい言い回しや、古い言葉遣いがされている訳ではなく一先ず安心する。


「おぉ!これが!!」


未来は喜色溢れる声を上げる。クリスも、初めて見た魔法陣に目が離せない。


「この、端にある文字を読み上げると発動するんだよね?」


クリスが確かめるように呟く。紙面上の、魔法陣から外れた端には短い呪文のようなものがが書かれている。確かこのスクロールを買った時、ヴィレリーが、紙に書かれた言葉を読めば魔法が発動するよと教えてくれた。

決められた言葉を鍵として、魔法陣を描く為に使われた魔石を動力として、魔法を顕在させるようだ。

他にも目についた象徴や文字について、クリスと未来は話し合った。


「この、結構頻繁に使われている象徴は確か“待機”を表すものだよね?」

「そうだな、なんでこんなに使われているのか…。

 こっちは光を表すものだと思うんだが、月の象徴もあれば太陽の象徴もあるな。どっちも使っているのか?」

「魔法陣のここの文字、発動の呪文と一緒だね。これで発動の呪文を宣言してるのかな?」

「あぁ。そうかもしれないし、もしかしたら宣言せずに、この言葉が紡がれたら魔法が発動すると言うキーワードになっているのかもしれないな。」


ライトの魔法陣は基礎のものだと言ってもいい。実際、魔法陣はそれほど大きいものではなかった。それでもクリスと未来は様々なところに目を付けて議論し合った。そして、魔法陣にどのように魔法が伝わり発動するのか見てみたいと言う話しにまとまった。


「では行きます。

 “暗闇を照らせ ライト”」


この呪文には女神への気持ちを伝えるものはなかった為、クリスは特に思うところはなく呪文を紡ぐ事が出来た。

呪文を言い終わった瞬間、魔法陣に光が灯りそしてジュッっと音と共に魔法陣が描かれている部分の紙が焦げ付き、両手で丸を作ったくらいの光る玉がクリスの頭上に現れた。

確か、光の玉が術者についてくると言う話しだったので、クリスは少し歩いてみる。クリスを追うように光の玉が動く。そして、クリスは光の玉に触れようと手を伸ばす。

熱くはなかった。何かに触れている感覚があるかと言われると特にないのだが、微かに風を感じるかもしれないなと思った。

光はロウソクよりも明るく、太陽よりは暗く、じっと見つめると目がチカチカすると感じるくらいのものだった。未来はこれを、「蛍光灯みたいだな」と表現していた。

手元に残ったスクロールは焦げ付いたところが多く、また魔石の色も失われていることから、もう一度使うことは出来ないだろう。焦げ付いたところにはムラがあり、全く焦げていないところの魔法陣の色は少し紫色を残していた。


「クリス、魔法陣をもっとよく見せてくれ。」


未来に言われ、クリスは魔法陣をしっかりと広げてそれを見つめる。


「もしかして、太陽の部分使われていないんじゃないか?全然焦げてないし。

 それにしても“待機”が妙に焦げ付いているな…。待機って、確か意味を持たせず魔法タンクにする利用法もあったよな…。」


未来はどうやらこの魔法陣の分析に入ったようだ。確かに言われてみればその通り、他にも呪文と同じ文字の部分は焦げているが、それ以外の文字が焦げていないのも気になった。


「なぁ、この焦げてないところ省けないかな?そうしたらスッキリして気持ち良さそうだし。」

「えっ…、魔法陣初見でそんな事言う?」

「そうだよなぁ、まだ情報足りないよなー。」


未来がとんでもない事を言い出した。おそらく、長い間使われ続けてきただろうこのライトの魔法陣に対して、魔法陣の修正などという突飛な事を言う未来。クリスはなんて人間だと驚いてしまう。「でもちょっと考えてみる」と諦めていない様子の未来にクリスは呆れてしまうが、「もう一回新しいの広げて」と急かされれば素直に従ってしまうクリスだった。

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。