始まりの街 15
本日2作目です。
キリが悪くなりそうなので、いつもより短くなっています。
「これ、全部できたのかしら?」
ヴィレリーが目を丸くして、そして表情を硬くしてそう言った。クリスはそんなヴィレリーの様子には気がつかない。
クリスはヴィレリーに言われた通り、2〜3日に1回魔力供給を行った。クリスとしては、1日で10個供給しても問題なさそうだったのだが、きっとクリスの体を気遣っての発言だろうヴィレリーの言葉に、素直に従ったのだ。
「ちゃんと供給できてますか?」
先の言葉以降何の反応も示さないヴィレリーに対して、クリスは自分の魔力供給が上手くいってなかったのでは?と不安になる。
「い、いいえ。ちゃんと出来ているわ。
大変だっただでしょう、こんなに。ほら、50ペーリよ。」
ぎこちない笑顔でヴィレリーは大銅貨を5枚クリスに手渡す。これで50ペーリだ。
「ありがとうございます!」
クリスは笑みを抑えられず、自然と口角を上げる。初めて自分で稼いだお金、それも50ペーリも手に入れられるだなんて、クリスの心は弾んだ。
「次はどうする?数は10個のままでいいかしら?大変なようなら減らしてもいいけど。」
「ん?いえ。大変ではなかったので10個か、もう少し数が増えても大丈夫です。」
ヴィレリーとしては、クリスが初めての魔力供給に無理をしたのだと思ってのこの発言だったのだが、クリスには何ら響いていない。それもそのはず、言葉通り魔石1つを一瞬で魔力供給できるのだから、普通の人が感じる苦労など想像もしていない。
ヴィレリーは目を見張り、そしてディータあいつめとこっそり毒づいた。
「分かったわ。じゃあまた10個お願いするけど、今度は1ヶ月と言わず出来たら持っていらっしゃい。」
次は2〜3週間後かしらねと言って麻袋に入った空の魔石をクリスに手渡した。
◇
「2〜3週間後かー、明日行ったら迷惑かな?」
クリスは教会の片隅で麻袋に入った魔石を広げ、せっせと魔力供給をしている。他の子供達は外に出て遊んでいるか、当番の子が買い出しや夕飯の手伝いをしているはずだ。静かな教会にクリスのつぶやきが静かに放たれる。
「ヴィレリーの様子だと、魔力供給は時間がかかるもんなんじゃないか?
今日の明日で行ったら怪しまれるだろう。ここは念のために2週間後に行こう。
それに毎日50ペーリは稼ぎ過ぎだ。」
クリスにしか聞こえない声が返る。確かにそうだ。せっかく学院に行かない選択をしているのに、魔力供給で変に目立っても良いことはないだろうし、1日で50ペーリはシスター達にバレた時何と言われるだろう。
「しかし魔石って綺麗だねー」
そう言って供給した魔石を掲げる。ガラスがはめ込まれた祭壇の窓から降る光に、魔石が輝く。魔力が空の時は微かに濁った透明な石なのに、魔力が供給された後は濃い紫の石となる。
未来はこの紫の石を、前世で言うところのラピスラズリの様だと思っていた。
「これが魔導具に使われるんだよね、何だか不思議ー。どうやって使われるんだろう。」
「お?クリスは魔導具に興味があるのか?」
魔力を入れることはできるが、取り出す事を考えるとどうやってやるのか想像もつかない。そんな思いを込めた発言に未来が反応する。
「私は機械とかエネルギーとか、そういったものが好きだからな。クリスが興味あるなら一緒に研究しても良いぞ。」
と言うか魔導具買ってきて分解しよう、図書館で本でも探して読もうと騒ぎ出した未来の熱のこもった声に、いけない扉を叩いてしまったかとため息をつく。
しかし今回50ペーリも稼ぎ、また50ペーリが定期的に手に入る予定もある。確か図書館は20ペーリだったはずだ。ディータ曰く、魔法に関しての初歩的な事が書いてある書籍もあると言っていた。もしかしたら魔導具についての本もあるかもしれない。今後魔法を使って働いていくことを考えると、図書館へは一度は行くべきだ。
未来程の熱を持っている訳ではないが、図書館へ行くと言う未来の意見には賛同する。
「そうだね。今度シスターに相談して1日図書館に行ける様にしようか。」
満タンになった10個の魔石を麻袋に詰め直し、クリスは未来にそう告げた。
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