進歩
ミー子は驚く。アニメ画面が映されるだけと思っていたが、まさか本当に人が歌い踊っていた、ステージで。
ステージで動ける範囲は1段高い壇上だが、それでもステージ全体の2/3では自由に動き回っていた。背中もバッチリ。奥へ水を飲みに行くのも自然だ。
脇へ消えていくのも自然だった。
アバターが完全に立体化して動きも人間そのままだ。
「こんなに進歩していたんだね〜すごい!」ミー子は驚いた。グループらしく12人ズラッと登場したが、伽椰子の好きな人は金髪の長い髪をなびかせながら騎士団長として現れた。
彼らは架空の国の騎士団らしい。黄金のレリーフで埋め尽くされた衣装を身にまといマントをなびかせていた。
「王子様がいっぱいだね〜キラキラしてまぶしい…」ミー子は派手なステージと照明に目を細める。漫画の世界が立体化してる。伽椰子が横でずっと手を振り続けてる。日頃ひっそりとして大人しいイメージなので驚く。
今日は映画で着ていたゴスロリ衣装が気に入って今川くんに貰って着てきてる。「絶対、今気付いたよ!ロミくん!」とミー子を抱きしめ感激してる。
熱気も感動も分かるが、ミー子にはついていけない。
凄い爆音のライブが終わりぐったりする。
退場はブロックごとに声が掛かった場所から出る。伽椰子達の席は最前列の階段のないアリーナ席だったので1番最後に呼ばれた。
出ると正面出口がスゴい人だかりで悲鳴が上がってる。皆それを避けて他の出口へ流れていく。
とにかくスゴい人だかりだが、誰かが「救急車呼んでください!」「誰かスタッフさん、いませんか?」と次々にその塊の中から声がする。
「ゴメン、伽椰子ちゃん、しばらくココに居てくれる。」と言ってミー子はその声のする方へ人をかき分けて入っていった。
中心部は腹が真っ赤な女性が目を見開いて、両手を前に誰かに抵抗しょうとした姿勢のまま身体がビクビクと跳ねていた。
「大丈夫!あなた!シッカリして!誰に刺されたの?わかる?」ミー子が声掛けするが目が会わない。
ダイイングメッセージとかドラマであるが、実際の死の間際は視界が真っ暗になり音しか聞き取れないのだ。文字書くどころじゃない!
「カッ、カッ」と何か言ってるが内容は分からない。
「それ、名前?刺した人はカッて名前なの?耳元に唇を寄せたが、そこで事切れてしまった。
担架に乗せられて救急車が行く。警察が現場写真や聞き取りを始める。
「おばさん!大丈夫ですか?」血で汚れたミー子に近づくと手で止められた。「せっかくの服汚れるよ。私は大丈夫。どっかで服買おう。」と伽椰子に笑いかけた。
アリーナ近くの店で新しい服を買い、血で汚れた服は袋を貰ってカバンの中へ。
そのまま焼肉を食べに伽椰子を連れて行く。
「おばさん、良く赤い肉食べれますね!」伽椰子がミー子の食欲に呆れる。
「エッ、でもウチの会社の女子は皆こんな感じだよ。
浮気したホストが客に刺されて小腸ひきづり出された話してて、ミノ好きな子が帰りにミノホルモン買ってたし。」ミー子の話に伽椰子が苦虫潰したような顔をする。
「そういう伽椰子ちゃんもスゴい食べてるよ?」ミー子が指摘すると伽椰子が恥ずかしがる。
「なんか、ああ言うの見ると危機感が湧いて…食べれる時に食べとかないと!って身体がなるんですね。」と伽椰子が言い訳する。
「やっぱりあの女の人、ダメだったみたいです。同じグループ推してた仲間だから残念だな。せっかくライブチケット当たったのに。」と伽椰子が携帯に手を合わせる。
「そうかあ〜残念だね。そう言えば、彼女カバンも推しグッズも手に持って無かったけど。荷物はどうしたんだろね?」ミー子が首をひねる。
「あのスゴい人だかりですよ!足元のどこかに落ちてても分かんないですよ〜」伽椰子が首を振る。
「確かに。スゴい人の数だったもんね〜人が死んでも封鎖も出来ないし…もしかすると難航するかもね、犯人見つけるの。」ミー子が眉間にシワを寄せる。




