ライブ
「結局、私で良いの?サキちゃんかユウちゃんは?」伽椰子が、引きこもり時代ずっと推していたVチューバーのファーストライブのチケットが奇跡的に当たってしまった。
「あの子達はリア充なんです〜まずVチューバーの説明からしないといけないんだもん。」伽椰子がふくれる。
Vチューバーとは動画配信者の一形態でほとんどの動画配信者は顔を出しているが、中にアニメのアイコンの人達がいるのだ。
彼らはプロ漫画家などにアバターを製作してもらい、それをモーションキャプチャーなどで動かす。技術の日進月歩により、身体の動きだけでなく、顔の表情や目の動き、指の動きまで「中身の人」と呼ばれる人の動きを表現出来るようになった。
彼らは元アイドルや歌手を目指していた人達やタレントを目指していた人達なので歌が歌えたりプロ並なのだ。
そのため配信者として一定の知名度を若者の中で持ったVチューバーで広告宣伝などを企業から任されたりするくらい有名になった人達はアリーナでライブまで出来るようになってきたのだ。
伽椰子の推してる人はVチューバーとしてデビューして3年目だ。ちょうど伽椰子がイジメで学校に行けなくなり
ずっと部屋の中でネットを見るしかなかった頃に出てきたのだ。
ゲーム動画配信者は、見てくれる人と会話しながらゲームを進めていくので、まるで友達と誰かの家でゲームを一緒にやってる感覚が味わえる。
伽椰子のような引きこもりには、急にネットで友達ができた感覚が味わえるのだ。
彼は伽椰子がイジメで引きこもった話しを聞き、伽椰子を肯定してくれた。だから、伽椰子はウツにならず、いつか外に出る日を夢見て勉強を続けることが出来たのだ。
映画から飛び出したトムのように、彼はネットから今日伽椰子の前に現実として現れるのだ。
「私が長谷川先輩や硫酸事件の人みたいにPTSD発症しなかったのは推しのおかげなんです!
今日、お礼が言いたいんです!」伽椰子は叔母のミー子を引っ張りながらアリーナをめざす。
「そうか!引きこもりと聞いてたのに、ずっと学校通ってた子と大差ない感覚保てたのは、その推しの人と会話したりゲームしたりしてやり取りがあったからなんだね、スゴいじゃん。」ミー子は平間くんが金の為にゲーム配信者やってて人気あるのが意味が分からなかったが、そういう層と本当に友達のように遊んでいるから人気なのだと理解した。
古参だと水餓鬼・平間くんがデビューした時からの人も居るようだ。
伽椰子もその推しと会話して相談して4年間のヒッキー生活を過ごしてきたから、メンタル保って大学進学出来たのだ。ほぼ戦友のような…
「そりゃ、今日は彼の夢の舞台、晴れの日だもんね。
ちゃんと見届けて、この4年のお礼言わないと。」ミー子も微笑んだ。
「はい、昨日の配信でも明日行くよってコメントしたら、デートやな。1番可愛い服着ておいでって言われた♪」とニコニコしてる。
「あれ?長谷川先輩と付き合ってるんじゃ…」ミー子が言うと、「それとこれとは別!長谷川先輩は現実!
推しはアバターです。本体は中身の人って別物なんです。
そこを間違えて彼氏扱いする子が良くいるんだけどガチ恋って言われて迷惑してるらしいです。」と伽椰子が怒る。
「そっ、そうかあ〜別物なんだね。」ミー子は理解が追いつかない。
「私だったら、そんな会話したらもうリアルになっちゃうよ。のぼせちゃってストーカーなると思う。」ミー子には、何が虚構で何がリアルか境目が良く分からない。平間くんは最初からリアルだったし。
「あ〜っ、そういう人は関わらない方が絶対良いです!
確かに昔はブラウン管の中や映画館の銀幕と相互コミュニケーション取れなかったですもんね。
その世代の人は、無理かもしれません。最近も新宿で動画配信者の女の人、オジサンに殺されたし。死体蹴ってたって。」と伽椰子も合点してくれた。
「でも、好きになったら何かアクション起こしたくならない?今日みたいに会えない日でも?」なんだか分からないが、会話するだけってのも、なんだかミー子世代には苦しい気がするのだ。
「だから、動画には投げ銭機能があるんです。好きって気持ちはお金で済ますの。私も年間5万は掛けてましたよ〜ウツなって病院代親に払わす余裕なかったです!」と4年の引きこもり生活がウソみたい明るい笑顔だ。
「推しって…偉大だね。」ミー子は感心した。




