転身
「キャバ嬢でも不幸アピで同情買って顧客取る人と美人でモテモテで高嶺の花感出して顧客掴むタイプ居るじゃん。樹莉さんは後者で、元が誰にも相手されないブスだったから男達が自分のためにいくら大金出すかが、自分の価値を決めてると思ってたんだよ。」アリーナの入り口が良く見えるテラス席についてお酒を飲みながらミー子が話す。
「元から美人だと男に自分の機嫌を取らせる依存する人が多いけど、彼女みたいに元が100kg近くあってゲームが強かったなら自立心強いタイプだったかもね。
…元の人物像が間違ってたかもしれない。」ミー子がつぶやく。
「俺、噂で聞いたことある。実は自分家に配信セット組んで個人Vチューバーやってるって。」思い出したように平間くんが言う。
ミー子が席を立ち平間くんの胸ぐらをつかむ。
「オイッ、なんでそんな大事な話を今まで黙ってたの!?」ミー子が恐い。普通ポワンとしたマヌケなおばちゃんだが、たまに素が出る。
「ミー子さん!殺気が漏れてるよ〜」平間くんが苦笑いする。
「そんな大事なことを!彼女はVチューバーへの転身を模索してたって事?事務所に内緒で?」平間くんに聞く。「うん、噂だよ?元々機械強いから声も合成音に加工してやってるから誰も分からないんだよ〜確証はない。そのキャラが大きな事務所に入りたい…みたいな?」平間くんがコソコソ話す。
「じゃあ、双子座の騎士に相談したいってマシュマロ送ったのは、口実じゃなく本気で?」ミー子が聞く。
「体重維持するのも大変だし、人間は年取るじゃん?
彼女もアラサーだし先々考えてたんじゃない?って噂だよ?根も葉もないね。」と平間くんが言った所でアリーナの扉が開いた。
まずスタッフが走り出てきた。そして、ずっと先までバラけた。3カ所の扉が解放されるが、人は皆3手の流れがバーの前で1本の流れになり遠くで黄色いビブス着たスタッフが誘導していく。ただ3カ所の出口の間の部分に友達と待ち合わせらしい人がだんだん溜まりだす。皆、携帯をにらんでる。
「席が離れてる友達やネットの友達とかも、ここで合流してカラオケ行くのかもね。確か、あの日も居た気がする。」ミー子が思い出しながら話す。
3カ所から出た人の群れは狭い通路を通るため1本の流れになり、そこには黄色いビブス着たスタッフがインペリアルデッキではなく一般道へ行く歩道橋の方へ誘導する声が響いている。
だんだん、間の隙間で携帯にらんでた人達は合流して話しながら、人の流れに紛れ込んで行く。ミー子が時計を見ると最後のアリーナ席もそろそろ規制退場の時間だ。
混乱を避けるため呼ばれたブロックごとに出る規制退場がラストに近い。出口の人も最初より減ってきて間で再会した仲間と話す人々が増えてきた。
スタッフは各扉ごとにもう2名しかいない。
ほとんどは通路のもっと先、歩道橋の前で溜まってる人を車道へ抜け駆けして事故を起こさせない為に居なくなった。
溜まってた人の中にはトイレに戻る人やまだ見つからない仲間を探しに空いてる扉から中に戻る人が現れた。
「ココだよ!この瞬間だ!私達アリーナ席がフロアに出るタイミング!ココで犯人は中に入ったんだ!」ミー子が指差し叫ぶ。
「可能だ!誰でも入れる!このタイミングなら!」平間くんも声を上げた。まだ中のフロアは人でごった返してる。それに紛れて腹を刺したのだ。
そして奪ったバッグから底鋲をスクレーパー(へら)で取りカバンは目につく所に置いて逃げたのだ。ライブ帰りの人の群れに紛れて。




