突破口
「ねえ、結局アリーナの中も外も詰むんだけど?」ゲーミングチェアをギシギシ鳴らしながら平間くんがミー子に文句を言う。
「なんで、勝手に頼んでおいて私を非難するの?
はあ、税金もらってる時も出来て当たり前、出来ないと文句言われて散々だったけど!
本当に人って勝手なのよね〜」昔の警察はここから手当たり次第に尋問して犯人炙ったけど、今は証拠が命!本人のやりました!なんて誘導だと裁判で負けてしまう。
どこかに絶対ほころびがあるはずなのだ。
物証を見つけないと!
犯人探しからのアプローチを辞めて物証探しに振ってみよう。犯人はあの群衆の中で被害者をどうやって見つけ出したのか?
目視はほぼ無理だ。
倒れた彼女のそばにカバンや推しグッズは無かった。
押されて足元見えない状態だったから見当たらないんだとあの時は思ったが、もしかすると発信機が仕掛けられてたのかも?今はものすごく小さいのがある。
犯人はあの時まだ人混みに紛れていたのかも?
そして彼女の荷物から発信機を外して人目につく所にカバン置いて逃げたのかも?
がカバンは今警察の中だ。調べられない。
写真はネットで見た。踏まれて汚れていたが破かれた様子は無かった。カバンはディオーレだったが手提げはファストフッションのものだった。
大森駅前のファストフッションで同じ商品を触る。
全体が柔らかい布なので、固いものが入ってれば、すぐ違和感がある。
「コッチじゃないかぁ〜う〜んブランド物はなあ〜どうしょう?」ミー子が悩んでると平間君が買ってきた。
「へっ!!コレって50万なんでしょ?何考えてんの?」驚いて変な声になった。
「いや、無理難題を押し付けてるから経費は出すよ。」と照れくさそうに言った。
しかし…絶対ミー子が持って歩いたら変だと思う…まずピンクのキルティング加工の食パンサイズのカバンだ。小さい!財布しか入らない!
まあ、とにかく触りまくる。型はしっかりしてるので中に仕込んでも分からないが、まず穴開けて加工したら絶対バレる!
中も同様にラムスキンで裂いたらすぐ分かる。
キラキラのキーチェンも細工出来ない。職人技の結晶なのだ。下に突起が4つ。良いカバンは底が汚れないように底鋲が打たれてる。
「あっ、コレなら…」すごい標準的な底鋲だ。中に仕込んではめ直しても持ち主に気付かれずに持たせられるかも?かなり力は要るが、スクレーパーで外せそうだ。
後は、アリーナ外から中に入る隙が本当に最初から最後まで無いかどうか…
「同じ時間帯のライブが今夜あるよ。確か出入り口前にバーなかった?そこで終演時間まで飯食って見てようよ!」と2人で実際に見ることにした。
「頭の中で考えてるより、その方が良いよね。人間のやる事だから、絶対中に入れる隙があると思うんだよ。」夕方の入場そして退場まで客数も同規模だ。実際見てみることにした。
アリーナ前のカフェでまず入場を見る。
「これはチケット確認あるし絶対無理!これでつい中で刺されたらアリーナ内に入れる人間が犯人と思ってしまったのよね。
確かに日本はキッチリしてるもの。
でも、この何万人を完璧に制御できる訳ない。どこかにほころぶ瞬間があるはず!」ミー子がカフェオレに砂糖を入れてクルクル回す。
ライブが始まったのか会場扉が閉められた。バーがオープンするまで横浜駅で時間を潰す。
「そう言えば帰りはこのインペリアルデッキ通れなかったのよ。閉鎖されては居ないけど係の人に歩道橋の方へ誘導されたの。」ミー子が当日を思い返す。
「う〜ん、多分橋に何万人の重さが一気に掛かるのを避けるためだね。帰りは一勢だから…
かなり長い距離を分散して係員が歩道橋まで誘導する事になるね…」平間くんが考え事をしてるようだ。




