みなとみらい署
「なんで安請け合いするの!警察だって座礁してる案件を!」ミー子は嘆いたが、平間くんは開き直ってる。
「仕方ないじゃん!良い奴が人の為に配信者辞めようとしてんだよ?助けたくなるじゃん!」とデカいピーターパンが腕組んで鼻を鳴らす。
「結局私が頑張るんでしょ?
何のために会社を早期退社したと思ってるの?
もう世の為人の為に働きたくないの!
私は私の為に残りの人生使いたいの!」ミー子はこの大都会のゴミ=人間の掃除屋みたいな仕事が嫌になったのだ。人のエゴと虚栄心と醜い物がパンパンに詰まってる世界ばっかり見てきて、もう目が腐りそうなのだ。
なのに姪っ子と平間くんは〜年寄りをこき使う!
事件のあったアリーナに来た。中に入れないが付近を歩く。
「アリーナ入り口だけど中に樹莉さんは倒れてた。外に出ようとする群衆に5mくらい引きずられてたから、刺されたのはもっと中。
つまりアリーナライブスタッフと観客、そして演者が容疑者になる。」と言いながら一区切りする。
「警察が今詰まってると言うことは、その考えだと答えにたどり着けないと言う事。
つまり犯人はそれ以外だと言う事。わかる?」ミー子がアリーナ前の階段で振り返りながら言う。
「なんで?樹莉がこのライブ来る事は、ファンの奴は皆知ってたじゃん。
だったら自分もチケット取れば近づけるじゃん?バイトでスタッフに紛れ込んでも良いし。」平間くんが不思議がる。
「だったら、もう捕まってるんだよ。2カ月追ってシッポが掴めないのは、初動が間違ってると言うことだよ。」アリーナの閉鎖された玄関の前で来た道を振り返る。
「つまり、この入り口から外の人間の中に犯人が居るんだよ。犯人はそれを狙ってワザと中で殺したんだよ。」ミー子は考える。自分が犯人ならと。
「それじゃあ、探せなくならない?あの日アリーナ来なかった人全てになるよ。」横浜市民?東京都民?膨大な人の数に平間くんの思考は停止する。
アリーナから抜けて臨港パークまで海辺を歩く。
臨港パーク内にはみなとみらい署がある。殺人までなら所轄で扱ってるはずだ。
「あっ、先輩!何してるんですか?」なぜか顔見知りが臨港パーク内を歩いていた。黒スーツの軍団だ。
「なんでぺぺくんが、ココに居るの?」ミー子が眉間にシワを寄せる。
「先輩こそ?都民なのに、なんで横浜に?」ぺぺ君がダッシュしてきてミー子の口をふさぐ。
「そのぺぺはヤメてくださいって言ったでしょ?僕、今隊長なんすよ!分かります?」と後ろに控えた部下達に目配せする。
「所轄になんで公安が居るのよ?」そのまま小声で聞く。「この間の殺人事件、殺された女がドバイ案件から帰国してすぐに殺されてるんですよ。それで念の為です。」と返ってきた。
「やっぱりネットのファンの中に犯人が居なかったの?新宿みたいに。」ミー子が手短に聞く。
「その日、アリーナ付近に居なかった。アリバイがあったみたいです。それに確かにシグナルで集められて皆高額寄付してますが、ちゃんと性的取引も成立してたのでファン達に不満は無かったみたいですよ。
100万単位の投げ銭する人を集めて温泉旅行行ったりサービスも手厚かったと…」ぺぺ君がニヤリとする。ミー子が股間を蹴り上げる。
「ドバイ案件もこなすくらいなら金のためなら何でもやってたのね。分かったわ。ありがとう。」と小声で言ってその場をスタスタと去る。
「なに?なに?あの人?前も会ったよね?」平間くんが走ってきた。
「樹莉さんはドバイ案件もやってたみたい。元がオタブスだから、美を買われる仕事は歓迎だったみたいね。」ミー子がプンスカしてる。
ずっと美人だった訳じゃない。ずっと醜いアヒルの子やってたのが、プロデュースされて白鳥になった配信者だったのだ。
金額が、彼女のステータスだったのだ。
ドバイ案件も、彼女のステータスでしか無かったようだ。




