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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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53/55

挑戦

あの頃のことを、ふと思い出していた。


初めてミニ四駆を手にしたのは、小学生の低学年頃だった。

テレビでは『ダッシュ四駆郎』が流れ、クラス中が夢中になっていた。

放課後になれば、誰かの家や公園に集まり、夢中でマシンを走らせる。

その輪の中に入りたくて、親に頼み込んで買ってもらった。


おもちゃ屋の棚に積まれた箱の中から、アバンテJr.を選んだ。

あの青いボディを見た瞬間、心が跳ねた。

沢山あった車種の中から迷いなく選んだ。


箱を開け、組み立てて、初めて走らせた時の衝撃は今でも鮮明だ。

自分のマシンは、友達のマシンより“少しだけ”速かった。


その「少し」が、たまらなく嬉しかった。


もっと速くしたい。

誰よりも前を走りたい。

気づけば、そんな想いが当たり前のように胸に宿っていた。


街で開かれた小さな大会にも出場した。

結果は2位。

1位は、年上の背の高い少年だった。


悔しさはあった。

だがそれ以上に、その少年の走りに心を奪われていた。

話しかけると彼は驚くほど気さくで、速くなるための工夫を惜しみなく教えてくれた。


次は勝つ。

次こそ、あのお兄ちゃんの背中を追い越す。

そう信じて次の大会を楽しみにしていた。


しかし、時代はあっけなく変わった。

アニメは終わり、友達はゲームやサッカーに夢中になった。

ミニ四駆を持ち出す者は減り、街の大会も開かれなかった。

あのお兄ちゃんに会うことはなかった。


コロコロコミックで公式大会の存在を知った時、胸は高鳴った。

だが、そこへ行く術はなかった。

親に頼んでも、連れて行ってもらえることはなかった。


ジャパンカップは、いつしか“遠い世界の出来事”になった。


それでも、ミニ四駆への熱は消えなかった。

胸の奥で、消えきらない火がずっと燻っていた。


小5のクラス替えで、ユウと出会った。


ある日、たまたま立ち寄ったみつば屋で、コウスケはそれを見つけた。

コースを走るミニ四駆。

その向こうで、真剣な目をしたユウがマシンと向き合っていた。


気づけば声をかけていた。

躊躇なんてなかった。

ミニ四駆の冬の時期に仲間を見つけた。

ただそれだけで、胸が満たされた。


ユウのミニ四駆との向き合い方は、どこか奇妙だった。

走らせる時間は短く、調整しては空回し。

また調整して、何かを確かめる。

理由を聞いても、返ってくるのは難しい言葉ばかりで、正直よく分からなかった。


それでも、一緒にいる時間は心地よかった。


夏が終わる頃、ユウがジャパンカップを優勝したことを知った。


昔、自分が夢見た世界を制覇した奴が、すぐ隣にいた。

その事実に胸がざわついた。

そして、もう1度夢を追おうと思った。


いつの間にかミニ四駆は再び日常の中心に戻っていた。


あの頃のお兄ちゃんより、アバンテは速くなった。

だが、ジャパンカップ予選という壁は高かった。


勝てない。

届かない。


悩み抜いた末、コウスケは決断する。

アバンテを降りることを。


アバンテを裏切るような気持ちは、しばらく消えなかった。

それでも積み重ねた時間まで手放すわけじゃない。

アバンテの走りはここにある。

だから、受け継いでいく。


アバンテの魂は、小覇龍へと受け継がれた。


今、視線の先にいるのはユウの背中だ。

かつて追いかけた年上の少年よりも、ずっと高く近い背中。


ユウは大切な友達で、ミニ四駆仲間だ。

それは今も変わらない。


だが胸の奥にある想いは、それだけじゃない。

隣に立ちたい。

そして、追い越したい。


遊びだったミニ四駆は、いつしか勝負になった。

笑い合うだけの関係から、本気で競い合う関係へ。


胸の奥であの時と同じ渇望が、静かに燃えている。


今度こそ。

今度こそ、1番になる。

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