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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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49/50

決断

1996年。

ジャパンカップ予選まで、残り1ヶ月。


ユウは深い迷いの中にいた。

去年のジャパンカップ、そしてTVチャンピオンでの激闘。

その経験が、彼に1つの現実を突きつけていた。


FMシャーシでは、もう勝てない。


FMを極めると決めて走ってきた3年間。

限界まで煮詰め、工夫し、試し、壊し、また作り直した。

あのシャーシと共に積み重ねた時間は、ユウにとって“努力”ではなく“物語”だった。


だからこそ認めたくなかった。


FMシャーシの性能を限界まで引き上げたとしても、どれだけ工夫を重ねても、全国の強豪たちと真正面から渡り合える未来が見えない。

コウスケの走り、各地の猛者たちのマシン。

それらを思い返すたび、胸の奥に重たい影が落ちる。


(ここまでなのか…)


その問いが、何ヶ月も頭の中で反響し続けていた。


そんなある日。

気分転換のつもりで立ち寄った模型屋で、ユウは運命のような光景を目にする。


ブロッケンG ― 新発売。

スーパーFMシャーシ搭載。


思わず足が止まった。

胸の奥がざわつく。


(これなら…勝てる可能性がある)


しかし同時に、別の声が囁く。


(いや、逃げじゃないのか?

FMの伝説を、自分の手で完結させるんじゃなかったのか?)


葛藤が渦巻く中、ふいに“シグナル”が届いた。

久しぶりに感じる、あの直感のような、導きのような感覚。


――FMの物語を、新しい形で終わらせろ。


そんなメッセージを受け取った気がした。


ユウは迷いを断ち切るように、ブロッケンGを手に取った。


購入したその足で、すぐに試作に取りかかる。


だが、スーパーFMの知識はほとんどなかった。

未来でも“ギア鳴りが酷く、駆動性に難があるシャーシ”という評価が一般的で、YouTubeでも位置出しや駆動改善の動画は少ないと記憶している。


(なるほど…これは相当手を焼くシャーシだな)


仮組みを進めるほど、問題点が次々と浮かび上がる。

作りの粗さ、プロペラシャフトとピニオン、剛性の低さ、干渉の多さ。


しかし、ユウは眉をひそめながらも、どこか楽しそうだった。


この時代に来てからの3年間。

ミニ四駆漬けの日々が、ユウの感覚を確実に研ぎ澄ませていた。


(ここは、これで改善できるな…)


ひとつひとつのパーツを分解し、問題点を洗い出し、メモを取り、改善策を考える。

時間はかかるが、確実に前へ進んでいる実感があった。


そして、ギアの面取り工程に入ったとき。

ユウは、ついに“あのパーツ”を開封する。


超速ギア。


去年まで、自分を苦しめ続けた因縁のパーツ。

それを、ついに堂々と使える日が来た。


「…ようやく、使える」


胸が熱くなる。

テンションが上がりすぎて、気づけば深夜まで作業を続けていた。


机の上は分解されたパーツとメモで埋め尽くされていた。

それでもユウの目は輝いていた。


机の上に並ぶパーツのひとつひとつを、ユウは静かに見つめた。


指先で触れるたびに、これまで積み重ねてきた時間が蘇る。

何度も壊し、何度も作り直し、それでも手放さなかったFMシャーシ。


そのすべてが、今この手の中にある。


ユウは、ゆっくりとスーパーFMシャーシを持ち上げた。


「――終わらせるんじゃない」


小さく呟く。


「繋げるんだ」


その言葉は、自分自身に向けた確認だった。


かつてのFMが積み上げてきたもの。

その意地も、工夫も、悔しさも――全部、この1台に乗せる。


そして、いつか。


この先に続く誰かが、さらにその先へ進めるように。

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