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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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48/49

Separation

カラオケの日を境に、4人で集まることは自然と減っていった。


誰かが避けたわけでも、喧嘩をしたわけでもない。

ただ、それぞれの時間が少しずつ違う方向へ流れ始めただけだった。


ユリは、ミニ四駆から完全に離れていた。

みつば屋にも姿を見せず、学業と部活に専念していると聞いた。


コウスケも、オフシーズンに入ったこともあり、学校中心の生活に戻っていた。

たまにユウと公園で話すことはあっても、そこにユリの姿はない。


ジョンとは、変わらず定期的に会っていた。

競馬の話、趣味の話、ときメモのトーク会の話。

笑い合ってはいたが、ユウはどこかで以前の空気感とは違い、そして戻れないことを感じていた。


そのまま、時間は無情にも過ぎていった。


そして、別れの日が来た。



空港。


今まで触れないようにしていたはずなのに、

ユリの別れの日には、自然と3人が集まっていた。


出発ロビーに、ユリと両親の姿が見える。

それを見つけた瞬間、胸の奥が静かに締め付けられた。


ユリが3人に気づき、駆け寄ってくる。


「みんな、ありがとう」


先に口を開いたのは、ユリだった。


「わざわざ見送りなんて……今日もジョンが送ってくれたの? いつもありがとう」


「拙者は、出来ることをやったまででござる」


いつもの調子の言葉だったが、声はわずかに揺れていた。


「今日は遅刻しなかったの?」


ユリがコウスケを見て、笑う。


「……うん」


返事は短く、いつもの軽口はなかった。


「ユウ、コウスケ、ジョン。あなたたちに出会えて、本当に楽しかった」


ユリは、3人の顔を順番に見つめる。


「ジャパンカップも、TVチャンピオンも……どれも、今までの人生で最高の出来事だった。ありがとう」


「ユリ先輩……」


コウスケの声が詰まる。


「俺たちこそ、先輩に会えて……嬉しかったです。

また……また帰ってきたら……みんなで……」


言葉は、最後まで形にならなかった。


「うん。うん」


ユリは何度も相槌を打ち、微笑んだ。


「ユリちゃーん!! ……元気でね!」


気がつくと、ユウとコウスケは泣いていた。

呼び名も、いつの間にか小学生の頃に戻っている。


あの頃のように立場も年齢も関係なく、ただ一緒に笑っていた時間。

その再来を、誰もが心のどこかで夢見ていた。


話が尽きないまま、搭乗時間が近づく。

ユリは、最後に問いかけた。


「ねえ。ミニ四駆は、まだ続けるの?」


「今年で最後にしようと思う」


ユウが答え、コウスケも、


「俺も……」


と、小さく頷いた。


「そっか……出るのね」


ユリは一瞬だけ目を伏せ、それから顔を上げる。


「頑張って。

あなたたちなら、最高の最終回が出来るはずよ」


そして、いつもと変わらない明るさで言った。


「それじゃ。またね!!」


まるで、明日も学校で会えるかのような言葉だった。


ユリは両親と共に、何度も振り返りながら出国審査のゲートへ消えていった。


その背中が見えなくなっても、ユウたちはしばらく動けなかった。


別れを惜しみながら、同時に胸をよぎる。

今年が、最後のジャパンカップになるという事実が。


立ち止まってはいられない。

この別れを乗り越え、終わりにしないために。


ユウは、静かに次のレースのことを考え始めていた。



空港を離れ、車はゆっくりと一般道へ流れ込んでいく。


ラジオもつけず、車内は不自然なほど静かだった。


ハンドルを握るジョンが、前を向いたまま口を開く。


「……皆、疲れたでござるな」


誰も返事をしなかった。


しばらくして、後部座席のコウスケが小さく息を吸い込む。


「なあ……」


ユウは前を向いたまま、黙って聞いていた。


「俺さ。今年は、スプリングカップに出ようと思う」


その言葉は、静かに車内へ落ちた。


ユウは驚かなかった。

むしろ、どこかで予感していた。


「……そっか」


「うん」


「ユリ先輩もいないし、俺たちも最後の年だろ。

だったら……中途半端は嫌だ。やれることをやりたい」


信号待ちで車が止まる。

赤信号が、やけに長く感じられた。


「ユウは?」


少し間を置いて、ユウは答える。


「僕は……出ない」


はっきりした声だった。


「ジャパンカップに、全部賭ける」


コウスケは何も言わなかった。


代わりに、ユウが続ける。


「でもさ」


ユウは初めて、後部座席を振り返る。


「コウスケが出るなら応援するよ。全力で頑張って。

絶対、いい走り出来るから」


コウスケは少し驚いた顔をして、それから笑った。


「……ありがと」


「ジョン、今日もありがとう」


2人がそう言うと、ジョンは静かに頷いた。


「礼には及ばぬでござる」


ジョンは、いつものようにドラマCDをかけ始める。


車は家路へ向かう。


それぞれが、それぞれの決断を胸に抱えたまま。


同じゴールを目指していても、走るルートは違う。

それでも、心の向きだけは同じだった。


ユウは窓の外を見つめながら、思う。


もう、来るところまで来た。

今年で終わりだ。

Xにてイメージイラストを追加しました!

今回は体育祭でのコウスケとユリの激走です。

さかざき で検索いただけば見つかると思います。

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