映画館4
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昼休憩。
番組から支給された弁当を広げ、ユウ、ユリ、コウスケの3人が並んで腰を下ろした。
プラスチック容器が開く音と、少し冷めたご飯の匂いが漂う。
そこへ、ジョンも昼飯の入ったコンビニ袋を片手にやってくる。
「取り敢えずは、いい順位につけているでござるな」
口調は穏やかだったが、視線はホワイトボードの得点表から離れなかった。
「総合3位だね」
ユウは静かに応じ、頭の中で状況を整理する。
第1ステージ。
東京チームが3ポイント。
関西チームが2ポイント。
北関東チームが1ポイント。
第2ステージ。
関西チームが3ポイント。
北関東チームが2ポイント。
北九州チームが1ポイント。
合計
関西チームが5ポイント。
東京チームと北関東チームが3ポイントで並び、
北九州チームが1ポイント。
「第3ステージでポイント取れないと、敗退の可能性があるね」
淡々としたユウの声が、逆に重く響いた。
「ここで2ポイント取れれば、決勝進出は確実ね」
ユリは箸を止める。
「まさか、あの……かずみのチームがトップとはねぇ」
「だから、かずみじゃないですって」
ユウの声が、間髪入れずに飛んだ。
「あいつ、次に出てくるんだろ?」
「誰のこと?」
「この前のジャパンカップの、トムゴディだよ」
「あー、あの速かった人ね。意識してるの?」
コウスケは一瞬だけ言葉に詰まり、それから小さく息を吐いた。
「そりゃするだろ。あれから何かと同じタイプだって比較されるしさ」
「まぁ、あんまり入れ込みすぎないようにね」
「スタートで出遅れるでござるよ」
ジョンが頷きながら言った。
休憩中も、会場ではスタッフが慌ただしく動き回っている。
コースの調整音、機材を運ぶ足音、マイクテストの声。
番組は、次の山場へと向かっていた。
昼休み後。
収録は再び動き出す。
「それでは、健闘を祈るでござる」
ジョンはそう言い残し、その場を後にした。
「第3ステージ! 100メートル直線バトル!」
中村ゆうじのタイトルコールが、広いスタジオに響き渡る。
チーム代表1名が、100メートル直線バトル用のマシンを制限時間以内に作成する。
チーム代表者が直線100メートルの勝負に挑む。
「来た!」
コウスケは思わず拳を握り、ガッツポーズを決めた。
「よっしゃー! 超俺向きの勝負だ!
しかも東京チームは、トムゴディが出てくるんだろ?
決着つけてやる!」
「確かに見ものね。ユウはコウスケが勝てると思う?」
「……分からない。けど今のコウスケなら、きっと……」
ユリとユウは、チーム席からコウスケを見送った。
その背中は、いつもより大きく見えた。
参加者が中央に集められ、収録が本格的に始まる。
マイクを向けられ、各選手が短いコメントを求められる。
東京チームの代表のSは、少し考えてから答えた。
「北関東チームが、1番手強いと思います」
注目度のある対戦相手に、会場がわずかにざわつく。
続いてコウスケがライバルを問われる。
一瞬だけ視線を泳がせ、それから前を向いた。
「東京チームです」
短い答えだったが、その一言でお互いの気持ちを表現するには十分だった。
そして、第3ステージが動き出す。
「よーい、はじめ!」
合図と同時に、代表者たちは一斉に駆け出した。
ミニ四駆、パーツ、モーター。
必要なものを掴み取り、迷いなく作業台へ向かう。
コウスケは小覇龍を手に取る。
レブチューン、超速ギア。
頭の中に描いた完成形を追うように、パーツを組み上げていく。
慣れた手つき。
無駄のない動き。
組み立てと同時に、モーターのブレークインも忘れない。
自分なりの方法で、速さの限界に挑んでいた。
ユウは、その姿をじっと見つめていた。
理屈だけでは辿り着けない世界。
正解が分からなくても、経験と直感を信じて前に進む。
それは、リアルで生きている彼らにしかできないことだ。
ユウは少しだけ羨ましく思えた。
組み上げた後も、コウスケは時間ギリギリまで微調整を続けていた。
「そこまでー!」
作業時間は、驚くほど早く過ぎ去った。
限られた時間。
限られた改造。
それでも時間内でやれることはやった。
代表5人が、力作を手に直線コースのスタートラインに並ぶ。
コウスケの小覇龍の隣には、トムゴディスペシャル。
2台は、全国大会時と同じ使用マシンだった。
視線が、一瞬だけ交わる。
(負けねえ……!)
「用意!
…スタート!!」
5台がほぼ同時に飛び出す。
揃った、美しいスタート。
だが、すぐに差が生まれた。
先頭に躍り出たのは、小覇龍とトムゴディ。
開始数秒で、勝負はこの2台に絞られる。
「いけ……いけ……!」
コウスケの拳に、じわりと汗が滲む。
ゴール直前まで差はない。
2台は、ほぼ同時にゴールへ飛び込んだ。
「速いー!! あっという間の決着!!
……ほとんど同時に見えましたが、スローで確認しましょう!!」
会場の視線が、一斉にモニターへ集まる。
……
……。
「わずかに……
トムゴディスペシャル!!
1ミリ、2ミリ程の差!
極限の戦いを制したのは、東京チーム!」
歓声が弾けた。
その中を、コウスケは悔しさを滲ませながらチームに戻ってくる。
「……ごめん」
「何言ってるの! 最高だったわ!」
「こんなに興奮したレース、初めてだよ」
ユリとユウは、満面の笑みでコウスケを迎えた。
「それに……決勝進出よ! あんたが掴んだの!」
ホワイトボードには結果が書き出されている。
第3ステージ結果。
1位 東京チーム 3ポイント
2位 北関東チーム 2ポイント
3位 南関東チーム 1ポイント
総合得点。
1位 東京チーム 6ポイント
2位 関西チーム・北関東チーム 5ポイント
決勝進出は、
東京、関西、北関東の3チームに決まった。
コウスケはホワイトボードを見つめながら、
安堵と悔しさを、同時に噛み締めていた。




