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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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39/57

映画館4

⸻


昼休憩。


番組から支給された弁当を広げ、ユウ、ユリ、コウスケの3人が並んで腰を下ろした。

プラスチック容器が開く音と、少し冷めたご飯の匂いが漂う。


そこへ、ジョンも昼飯の入ったコンビニ袋を片手にやってくる。


「取り敢えずは、いい順位につけているでござるな」


口調は穏やかだったが、視線はホワイトボードの得点表から離れなかった。


「総合3位だね」


ユウは静かに応じ、頭の中で状況を整理する。


第1ステージ。


東京チームが3ポイント。

関西チームが2ポイント。

北関東チームが1ポイント。


第2ステージ。

関西チームが3ポイント。

北関東チームが2ポイント。

北九州チームが1ポイント。


合計

関西チームが5ポイント。

東京チームと北関東チームが3ポイントで並び、

北九州チームが1ポイント。


「第3ステージでポイント取れないと、敗退の可能性があるね」


淡々としたユウの声が、逆に重く響いた。


「ここで2ポイント取れれば、決勝進出は確実ね」


ユリは箸を止める。


「まさか、あの……かずみのチームがトップとはねぇ」


「だから、かずみじゃないですって」


ユウの声が、間髪入れずに飛んだ。


「あいつ、次に出てくるんだろ?」


「誰のこと?」


「この前のジャパンカップの、トムゴディだよ」


「あー、あの速かった人ね。意識してるの?」


コウスケは一瞬だけ言葉に詰まり、それから小さく息を吐いた。


「そりゃするだろ。あれから何かと同じタイプだって比較されるしさ」


「まぁ、あんまり入れ込みすぎないようにね」


「スタートで出遅れるでござるよ」


ジョンが頷きながら言った。


休憩中も、会場ではスタッフが慌ただしく動き回っている。

コースの調整音、機材を運ぶ足音、マイクテストの声。

番組は、次の山場へと向かっていた。


昼休み後。


収録は再び動き出す。


「それでは、健闘を祈るでござる」


ジョンはそう言い残し、その場を後にした。


「第3ステージ! 100メートル直線バトル!」


中村ゆうじのタイトルコールが、広いスタジオに響き渡る。


チーム代表1名が、100メートル直線バトル用のマシンを制限時間以内に作成する。

チーム代表者が直線100メートルの勝負に挑む。


「来た!」


コウスケは思わず拳を握り、ガッツポーズを決めた。


「よっしゃー! 超俺向きの勝負だ!

しかも東京チームは、トムゴディが出てくるんだろ?

決着つけてやる!」


「確かに見ものね。ユウはコウスケが勝てると思う?」


「……分からない。けど今のコウスケなら、きっと……」


ユリとユウは、チーム席からコウスケを見送った。

その背中は、いつもより大きく見えた。


参加者が中央に集められ、収録が本格的に始まる。


マイクを向けられ、各選手が短いコメントを求められる。


東京チームの代表のSは、少し考えてから答えた。


「北関東チームが、1番手強いと思います」


注目度のある対戦相手に、会場がわずかにざわつく。


続いてコウスケがライバルを問われる。


一瞬だけ視線を泳がせ、それから前を向いた。


「東京チームです」


短い答えだったが、その一言でお互いの気持ちを表現するには十分だった。


そして、第3ステージが動き出す。


「よーい、はじめ!」


合図と同時に、代表者たちは一斉に駆け出した。

ミニ四駆、パーツ、モーター。

必要なものを掴み取り、迷いなく作業台へ向かう。


コウスケは小覇龍を手に取る。

レブチューン、超速ギア。

頭の中に描いた完成形を追うように、パーツを組み上げていく。


慣れた手つき。

無駄のない動き。

組み立てと同時に、モーターのブレークインも忘れない。


自分なりの方法で、速さの限界に挑んでいた。


ユウは、その姿をじっと見つめていた。


理屈だけでは辿り着けない世界。

正解が分からなくても、経験と直感を信じて前に進む。

それは、リアルで生きている彼らにしかできないことだ。


ユウは少しだけ羨ましく思えた。


組み上げた後も、コウスケは時間ギリギリまで微調整を続けていた。


「そこまでー!」


作業時間は、驚くほど早く過ぎ去った。


限られた時間。

限られた改造。

それでも時間内でやれることはやった。


代表5人が、力作を手に直線コースのスタートラインに並ぶ。


コウスケの小覇龍の隣には、トムゴディスペシャル。

2台は、全国大会時と同じ使用マシンだった。


視線が、一瞬だけ交わる。


(負けねえ……!)


「用意!

…スタート!!」


5台がほぼ同時に飛び出す。

揃った、美しいスタート。


だが、すぐに差が生まれた。


先頭に躍り出たのは、小覇龍とトムゴディ。

開始数秒で、勝負はこの2台に絞られる。


「いけ……いけ……!」


コウスケの拳に、じわりと汗が滲む。


ゴール直前まで差はない。

2台は、ほぼ同時にゴールへ飛び込んだ。


「速いー!! あっという間の決着!!

……ほとんど同時に見えましたが、スローで確認しましょう!!」


会場の視線が、一斉にモニターへ集まる。


……

……。


「わずかに……

トムゴディスペシャル!!

1ミリ、2ミリ程の差!

極限の戦いを制したのは、東京チーム!」


歓声が弾けた。


その中を、コウスケは悔しさを滲ませながらチームに戻ってくる。


「……ごめん」


「何言ってるの! 最高だったわ!」


「こんなに興奮したレース、初めてだよ」


ユリとユウは、満面の笑みでコウスケを迎えた。


「それに……決勝進出よ! あんたが掴んだの!」


ホワイトボードには結果が書き出されている。


第3ステージ結果。

1位 東京チーム 3ポイント

2位 北関東チーム 2ポイント

3位 南関東チーム 1ポイント


総合得点。

1位 東京チーム 6ポイント

2位 関西チーム・北関東チーム 5ポイント


決勝進出は、

東京、関西、北関東の3チームに決まった。


コウスケはホワイトボードを見つめながら、

安堵と悔しさを、同時に噛み締めていた。

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