映画館3
……
静まり返った作業台の上で、固まる3人。
「おおーっと!トラブル発生だー!」
中村ゆうじの声と共にカメラが寄る。
そんな事など気にしている余裕などなく、コウスケは精一杯の声を振り絞った。
「あ…あの、ユリ先…ごめ…」
「直せるの?」
ユウが恐る恐る聞く。
「時間内には厳しいわね」
ユリは真剣な表情で考えを巡らせる。
「コウスケ」
「は、はい!」
「落ち込むのは後。作戦変更よ!
あんたのミスがいい閃きに繋がったわ!
大丈夫よ、あたしに任せなさい」
ユリはコウスケの目を見て力強く語りかける。その目に怒りはなく、任せる覚悟がはっきりと見えた。
「筆とパテ、塗料でガンメタとシルバーを持ってきて!あと茶色とか赤とかその辺も!ユウ、フォローしてあげて」
「……ごめん。俺、全力で取り返すように頑張るから!ユウ、頼む!」
コウスケは真剣な顔でユウと共に駆け出した。
そこからは、みんな一心不乱に手を動かしていた。
周りのことなんか気にならない。
ただこの作品を時間内に完成させるんだ。
その気持ちが動きとなり、カメラはその姿を捉えていた。
「仲間の失敗を責めることなく、全員が完成に向かって一丸となっている。」
中村ゆうじの熱い実況も聞こえないまま、作業は進む。
塗装が完全に乾くまで待つ。
デザインナイフで傷の形を整える。
装甲がめくれた縁を強調するようにパテを盛る。
えぐれた内部にガンメタを塗り、シルバーを点で置く。
えぐれ部周囲に塗装剥がれ表現を出して薄く焦げ色を足す。
「「……すげぇ」」
思わずコウスケとユウは声が漏れる。
ドライヤーを落とした跡は、魔法のように大きな戦闘痕の傷となっていった。
「トラブルからの見事な立て直し。これは熱い展開だ!」
「終了まで3・2・1・終了!!」
中村が終了を宣言する。
「ふぅ、ギリ間に合ったわ…
コウスケ!結果オーライよ!ナイスゥ!」
ユリは親指を立ててコウスケにウィンクした。
コウスケは後ろめたさを感じつつ、やり切った満足感とユリの作品の完成度の高さにホッとした。
「では、点数をつける審査員を紹介しましょう!
審査員はこちらだー!」
会場に小学生がゾロゾロ入ってくる。
近所の小学生30名がカラーボールを持っていた。
各チームの作品を見て、1番良いと思ったところにカラーボールを入れる。
カラーボールが多い順に順位が決まる。
ユリたちの作った作品は、スーパーエンペラーを元にしてエヴァ初号機を模した塗装になっている。
全体に紫を基調として、蛍光緑のラインが真っ直ぐに描かれ、部分的に黒を入れることで全体をまとめている。
タイヤはスパイクタイヤを履き、ミリタリー感が増した。
コックピット部には大きく斜めに傷が入っており、戦闘の激しさを物語っている。
小学生がカラーボールを入れ終わり、いよいよ結果発表。
「カラーボールが1番多かったチームは、トライダガーXを基に作ったヒロヤくんだー!!」
ユリは惜しくも2位となった。
小学生にはミリタリー受けが悪く、わかりやすいカッコ良さを表現したトライダガーの関西チームが1位となった。
……
「あーーーっ!」
ユリが突然叫ぶ。
「あの子、かずみじゃん!!!」
「は?かずみ?」
2人は呆気に取られる。
「ほら、あの全国で戦った時のあたしの隣にいた子!!」
「あー、俺がコースアウトした時の!」
懐かしい顔に悔しさが紛れる。
「ユリ先輩!ホントすみませんでした!」
「なーに言ってるのよ、あたしは最初の想定より今の作品の方が好きよ!ありがとね。」
「そんなことより2位よ!
次はあんたの番なんだから頼むわ!」
コウスケは、必ず決勝ラウンドに残るんだと、改めて心に誓っていた。




