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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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31/57

擾乱

第1決勝予選


レディ……ゴー!!!

 

スタート合図と同時に、ユリのソニックセイバーが鋭く飛び出した。

 

完璧なスタート。

 

「はっ……!」

 

その横で、隣のレーサーはユリを意識してしまい、反応が遅れる。

 

さらに、コウスケ。

 

完全に空気に呑まれ、スタートで出遅れた。

 

「おおーっと!! 出遅れたレーサーが何人かいるぞ! 波りゃんの幕開けだー!!」

 

実況は興奮のあまり、盛大に噛んでいた。

だが、その言葉通り、波乱の幕開けだった。

 

ユリの存在が、周囲をじわじわと侵食していく。

 

「なんやねんこれ! こんなはずじゃ……」

 

スタートを狂わされた隣のレーサーが、焦りと悔しさを滲ませる。

 

「しまった! ここから取り戻せるか……」

 

コウスケもまた、焦りを隠せない。

 

視線の先には、すでに大きく差を広げたソニックセイバー。

 

ソニックセイバーは初速から小径タイヤの加速を最大限に生かし、

コーナーの立ち上がりで一気に抜けていく。

無駄のない走りで、じわじわと差を広げていった。

 

「いけるわ!」

 

胸の奥で、確かな感触が芽生える。

 

ソニックセイバーの安定した走りは、随一だった。

 

しかし、全国大会は一筋縄ではいかない。

 

順調に見えた流れは、やがて逆風が混じり始めた。

 

2周目。

順位に動きはない。

 

だが、コウスケの強引な走りにより、差は確実に縮まっていた。

 

小覇龍は、安定を犠牲にしてでも速度を選んだマシンだ。

周回が進むほど、その速度が効いてくる。

 

誰の目にも、流れが変わり始めているのが分かった。

 

3周目に入った頃、ソニックセイバーの後方から、コウスケの小覇龍が迫ってくる。

 

スピードに特化した小覇龍は、今大会と相性がいい。

 

徐々に、差を詰めてきていた。

 

(あと少しよ! がんばって!)


ユリが心の中でソニックセイバーを鼓舞する。

 

4周目。

 

今大会名物のロングストレート。

 

小覇龍は一気に最高速へ到達し、

ユリを抜き去って先頭に躍り出た。

 

 

「……!」

 

 

声にならない感情が、ユリの胸を突き上げる。

 

 

「よし! このまま一気にいけー!」

 

コウスケはさらにスピードを乗せ、引き離しにかかった。

 

 

その瞬間だった。

 

 

「あたしは……あたしは……必ず勝たなきゃいけないの!!」

 

「ね? かずみ?」

 

 

突然、ユリは隣のレーサーの背後に回り、

肩に手を置いて話しかけた。

 

 

「……かずみ? 僕、ヒロヤですけど……」

 

隣のレーサーは、完全に吞まれていた。

 

 

レースは最終ラップへ。

 

先頭を走っている小覇龍だが、

わずかにブレが見え始めていた。

 

ユリの目は、まだ死んでいない。

 

小覇龍がロングストレートを抜け、

バンクカーブに差しかかる。

 

その時――

 

「ヴィーナス・ラブミーチェーン!!」

 

叫びと同時に、ユリは場違いな決めポーズを取った。

 

次の瞬間。

 

小覇龍はバンク頂上で姿勢を崩し、

そのまま外へ弾き飛ばされた。

 

「えええーーー?!」

 

勝利を確信していたコウスケの絶叫が会場に響いた。

 

最大のライバルが消えたコースを、

ユリのソニックセイバーが駆け抜ける。

 

ソニックセイバーはバンク後の緩やかなコースを抜けゴールを切った。

 

「波乱の激戦を制した勝者は、

ユリ選手のソニックセイバーだぁぁぁあ!!」

 

歓声が遅れて押し寄せた。

 

放心状態のコウスケは、

焦点の合わない目で立ち尽くしていた。

 

その背中に、ユリの声が飛んでくる。

 

「ごめんね。

あんたの分まで、あたしが走ってユウに勝つわ」

 

「……ユリ先輩、頑張ってください」

 

働かない頭で、コウスケは精一杯の言葉を返した。

 

(これがあるから、レースは分からないでござる。

速さだけが結果に結びつくわけではない、典型例でござるな)

 

ジョンは、勝負の無情さを改めて噛みしめていた。

 

 

(勝ち残ったのはユリ先輩か……

あんな魔法使いみたいな技、アリなの?)

 

ユウは、ミエナイチカラに静かな畏怖を覚えていた。

Xにて作中のイメージイラストを掲載しております。

さかざきで検索していただくか、以下のURLからご覧ください。

https://x.com/wkulsvtlvq1710?s=21&t=AZrLSqSZ0HmgnLpzFUCbNA

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