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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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30/57

開戦

「大会どうだった?


聞かなくても分かるけど」



ユリとコウスケから、ほぼ同じ内容の電話が立て続けに入った。


無事、予選は通過。


2人とも心配はしていなかったはずの報告を聞くと何故かほっとする。




2人の方は部活でも結果を出しているようだ。


我が校にとっては有望株だ。


それ故に本来なら部活を優先すべき時期だが、ジャパンカップに関わる活動も黙認されているらしい。



こっちの時代に来たばかりの頃は、完全に自分1人の戦いだけを考えていた。


仲間と全国で戦う未来なんて想像もしていなかった。


でも今は、悪くない。


いや、正直に言えば――かなり楽しい。



数日後


大会当日。


8月29日

早朝



アスファルトを蹴る靴音が、やけに大きく響く。



「ごめんごめんごめん!ホントごめん!」


「いっそ殺してくれていいから!マジでごめん!」



コウスケ、3度目の遅刻。



「あんたねぇ!いい加減にしなさいよ!!」


さすがにユリも本気で怒っている。



「……次、遅れたら置いてくから」


そう言い捨ててから、ユリは一度だけ息を吐き、


「ジョン、今日もありがとう。助かってる」


と告げると、ジョンは


「なぁに、拙者も先行販売や限定パーツが目当てでもあるでござる。気になさるな」


ジョンがそう言って、車を発進させた。



「ユリ先輩、そのバッグは……」


ユウが恐る恐る聞く。



「もちろんそうよ!」


ユリはウィンクで答えた。

それ以上の説明は不要だった。



車が走り出すと、車内の空気は今までと少し違っていた。



ユウはいつも通り、静かだ。


コウスケは落ち着きがなく、レーサーズボックスを開けては中身を確認し、閉じてはまた開ける。


ユリはポーズを取ったり、空中に文字を書く仕草をしたり、インタビューの練習のような独り言を呟いている。


ジョンは運転席で、もっとときめきの話を始めては、自分で賛否をつけている。



そんな、どこか浮ついた一行は――


日本橋三越本店に到着した。



東京大会、決勝。



決勝大会の会場は人の山だった。



参加者3人の口数は自然と減り、


車検に向けて、それぞれ黙々とマシンの調整と最終チェックに入る。



「おい、あれ……」


「ユウだけじゃなく、あの2人も決勝に来てるぞ」


「予選から見てたけど、相当速いよ!」



そんな周囲の声は、3人の耳には届かない。



ジョンは少し離れたベンチに腰を下ろし、その様子を見守っていた。


その表情は、ほんの少しだけ羨ましそうにも見える。



互いに、脇目で相手のマシンを確認する。



ユウのマシン


スピンアックス(クリアボディ)


FMシャーシ


トルクチューン+スパカン


大径ホイール+スリックタイヤ(共にナロー)


フロント:FRP強化プレート+9mmボールベアリング


リヤ:リヤーブレーキ+FRP強化プレート+9mmボールベアリング4個(宝箱セッティング)






コウスケのマシン


小覇龍(アバンテスピリットブルーver)


スーパー1シャーシ


レブチューン+超速ギア


大径ホイール+スリックタイヤ(前後ともにワイドホイール、ナロータイヤ)


フロント:エアロハイマウントローラー+13mmボールベアリング


サイド:スタビポール


リヤ:リヤースキット+FRP補強プレート+14mmゴムリング4個(上に2段配置)







ユリのマシン


ソニックセイバー(セーラーヴィーナスSP)


スーパー1シャーシ


トルクチューン+超速ギア


小径ホイール+スリックタイヤ(共にナロー)


フロント:FRP強化プレート+9mmボールベアリング


サイド:スタビポール(外曲げ)


リヤ:リヤブレーキ+セットアップローラー(赤)4個(宝箱セッティング)




車検を通過したあと、ユリの姿が消える。



そして、レースの組み合わせが発表された。



第1決勝予選。


コウスケとユリ。



ユウは第3決勝予選。



「マジかよ……ユリ先輩とここで当たるのか……」


コウスケが呟く。



「出来れば、みんなバラけたかったね」


「まあ、仕方ないさ。ところでユリ先輩、どこだろ?」



「レースになれば、きっと来るよ……」



第1レース参加者集合のアナウンスが流れた、その時だった。



会場の奥から、どよめきが起こる。



ユリだ。



今回も、セーラーヴィーナスのコスプレで現れた。

ポーズをとってヴィーナスになりきっている。


まるでそれを予想していたかのように、カメラのフラッシュがあちこちで焚かれる。




同じ走者のコウスケは完全に言葉を失っていた。



実況も面白がるようにマイクを握る。


「キターーー!!ミニ四駆の世界に舞い降りた美少女戦士!セーラームーンだぁぁぁ!」



「だからセーラーヴィーナスよ!!」


間髪入れずにユリがツッコミを入れる。

会場が笑いに包まれた。



ギャラリーの視線を一身に集めたユリは満足そうに微笑むと、何事もなかったかのようにスタートポジションに向かった。



「集中…集中……」


コウスケは自分に言い聞かせるように呟く。


視界の端でセーラーヴィーナスが静かにマシンを構えている。


第1レースが、いよいよ始まる。


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