名案
各地方で予選大会が始まろうとしていた。
そんな頃、久しぶりに4人が顔をそろえた。
場所は公園。
東屋のテーブルを陣取り、進捗状況や雑談をしている中ユリがふっと顔を上げた。
「色々考えたんだけどさ。あたし、別の地区予選大会に出るわ。」
その一言に、場の空気が一瞬止まった。
「え?!」
3人がほぼ同時に声を上げる。
誰もが予想外だという表情を浮かべていた。
「だってさ、同じ地区予選にみんな出たら、全国に行けるのは1人だけでしょ?
それ効率悪くない?」
「正直に言うけど、ユウは強敵だし、コウスケもかなり仕上がってる。
どうせなら、全国で戦いたいじゃない?」
淡々と語るユリの声には、迷いがなかった。
ユウは腕を組み、少しだけ視線を落とす。
――なるほど。
全国で、また並び立つ。
それは勝つ以上に、価値のある未来かもしれない。
「……悪くないな」
短くそうつぶやき、ゆっくりとうなずいた。
その隣で、コウスケが勢いよく声を上げた。
「ユリ先輩、頭いいな!
その発想、全然なかったわ。」
ユリは少しドヤ顔をする。
「で?ユウとコウスケはどうするの?」
ユリが問いかけると、コウスケが即答した。
「その話、乗った!
同じ地区で潰し合うのも勿体ないし、俺も別のところで予選出場するわ。」
「僕も構わないよ」
ユウも同意した。
「決まりね。」
ユリが手をたたく。
「ふむ。それならば拙者が予選会場までお送りいたそう。
各予選は別日ゆえ、みんなで応援に行くのも一興でござろう。」
「いいね!いいね!」
と、コウスケが続ける。
「他のレーサーの視察もできるしさ。
各地で応援し合って、全員予選突破。全国で戦うわけだ。」
ユリは拳を握り、声を弾ませる。
「くうぅぅ!なんなのこれ、燃えすぎでしょ!
最終回に相応しい激アツ展開じゃない!」
「ド◯グスレイブ撃つくらい全力出すわ!!」
その様子を見ながら、ジョンがユウに視線を向けた。
「して、師匠はいかがお考えでござろうか。」
全員の視線が、自然とユウに集まる。
「面白い案だよね。
近場なら、静岡、埼玉、神奈川、東京あたりかな。
移動も現実的だし。」
「よぉーし!」
と、コウスケが拳を突き上げる。
「じゃあ最終調整だな。
みんなで全国行こうぜ!」
「「「おおー!」」」
と、声が重なる。
拳が重なり、空気が一気に熱を帯びた。
その輪の中で、ジョンがユウに小さく合図する。
(師匠……お馬の予想、一緒に考えてほしいでござる)
それを見て、ユウが苦笑する。
(抜け目ないんだから……)
誰かが全国に行く、ではない。
全員で全国に行く。
そんな最高にワクワクする目標が、この瞬間、自然に決まった。




