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三話「鎖を解き放つ」

イーグレスト平原。王都の西側に広がり、馬や羊のような動物に動物型の魔物が数多く棲みつき一種の生態系を築き上げている。

その中で毎年爆発的に数を増やす時期があるのがファイアーウルフ。赤色の毛並みと炎と同等の熱を持つ吐息が特徴の魔物で、大きな群れを成して移動する特徴を持つ。

「そう聞いてたんですけど、これなんですか!?」

ルティアが見たのは平原のいたるところが赤色まみれの景色と、冒険者の攻撃でボコボコになっていく哀れな平原の姿だった。

「数が如何せん多くてな。範囲攻撃に特化した技やスキルを使うと地形が変わってしまうのは致し方ない。安心しろ、依頼が終わったら王宮魔道士が均す」

「そういう問題ですか。ウプッ....気持ち悪くなってきた」

風下から移動し、野営予定地で自分達のキャンプを立てる。私の今回の役割は後方支援。食事やアイテムの受け渡しと調達、ギルドとの連絡係が主。ちなみに私の料理はアーシュからみっちり教えてもらってるので、味はお墨付き。ガーディー一行からも「楽しみ」と言ってもらえた。

「遠目になってしまうが、大討伐自体あまり参加出来ないからしっかり見とけよ」

「メモの準備は完璧です!」

「ならよし。流石ルティア、俺の最高の弟子だ」

ガーディーに思いっきり抱き上げられる。恥ずかしいのでやめて欲しい。

準備を終えると大きな銅鑼の音が平原に響く。これが開始の合図であり、冒険者によるファイアーウルフの掃討が始まった。

下位の冒険者から上位の冒険者まで幅広く参加しており、冒険者同士の被害も多い。医療テントに運ばれる人も少なくなく、私もプリーストの方に教えてもらいながら治療の手伝いをする。

「風の魔法が使えるなら魔石に魔法を込めて。この石の大きさなら一日持つ、出来ないなら包帯を洗うのと道具の搬入!」

「込め終わりました。包帯洗うので貸してください」

「下位の冒険者の負傷が多い。シートを敷いて軽傷者はそっちに、重症患者にベットを譲って」

ファイヤーウルフ自体は下位の冒険者でも倒せる魔物だが、群れの規模になると上級の冒険者でも死者が出る。大討伐に集まってるのは階級が上から下まで入り乱れており、医療テントから人が常に出入りしていた。

ルティアは教えてもらったのを全てメモし、自分なりに噛み砕きながら事に当たる。

「魔法がもっと使えたらなー」

適性が分からない以上どうしようもないが、調べる魔道具を所持している教会は大金を要求してくる。大学に入れば無償で調べてくれるが、そんな時間は彼女には無い。

合間合間の休憩に魔法を練習する。

アースの戦った時だって、幅広く魔法が使えたらガーディーをサポート出来た。一人で出来ることが増えればそれだけ窮地を脱することも出来るし、魔王を倒した後の仕事にあり付けやすくなる。

失敗して弾ける水を見てため息を吐きながら、昼休憩で戻ってきたら彼らを迎える。

ずぶ濡れなルティアに皆焦っていたが、事情を説明すると安心してくれた。

「サンドイッチです。黒パンなので少し硬いかもしれませんが」

「食事を作ってくれたんだ、文句なんて言えないさ」

「こんな可愛い女の子からサンドイッチ貰えるなんて、この先無いかもな」

「俺の弟子が婿か嫁を連れてくるまでは全員独身だろ」

ガーディーの一言で私以外が笑いだした。でも本当に結婚欲とか無いのか聞くと、冒険者である以上死が付き纏うから難しいと首を横に振られる。

冒険者の就職後の平均寿命が10年と言われてるので、結婚なんて夢のまた夢なのは事実。此処にいる彼らはその中でも歴戦、そんな人たちがそう言ってる。

「ルティアは目的を達成したら地に足つけろよ」

「おじさんに言われたくない」

「そうだったな」

食事を終えて彼らはまた持ち場に戻る。

「私もいつかあんな風に強くなれるのかな」

辿り着きたい背中はまだまだ遠い。

依頼そのものは五日間も設けられ、群れの二陣参陣を倒して本命のレオファイアーウルフの討伐が最終目標となっている。その間もギルドは素材の引き取りを行っているので貧乏な冒険者はこの期間に一気に稼ぐのが通例らしい。

だが魔王復活の先駆けか例年よりも数が多く、野営地まで迫る個体も見受けられた。

そんな中、ルティアは戦闘後の平原を歩き回っていた。

「想像以上にいっぱい落ちてる」

年齢の問題で前線には出られないがこうして回収しそびれた素材を集めて周り、防具の【捕食】を用いて強化する。お金も大事だが生命線たり得ている防具の強化も優先事項としては高い、小さい牙や爪は端金な為見過ごされることも多く大量だ。

防具に押し当てるとバラバラに砕けながら防具に吸い込まれて行き、完全に吸収を終えると一瞬だけ防具が光る。これが強化を終えたサインなので、そしたらまた移動するを繰り返す。地味な作業だが近場を通った冒険者とも話せるので苦ではない。

「何か聞こえる」

耳を凝らせば女性の声。鞘のボタンを外して抜剣出来る状態で直ぐにその声の場所に向かう。

「誰か...誰か」

視界が捉えたのは二人組、プリーストらしき女性が前衛職と思われる男性を背負っている。だが後方からファイアーウルフが迫り、いつ接敵するか可笑しくない。

今のままでは間に合わない、それなら付け焼き刃でも良いから届かせる。

選んだ手段は()()。【重量補正】で肉の無い私でも振り回せるアースレイヴを全力で二人の後ろめがけてぶん投げる。

ズドンと砂煙を立てながら魔物の移動を遮り、ルティアは間に立ち塞がる。

「早く野営地に」

「ありがとうございます」

見れば男性の背中が痛々しく焼け焦げており、反対に女性は怪我らしい怪我が無い。

十中八九庇ったことによる重症。そして見捨てずに此処まで来たということはそれだけ互いを信頼してる証なのだろう。

「【双斧】」

空いた手にもう一つのアースレイヴを握り締める。刺してる方は敢えて放置し、明確に「此処から先は私の縄張り」と主張に使う。

数は三匹、ゴブリンよりも強くアースよりも圧倒的に弱い。

(そう考えると私が見てきた魔物、極端すぎない?)

無駄な考えが出来るぐらいには今の彼女には余裕がある。だが慢心はしない、それは人を簡単に殺し、簡単に人をダメにする。

息を吸い、静かに構える。

騎士流剣術(レギンアーツ)最速の一振り(ラピットブレイド)。」

土を踏み込んでの一閃。一番前に出ていた個体の頭部にめり込ませ、そのまま速度にかまけて切り捨てる。

騎士流剣術(レギンアーツ)連携姿勢(チェインスタンス)。」

即座に最初の構えに戻し次の攻撃に備える。

ガーディーに最速の一振り(ラピットブレイド)と一緒に嫌という程叩き込まれた()()()()()連携姿勢(チェインスタンス)

余分を削ぎ落とし、次の技を繰り出す最速の構え。最初に教えられた二つを極めるだけで騎士流剣術(レギンアーツ)の奥義に至ると教えられた。現に真面目に使ったのは今回が初めてだが、こうして次の技に繋げる余裕が残っている。

(おじさんああは言ったけど、ハンマーでこの技使えると思わないんだけど。)

文句は言いつつも飛び掛かる一匹を避け、もう一匹が動く前に手を突き出す。

「『ライトスパーク』」

体が硬直した隙を逃さず上から叩き潰す。使い手にしか反映されない【重量補正】、それが無い時のアースレイヴは上級冒険者でもないと重くて使えないレベル。

鈍器としてはあまりある破壊力を持ってファイアーウルフの頭がミンチに変え、後ろから来る最後を全身を振り回して剣をぶつけて、そのまま切り裂く。

苦戦を想定して戦いに挑んだが予想以上に簡単に勝ててしまい、少し自分に引く。

「全身血塗れ。水浴びするにしても川危ないし、お金払ってシャワー使おう」

素材を回収して野営地に戻る。

あの二人の無事も確認したいし、休憩時間を大幅に過ぎている。怒られるのが確定したせいで足取りが重いが、諦めよう。

テントに戻ると怒られず、逆に褒めて貰えた。

この依頼中の冒険者はお互い助けることはせず、競争相手を減らす方が報酬も増えるので逆に蹴落としにかかると説明を受ける。もしかしなくてもガーディーのようなパーティーは世の中では珍しいのかもしれない。

シャワー借りて血を落とし、野営地中央の焚き火で体を乾かす。

「剣置いてこないと」

そう思い立ち上がった瞬間、野営地の西側から青色の光が打ち上がる。

それと同時に森側に設営されていたテントが、()()()()()()()()()

ついに来た。

「レオファイアーウルフが野営地を襲撃、動ける冒険者は対処に当たってください」

ギルド職員が声を荒げながら誘導と扇動する。だが野営地に残っているのは負傷者が大半を占め、無傷なのはルティアのようなギルド側で後方支援を回らされた者。

どう考えても対処可能な上級冒険者が来る前に野営地は崩壊する。

「私が行きます」

「貴方じゃ無理、大人を呼んできて」

「じゃあ誰が」

こうしてる間にも被害が広がり、恐怖が野営地に伝播していく。

ルティアは呼び止められるが無視して原因の元に直行する。

レオファイアーウルフ自体は中級の魔物。アースに比べれば弱いが、恐らくそれを除いた中で一番強い敵の可能性が高い。

だがルティアの足は止まらない。彼女(アーシュ)が戦うのはその先、全ての魔物の王。勇者を救う為に魔王を倒す、それを果たす為にこんなことで逃げるわけにはいかない。

「見つけた。」

テントは燃え、地面は熱せられたせいか赤くなっている。息を吸うだけで喉が焼けそうな感覚に囚われる中、その中央に()()はいた。

赤い毛並みの先は鮮やかな金色、大きさは平屋程度の大きさだろうか。立ち塞がるだけでこの圧迫感と威圧感。

これがレオファイアーウルフ、炎獣(えんじゅう)の王とはよく言ったもの。

「ウウウウウ」

毛並みを立ち並べ、犬歯を剥き出すにする。爪を地面にめり込ませ、目は完全に私を捉えている。

「行きます」

「ウオオオオオオオオン」

上級の冒険者になればなるほど皆口を揃えてこう言う。

「下手に知性を持っている魔物より、本能に従う魔物の方が危険」

知性が高いと魔法や駆け引きを行い、文字通りの死闘になりやすい。

逆に知性が低い魔物は違う、本能で全て判断する。長らく生き、特殊個体にまで上り詰めた魔物なら尚更。彼らは己の本能、直感に全面の信頼を置く。それは例え羽虫にしか見えない小さな人の少女であっても。

「速い、何より動くだけで死ぬ」

ルティアは自分の弱さをあえて武器にし、この魔物を侮らせて時間を稼ぐつもりだった。だが相手は本能で彼女が自分を殺せる存在だと判断し、最初から持ち合わせている全てのスキルで殺しにかかる。

逃げに徹しているルティアも熱による肺の負傷と呼吸の低下、攻撃を避けるの集中し続けなくてはいけない。想像以上に体力を奪われていく。

(私の勝つ条件はおじさん達が来るまでの時間稼ぎ)

最速の一振り(ラピットブレイド)

前右足に振った剣は確かに獣の皮膚を切り裂きめり込む。しかしそれ以上剣が進むことは無い。

「嘘」

アースの方が硬いと確信があった。だからこそそれを切った自分なら必ず切れると判断し、全力を出したのだ。

(なにより()()()()!?)

力が入ることで筋肉が固まり、必死に取ろうとするルティアに隙が生まれる。

「グオオオオオオ」

「しまっ」

視界が加速する。体がくの字に曲がり、激痛と共に脳が浮いていると錯覚した。

近場のテントに受け身も取らずに吹き飛ばされ、喉に詰まった赤い液体を口から吐き出す。息をするだけで全身が悲鳴を上げ、【双斧】で作った剣で支えながら立ち上がっても足が震えている。

「死ねない....こんな奴に勝てないで、誰がアーシュを守るの」

運よく割れずに残っていたポーションを一気に飲み干し、即座に発生する鎮痛効果に全てを任せて飛び出す。

(どうしてあの時切れなかった。アースの時と何が違う)

何度振っても微々たる傷しか与えられず、限界に近い体を無理やり動かす。

今の自分に足りないものを必死に考え、頭と体を使って全てを実践する。

それでも後一手、致命的に足りずに届かない。

技が未熟、それは当然。力が足りない、それも当然。知識が足りない、それも当然。

全てが足りていなかったのはあの時も同じ。条件は何も変わっていない。

「アーシュはいつかこんな奴も越えて、もっと怖いのと戦う」

彼女(大切な人)は夢を奪われ、今もきっと強くなる為に頑張ってる。怖くて震えながらも、私を不安にさせない為に笑顔を見せてくれた。

「私は、アーシュの隣にいたい!」

体に力が広がる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「あぁそうか。そんな単純なことだったんだ」

この力、この【スキル】の使い方はまだ分からない。

でも、これの発動条件(トリガー)は今掴んだ。

騎士流剣術(レギンアーツ)最速の一振り(ラピットブレイド)

肉を切り、骨すら裂き、剣は完全に役割を取り戻す。

「グルゥウオオオオオオオオ」

右足を切断された痛みで声を荒げながらもレオファイアーウルフは即座に飛び引き、火炎放射(ブレス)でルティアを確実に葬ろうと画策する。

獣は理解する。先ほどまでの羽虫と今目の前にいる少女は同一で、そして別物と。

近づけば命の危機に晒され、かといって背を見せて逃げれば確実に殺される確信もある。ならば距離をとって殺すしかない。

騎士流剣術(レギンアーツ)最速の一突き(ラピットピアス)

レイピアのように突き出したアースレイヴと共に一瞬で距離を殺し、口に貫く。

本来なら鋭い武器で使う技だが、【重量補正】を信じルティアは選ぶ。これなら確実に肉薄し、次に繋げられる。

連携姿勢(チェインスタンス)最速の一振り(ラピットブレイド)

口を切り裂かれ、溜めていた火炎放射(ブレス)が暴発。ギリギリ巻き添えを喰らわなかった間に可能な限り削り取る。

だが腐っても炎獣の王、今なおその目は赤く輝いている。

(まだ来ないの。もう少しで鎮痛が切れるはず、そしたら今度こそ終わり)

ポーションの効果時間はおおよす体感だが把握している。だからこそ焦りが出始め、()()()()()()()()()()

「グシュ」

ルティアは自分の真横から何かが潰れた音が聞こえた。向けば振った時に持ち上がった空いた手が大きな歯に挟まっている。

「え....あああああああああ」

「ウウウウウウウ」

獣は距離を取ることを捨て、己の武器たる牙を持って彼女を殺すことを選ぶ。それでも力を込めて腕を喰い千切ることが出来ず、何か硬い物がそれを阻んでいる。

「ガレオン...」

腕をギリギリ繋げているのは腕のプレート。前の安価な防具であれば既に無くなっていた腕を彼の防具が守ってくれた。

ルティアには現状を打破する手立てが無い。武器は振るえず、激痛で視界が白飛びしている。

(どうする、考えろ、考えろ)

防具だけでどうにかするしかない。でも防具にはそんな都合良くダメージを与えられる【スキル】は。

「【捕食】!!!!」

絶叫にすら聞こえるその合図には防具は輝き出す。

レオファイアーウルフの素材に認定されているのは爪と牙、そして魔石。もし【捕食】の発動条件が()()()()()()()()()()()()なら、通る。

ビキビキと音を立て、今にも喰い千切ろうとしていた牙が砕け防具に溶け込んでいく。相手も口を開けて逃げようとするが、【捕食】の吸引力を舐めるな。

数秒足らずで接触していた牙全てを取り込み、腕のプレートは綺麗に修復された。

「ゴッゴウウウウ....グウウウウウ」

口から見たこともない量の血を垂れ流し、人生で感じたことの無い奇妙な痛みに遭遇した炎獣えんじゅうの王ですら顔をしかめる。

武器の牙の一部を失い、口は裂かれてまともに火炎放射(ブレス)も吐けない。このまま攻めの手を止ませない。

だが現実は非常。

「まだ...あれ足が」

ルティアは近づこうと足を動かした。なのに視界に映っているのは地面。

ドクドクと音が耳の奥から聞こえ、腕はもう痛みというより熱の塊のそれに変わっている。鎮痛はとうの昔に切れ、興奮下のアドレナリンだけが彼女を動かしていた。それでも彼女の体の方が限界を迎え、全身から力が抜け落ちていく。

(あぁ、負けたんだ)

ゆっくりと落ちていく瞼の向こうで、私は見た。

炎すら燃やすような赤い髪、炎を凝縮したような赤き大剣。

「よく耐えた。後は我々の仕事だ」

優しい声が聞こえたのを最後に、私の意識は闇に溶けた。

私が目覚めたのは大討伐から一週間後。単騎でレオファイアーウルフを足止めしたことで、ガーディーとギルド職員から二時間ぐらいこっ酷く怒られた。

理由は明白。ギルド職員の静止を無視、下位冒険者が中級上位の魔物に挑んだこと、一番大きかったのは私が本来庇護下にある子供だということ。

「お前アースの時もそうだったけど、一体何処からそんな勇気と体力が出てるんだ」

「腕、大丈夫なの?」

「俺の話をだな〜。しっかり繋いでくれたよ、王都のギルドには最高位のプリーストが五人はいる。代金は俺が払ったから、将来返せよ」

「どれぐらい」

「金貨10枚」

「た、高い」

所持金を考えれば全然払える額だが、まだまだ庶民が抜けきっていないルティア。

三日もすれば体を動かせるようになった、腕は相変わらず包帯グルグル巻きだが。

防具も一日でダメにしたので、おじさんに運ぶのを手伝って貰って鍛冶屋に行く。

「マスター」

「おう生きて....お前さんボロボロじゃねえか!?女の子なんだから肌に傷とか残すなよ、後で化粧品売ってる店紹介してやる」

「それよりも防具直して」

「何いってるんだ、俺が作った防具....今回はタダで直してやる。修繕費だけでお前の貯金全て飛びそうだからな。二日後に来い、あと保護者ちゃんとその子見ておけ」

「分かってますよ」

諸々を終え、報酬が出るとのことでガーディー一行と共にギルドに集まることに。

中に入るとやけに周りから視線を感じる。私は何か変なのだろうか。

そう思っていたら弓使いの人が私に小さめのローブを渡してきて、何も言わずに着されられた。そしたら周りから「チッ」と舌打ちが聞こえたので余計に?が浮かぶ。

(ガーディーさん少しは教えた方がいいですよ)

(無理に決まってるだろ。まだ性とかそこあたり認識してるとは思えん)

視線を集めていたのはシンプルに肌が露出していた。しかも冒険者になる当たって動きやすい服と防具を選んだ結果、普段着が短パンで長袖。ブラジャーなんてしてないので動く度に服の浮き沈みで女性に飢えている男達は体格が見えて興奮する始末。

そんなことルティアに教えられるほど、ガーディー達は強くなかった。

「ほらルティアの報酬金。びっくりするぞ」

「こんなに貰っていいの!」

「一人でレオファイアーウルフを足止めしたんだ。それぐらい貰わないと損だぜ」

金額は金貨10枚。全然働いていない気がするのにこれだとちょっと得した気分。

「じゃあ宿に戻るか。ルティアも流石に実家が恋しいだろ」

「うん。」

「じゃあ先に宿に戻ってくれ。俺はまだギルドと話すことがあるからな」

彼女を見送り、ガーディーは隠れていた人を呼ぶ。

「アマテラ、もういいぞ」

「すまないありがとう」

赤い髪の女性、アマテラ・リーゼエンデは目を細めながら問う。

「ガーディー、あの娘は一体何者だ」

ギルドの客室で二人は向かい合う形で座る。

アマテラ・リーゼエンデ。王都で活動している冒険者団『不死鳥の羽』のリーダーで、数少ない最上級に差し掛かっている上級冒険者。

「『辺境の英雄団』、私の方でも彼女は調べた。だがごく普通の女の子、どう考えても冒険者になる理由が見当たらない。現に彼女が住む村も豊かな自然に囲まれていて、両親共に働いている。学院に通うわけでもなく、誰かが病に臥しているわけでもない。彼女があの年齢で働く理由はなんなんだ」

「理由については聞いていない。だが教えてもくれないと思う」

「そう、女には秘密の一つや二つあるものよね」

アマテラは一枚の紙を彼に差し出す。それはステータスを記載したもので、相手はルティア。バカ高い鑑定道具を使ったのかと呆れたが、内容を読むと手で口を抑える。

「あの子は異常。貴方の顔を見れば一目瞭然ね」


ルティア・アーリン

職業・無し

魔法適性・妨害

保有スキル

・無し


シンプルな文章、それこそが()()

冒険者になった場合、少なくとも彼女場合は『剣士』などの職業の記載になる。

なによりありえないのはスキルを一つも持ち合わせていないこと。

剣を一年間降り続ければ最低でも【剣術】を獲得出来る。ルティアは騎士流剣術(レギンアーツ)の技を使えるから【剣技】を持ち合わせていても不思議じゃない。というより持っていないほうがあり得ない。

「鑑定道具の故障かと思って3回試したわ、でも結果は同じ」

「お前はどう見てる」

「【スキル】を持ち合わせていない以上、自分の目で確かめたい」

「いやお前まさか....」

「あの子借りるわね」

にっこりと悪魔のような笑みをアマテラを浮かべた。

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