二話「愛剣と王都」
アース討伐から半年、私もついに八歳になり無事にギルド登録が出来る年になった。
ガーディーおじさんが両親を必死に説得してくれた甲斐もあり、嫌々ながら両親は冒険者になることを許してくれた。
「まさか娘がそんな凄い事をしてるなんて知らなかった」
「アーシュちゃんの後ろに付いて回ってる子だったのにね」
両親の私に対するイメージが更新されてなかったのが大きな要因だが、こんな所で足踏みしてる暇は私には無い。ギルド経営の格安宿舎で寝泊まりすることも伝えた。毎回二時間以上かけて家から行くのでは時間を無駄にしすぎている。
「疲れた」
私の為に貯めてくれたお金も貰って今の貯金は金貨20枚。二ヶ月は遊んで暮らせるお金、つまり今私に必要な物を買い漁れる時なのだ。
「宿代を考えてもダメになった武器に最低限のアーマープレート、魔法の入門書とか絶対に必須だよね。う〜んお金が足りない」
アースを倒す鍵となった魔法はガーディーの知り合いに教えて貰った。魔力が少ない私でも一日5回は使える。まぁあの時は1回に全てを注ぎ込んだから効いたと思う。
それ以外でも魔法が使えれば窮地を脱する機会は多く得られる。学ぶにはその分出費も嵩むわけだが。
「考えてもダメダメ。・・・アーシュ何してるのかな」
手紙は送っているけど、この一年間返信は届かなった。忙しいのかはたまた国の方で止められているのかは分からない。王都に行けばまた会えるかもだし、早く強くなりたいな。
「でもまずは、ギルドで登録だ」
*
ギルドで登録を済ませたらその場で受付に抱きしめられ、その後次々にその場にいた冒険者に頭を撫でられたり持ち上げられたりと大忙しだった。一応私も女の子だし、恥ずかしいものは恥ずかしい。嬉しさが勝ってたから別に構わないが。
「ルティアさんまだお時間あるのでしたら個室に来てください」
「何かあるんですか」
「行ってみれば分かります」
周りも空気を読んで私から離れてくれる。こういう所はしっかり冒険者だからなんか変な感覚になる。
案内されたのはギルドマスター室。私が此処に入るのは初めてで、受付がノックした時は心臓がバクバクで止まらなかった。誰だって偉い人に会うのは緊張する。
「お邪魔します」
「ルティア、よく来たな」
「ガーディーおじさん。それと....ギルドマスターも初めまして」
「構わない。君の噂は彼から聞いている」
この場で一番年齢が高く、年齢だけで言えば70歳とかなりの長命な人こそこのギルドのマスター、ストロフさんだ。元々は国王勅命の最前線の冒険者と話は聞いたが、その実力は健在なようで、こうして目を合わせただけで全身が震えている。
「ストロフ、可愛い俺の弟子を怖がらせるな」
「申し訳ない。お前の弟子、そして四魔臣を討伐したと聞いては真実かどうか気になるのは無理もないだろう」
「それはそうだが」
ストロフさんに座るように促され、おじさんの隣にピタッとくっつきながら座る。こういう時この人は心強い。普段はとてもうるさいけど。
「今日君を呼んだのはアース討伐の報酬、そしてガーディーから君にプレゼントだ」
「おいなんでバラすんだ!サプライズにする話だったじゃないか」
「ギルドの人間を酷使させておいて口を聞けるな。ルティア君もそういうことだ」
「報酬は頂いた筈では?」
「それは表の話だ。」
そう、既に私はギルドの受付で報酬を頂いた。金貨15枚、冒険者にもなっていない私にはあまりにも大金でそれを見た時は倒れそうになったほど。
だがストロフさんの話し方的に私は全ての報酬を頂けていないことになる。
一体どういうことなのか。
「双斧のアースの討伐貢献、並びにガーディー・ノバンの救出貢献。金貨150枚をギルドの代表としてルティア・アーリンに報酬とする」
いつの間にか私の隣にいた受付がトレーに綺麗に並べられた金貨の山がテーブルに置かれる。
「150枚.....150枚なんて聞いたことないです。何かの間違いですよ!」
「安心しろ、ガーディーも150枚受け取っている。四魔臣にはそれほどの報奨金が付けられているのだ。君は受け取る義務があり、ギルドは渡す義務がある」
「わ、分かりました。でもこんなお金持ち歩けません。」
「そう言うと思い既に銀行と契約済のギルドカードを発行済みだ。持って来てくれ」
渡されたのは銀色のギルドカード。通常発行されるのは木製のカードからも分かる通り、これは特別な冒険者にしか手に出来ない代物。
魔法によってギルドカード越しでお金を預けられ、大陸中どのギルドでも引き出しが可能。合わせてギルドの宿泊施設を無料で使う特典まで付いている。なのでカード一枚で金貨50枚の値が付くとも囁かれている。
そんな代物と報酬金、もう私には許容オーバーで頭の上にひよこが回っている。
「まだある。ガーディーほら早く」
「そう急かすな。ほらルティア、あの戦いで剣をダメにしただろ。だからこれは俺からのプレゼントだ」
テーブルに広げられたのは剣身が黒く、ほのかに魔力を帯びている剣。
「アースの魔剣とアース自身の素材、そこに俺の秘蔵の素材を合わせて作った特注の品だ。今のルティアは大きいかもしれないが、王都中を巡っても出会えない一品と自負しよう。」
「ルティア君は『鑑定』は使えるのかね。」
「使えません。まだ基礎の魔法も危うくて」
「それならその武器の性能を大まかに書き記した。確認してみてくれ」
内容を確認する。
《魔法剣アースレイヴ》
状態・『完備』
【自己修復】【切れ味固定】【重量補正】
【パワーブレイク】【ダイダロスブレイク】【双斧】
「こんな感じなんですね。でも下の二つはアースが使っていたスキルですけど。」
「この剣の所有者の間であれば下の三つの【スキル】を使うことが出来る。上の【スキル】は武器そのものに付与されたもの、どれも貴重で君の力になる」
ストロフさんの説明的に、『鑑定』は【スキル】や状態を確認出来、能力値とかはより上位の魔法を使わないと測定が出来ない感じだ。
アースレイヴを持ち上げると武器にそぐわない軽さで、鞘に収めて腰に装着しても全然動きを妨げない。【重量補正】のおかげか。ならこちらのスキルはどうなるのか。
「【双斧】」
納刀したのとは別で私の手元にアースレイヴが姿を表す。
アースが私達に見せつけてきたあの二振りの大斧に近い形態になれる【スキル】。しかも本体が手元から離れていても使えそうだ。戦略の幅が広がった気がする。
「すみません、これのお代はどれぐらいですか」
「何言ってるルティア、これは俺からお前へのプレゼントだ!」
「素直に受け取れ。そうしないとガーディーが悲しむぞ」
「・・・・嘘ですよね。」
どう考えてもこの剣一本で人間の人生の数回買えそうな値段は付いてる。【自己修復】なんて最上級の冒険者、もしくは王家直属の騎士にしか付いていない物。
市場価値を知らない私でもこの剣の価値は少しは理解しているつもり。
「可愛い弟子が喜びそうなプレゼントなんて、俺にはこれぐらいしか思い付かなかった!だがまぁしばらくはこいつ一本で冒険者やれる筈だ、受け取ってくれ」
そこまで言われたらもう仕方ない、ここは師の顔を立てるとしよう。
「ありがとうございます、おじさん。」
こうして愛用の剣を手に入れた。因みに制作費用だけで時価金貨400枚相当と受付にバラされ、その場で気絶したのは別の話。
*
ギルドの宿泊施設で寝泊まりを始めて一ヶ月、町の人達にも顔を覚えられてきた。
毎日早朝からランニングをして、ギルドが開いたら日帰り出来る依頼をこなす。空いた時間に体を鍛えるのと図書館で勉強、夜はギルドの食堂でアルバイトをしながら冒険者の方々に教えてもらう日々。
そんなある日、ギルドマスターにまた呼び出された。
「王都で行われる大規模な魔物討伐が行われる、比較的王都に近いうちからはガーディーをリーダーとした冒険者団を派遣することになった。君も参加して欲しい」
「お荷物になりそうですけど」
「アースを討伐貢献しておいて良く言える。今回の討伐対象はファイアーウルフ、毎年この時期になると大量発生する下級の魔物だ。君でも十分討伐可能だと思ってる」
渡された資料にも怪しい箇所は無い。王都に行く良い機会だ、乗らない理由も無い。
「頑張ります」
「うん、よろしい」
防具の新調やポーションのような消耗品の購入、冒険者に依頼に関して聞き込みをしていたらあっという間に出発の日になってしまった。
総勢30名、5台の馬車で王都に向かうことになる。此処から二日かけて行くわけだが、人数割はおじさんが既に決め終わっていて私はおじさんと同じ班に選ばれる。
「ギルドに常在している冒険者はあまり参加していないからな、可能な限り俺の班にはお前の顔見知りを集めておいた」
「ありがとうございます」
女性冒険者が同業の男性から強姦の被害を報告されるのは珍しくない。ルティアは冒険者になったがまだ八歳、大人の男性が馬乗りになれば逃げることも返り討ちにすることも出来ない。その点ガーディーの班の方々は知っている人達だから安心だが、私以外の女性冒険者は見当たらないので、警戒しておくに越したことはない。
「それじゃあ出発だ」
馬車が動き出すと不慣れな揺れで落ち着かない。
アースレイヴを抱きしめ、ガーディーに寄りかかる。頭をポンポンと手を置かれるが、今回ばかりは許してあげよう。
「今年は大討伐大丈夫なんすかねガーディーさん。」
「勇者が見つかった話もある。四魔臣の一人をガーディーが倒したとは言えど、また厄介な魔物が現れる可能性は拭えないだろうな」
「そうだな。転移魔法陣の存在が発覚した以上、討伐に合わせて周囲の調査と異変の解決を最優先にした方がいいだろう。ルティアもいるわけだし、安全が第一だがな」
「足を引っ張らないように頑張ります」
私がそう言うと皆から髪がぐしゃぐしゃになるまで撫で回された。
日が落ちると馬車は止まり、各々が就寝する為にシートを広げたり木に寄りかかったりと自由に過ごす。
私はガーディーと他の方々にファイアーウルフの戦い方と俊敏な魔物の対処法を体で叩き込んで貰う。思いっきり疲れればそれだけぐっすり眠れるし、夕食も美味しく感じるから一石二鳥。
泥だらけでになったので近くの川で水浴びをすると言うと、弓使いの人が護衛をすると名乗り出てくれた。
川にたどり着き、周りに人がいないことを確認してから服を脱ぐ。想像以上に全身泥だらけで、洗い終わるのに時間がかかりそうだ。
「アースレイヴも汚れちゃった。水洗いはダメと聞いたし、王都に着いたら鍛治師に頼んで綺麗にしてもらおう」
ふと自分の体を見る。
冒険者になってまだ時間は経ってないが、少女に似つかわしくない程度には筋肉が付いた。長袖とロングスカートが基本にしてるので肌が露出することは少ないので、あまり目立つことはない。でも着実に成長してるのを実感出来るのは嬉しいものだ。
体と髪を洗い終えたので着替えて戻ろうとした時、草が擦れる音がした。
「誰かいるのですか」
「おや、こんな所に女の子一人とか危ないじゃないか。」
5人の男性の冒険者。でも見た目が薄汚れていて、私をジロジロと品定めするがの如く舌舐めずりしている人もいる。
「もう戻るのかい、夜道だし私達がキャンプ地まで送ろう」
「連れの人がいます」
「少ないと夜道で夜盗に襲われちゃうよ」
「ジロジロ見ながら言われても」
服を全て着れず上着で胸元を隠している状況。剣は足元にあって拾う前に彼らの行動が間に合ってしまう。
(怖い。おじさん助けて)
魔物は殺意だけで襲ってくるが、人は違う。入り混じった愛憎は一層タチが悪い。
「安心してくれ、この子はうちのパーティーの連れだ」
「おいおい弓矢を持たずに構えて脅しにもならないぞ」
事態を察してくれた弓使いが彼らと私の間に立ち塞がる。矢の無い弓を弾き絞り、臨戦態勢の入ってるのを見ると危うい状況だったらしい。
「引かないのならこちらも武力を行使するしかない」
「何するんですか」
「追い払うだけだ。よく見てなさい、遠距離の技があるとどれだけ有利にコトを進められるのかを。」
彼は存在しない矢を握り締め、撃ち離す。
「【ウィンドアロー】」
弦から手が離れた瞬間、暴風が辺りを包み木々を揺らす。ルティアも飛ばされそうになり、たまらず彼の体にしがみ付く。
だがこちら側は放たれた暴風とは逆の位置にいたおかげでそこまでだったが、風が収まり目を開けてみれば、先ほどの男性の冒険者の集団がいた場所はポッカリと大きな穴が空いていた。
「遠くに吹き飛ばしただけだよ。冒険者はこれぐらいでは死なないし、ガーディーのリストにあった冒険者と一致しなかったから、恐らく入れ替わった犯罪者だろうね」
「うわー」
あの人のパーティーメンバーなのだから強いのは理解していたけど、ここまでとは。
その後無理矢理おんぶさせられて、キャンプ地に戻ると弓使いがおじさんに事の顛末の伝えた。直ぐに冒険者を集められ、ガーディーが直接調べたのでもう怪しい人は残っていない。
「疲れた」
タオルに包まると一瞬で深い眠りに落ちていく。
明後日には王都に着く。体調を崩さないように努力しなくては。
「アーシュに、会いたいな」
寝言のように、ルティアは目を閉じた。
*
「あれが王都オルフダイン。大きい...広い...人もいっぱい」
二日の旅を終え、ついに王都にやってきたルティア。彼女の反応は完全に田舎者のそれで、馬車越しながらはしゃいでいるのが外からでも丸わかりだ。
「先にギルドで受注、今日と明日ぐらいは自由だからその間に回ろう」
「うん!」
馬車から降りて王都のギルドに向かう途中も私が何処かに行こうとしたら首根っこ掴まれた。さながら親猫に噛まれてる子猫のようだった。
さすが王都、物流の中心地なので流行の品々が集まる。村に来る行商ではお目にかかれない服やアクセサリー、香水まで売っている。試しに値段を確認したら引いてしまう額で、隣にいたガーディーが苦笑しながら頭を撫でてくれた。
「これが王都のギルド、酒場が無い!」
「此処が異常なだけだから、ルティアちゃんは勘違いしちゃダメだよ」
「そうだそうだ!酒場が無いとクエスト明けの一杯が飲めないだろー」
「純粋なルティアちゃんを騙すなーー」
中に入れば様々な窓口が見え、ギルド内で依頼の受注から武器の購入、道具の仕入れから換金、果てには生活必需品まで置いてある。都会にはお店が集結した『デパート』なるものがあると聞いてたけど、まさかギルドがそれとは。
武器防具屋ならアースレイヴの手入れも出来ると思うし、ガーディーの手が埋まっている間に済ませることにした。
「武器の手入れお願いしてきます」
「おう行ってらっしゃい。俺から伝えとくよ」
近くのパーティーメンバーも伝え、お店に入ると先ほどまで涼しかったの急に暑くなる。奥からはカンカンと音が響いていて、受付のドワーフが私をじっと見ている。
「何が御所望で。」
「武器の手入れをお願いしたいんです。汚れを落とそうにも道具が無くて」
アースレイヴを受付の台に置くと土妖精が目を凝らす。かなりの業物との話だから、鍛治師的にも珍しいのだろうか。
「こんなガキが魔剣崩れを持ってくるとはな。誰の依頼だ」
「依頼じゃないです。これはちゃんと私が貰って、私が使っている剣です」
「はっ!お前みたいな赤ちゃんがこんな武器を買うお金があるとでも。見た所貴族のお嬢様にも見えないし、盗みでもしたか」
低身長な種族であるドワーフに上から見られ、こんな経験をしたことないルティアをしどろもどろになりながら反撃するが、年の差かまるで話を聞いてもらえない。
涙目になりながら剣を抱きしめ、笑っているドワーフから逃げようとした時。
「待て」
呼び止められた。
*
「うちの者が迷惑をかけた」
「いえ、いやはい」
同じ土妖精のように見えるが、身長はガーディーと同じぐらいの高身長。村の教会で読んだことあるけど、もしかしてこの人は土の妖精王なのだろうか。
土妖精の上位種族、土の妖精王。聖剣の下位互換である宝剣を作れる唯一無二の鍛冶師の種族であり、一本作るだけで国が傾く金額が動くと言われている。教会の本にそんなことが書いてあったと思い出す。
「剣を見せて貰った。グリップが所々擦り切れていて、剣自体はスキルによって修復されていたが、それでも何度も魔物と戦い続けた形跡があった。これは紛れもなく君の剣であり、君と共に生きた証だ」
優しい声で言われた。きっと私を認めてくれたんだと思う。
「手入れは私がやろう。パッと見君は防具を新調していないようだね、お金さえ出して貰えれば、私の方でファイアーウルフ討伐開始の日まで用意出来るがどうかね」
「いいんですか!?」
土の妖精王が作る防具なんて人生で触れる機会すらまず訪れない。そんな人に作って貰えるのなら願ったり叶ったりだ。
金貨100枚が予算と伝え、一旦そのお金を預けることに。お釣りは防具を受け取る時に返して貰えるようなので、楽しみが出来た。
ルンルンでガーディーの元に戻っていくルティアを見送った土の妖精王は受付のドワーフに聞く。
「オーガン、お前が七歳の時何をしていた」
「親方....そんなの覚えてませんよ。100年以上前のことですよ」
「そうだ、記憶に残らないぐらいにはお前は平和に過ごしたんだ」
流石の彼も異変に気づいたのか、静かに席に座り背筋を伸ばす。
「半年前に四魔臣の一人、双斧のアースが討伐されたのは耳にも届いているな。」
「届いています。辺境の町の森に現れ、上級冒険者ガーディー・ノバンがそれを討伐。ランクの繰り上げと報奨金が授与されたと」
「そうだ。だがギルドは単独で撃破は不可能と判断しており、探りを入れた」
ストロフ側はルティアが巻き込まれたことを隠し通そうとしたが、既に本家ギルドにはバレていた。合わせてアースの魔剣を基盤に作り上げたアースレイヴの情報も流れている。それはつまり。
「先ほど訪ねて来たあの子が、まさかこの剣の持ち主とはね。」
「あのガキが双斧のアースの討伐に貢献した、ルティア・アーリンで間違いない」
「あのガキが!?うなありえねぇ、まだあんなチビじゃないか」
オーガンだって修羅場は超えてきた。人間種より長く生きている彼も多くの危機に直面し、何回も生還してきた。だがそれは普通の魔物だったり強盗が押し寄せて来たりで、大抵力で解決出来る問題だ。
だがもし自分が7歳の時に四魔臣に遭遇したら、運良く助けが来ても勇気を出してあの少女のように戦えるか、それは否。
大人の彼は直ぐに答えを導く。自分には出来ない、恐怖で足が絶対に動かないと。
「お前も理解したようだな。そんな勇気を出した子があんな顔したんだ、大事なお客さんを笑顔に出来ない店など潰れて当然だ」
「しかし」
「だからこそ、討伐が始まる明後日までに防具を完成させる。あの子をいつまでも支えてくれる防具を。あよくばウチの常連にしたい」
「旦那がそこまで言うのなら何も言いません。やり切るだけだ」
そこにはもう下に見る目は存在せず、職人の目だけがそこにあった。
*
討伐の日になり、朝早くからギルドに集合することに。
頼んでおいた防具が気になり、珍しくルティアは早起きしていて眠気も無し。
「マスター、出来てますかー」
「俺をそんな風に呼ぶ人は初めてだ。昨日名乗り忘れてたな、俺はガレオンと言う」
「ルティアです」
「昨日迷惑をかけたのはオーガンだ。腕は確かだ」
防具を受け取る前にガレオンマスターが体を採寸。元々スキルで私の身長や腕の長さとか把握していたらしいけど、測って情報を書き残すのが重要らしい。
お釣りは金貨20枚。金貨80枚でどんな防具が出来上がったのか気になっているとそれは現れた。
白を基調としたライトアーマー。アームとレギンスも同じく白で、特別な素材が使われてるのか光が当たるとほのかに赤くなる。持ち上げてみると不自然なほど軽く、アースレイヴにも備わっていた【重量補正】によるものか。
ルティアがこれらの防具をひと目見て気に入ったのは訳がある。
男性が着るようなゴテゴテした感じが一切無く、女騎士が着るような華やかさがそこにはあった。まるで御伽噺に出てくるような感じ。
「これがこの防具の詳細だ。気になる点があった質問してくれ」
《共に生きる旅立ちの鎧》
状態・『完備』
【簡易修繕】【重量補正】【弱再生】【疲労低減】
【属性耐性・成長】【強度強化・捕食】
見たことないスキルばかり。中でも目立つのは【属性耐性・成長】と【強度強化・捕食】。スキルにはこのような名前とは別に何かしらの用語が付くのは知らなかった。でも明らかに異様なスキル名だし、もしかしなくてもレアスキルなのでは。
「この二つは?」
「【成長】はルティアが強くなるに連れて防具自身もそのスキルが強化される。最上級の冒険者の武具には必需品となっている物だ。【捕食】は防具に魔物の素材を触れさせることで発動する」
ガレオンが小魔石を防具に当てると光の粒になって防具に吸い込まれていった。
「このスキルはあまりに人気じゃないが、あって損することはない」
「凄い...凄いです!こんな防具を私が貰っていいんですか!?やったーーー」
その場でぴょんぴょんするルティアを外から覗いていたガーディーのパーティーメンバーに、ガレオンと隠れていた見ていたオーガン。ハッと我に戻ったルティアは顔を赤くしながら防具を受け取った。
「剣も綺麗にしておいたそれと鞘の方はサービス。オーガンにお礼をしておけ」
鞘から何か暖かいものを感じる。恐らく付与魔法、ドワーフが装備に魔法をかけるのは普通だがそんなのをサービスで貰えるなんて。
「オーガンもマスターもありがとう」
「俺はそんなんじゃない」
「恥ずかしがるな」
ブンブンと手を振って退店した彼女を見送った後、二人は安堵する。
「良かったじゃないか。」
「あんなガキが死ぬとか目覚めが悪いだけだ。」
最後まで素直になれないオーガンに苦笑した。
見えなくなる間近、ガレオンは鞘に『鑑定』をかけた。
《アースレイヴの鞘》
状態・『完備』
『エンチャント・スティールキラー』
「大層なもの付けてるじゃないか」
ほんの少し口角を上げ、また工房の奥へと帰っていった。




