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偽りの王称  作者: 大空界斗
第八部 平和の代償
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第三話 無残な光景

 これより開始するは、無残な殺し合い。三人は固唾を呑んだ。

「まだ大丈夫だ。ばれないように行動しよう。あの中央の建物に潜入する。」

「了解。私たちはあの四輪駆動の裏に隠れてるよ。」

「解った。信事、お前も沙羅たちと四駆の裏で待機してくれ。あくまでその付近にだ。二分以上同じ場所に固まるな。情報がつかめないで十分すぎたら無線するからその場から移動しろ。いいな?」

「…はいよ。生きて帰れよ。」

「任せろ。」

全員が四駆の裏に回ったのが見えた。暗くなりつつある空を見る。星が見え始め、太陽があった西の空には、赤い光芒が広がる。敵が近づくのを感じる。

「<誰だ⁈>」

俺はゆっくりと振り向く。瞬間、太陽は完全に没し、辺りは一気に暗くなった。目を輝かす。見えるか?この感情。見えるか?この怒り、憎しみ、悲しみという感情が。俺が今まで殺してきた人たちの様々な最後の感情だ。俺はそれをため込んできた。お前にも見えるはずだ。俺だけじゃない。苦しんで死んだ奴は今もなお苦しみ続けている。お前もその一つになれ。

「<だ、誰だ⁈答えろ‼>」

そいつは聞き方を強くした。手に持っているのは、ここでは珍しく持参したのであろうアメリカ銃。M16A4だ。マガジンクリップで30連スタングマガジンを二重装備しているのが見えた。

「<答えないなら、殺す‼>」

「<アハッ。お前に俺が殺せるかな?>」

俺は暗闇で怪しく微笑む。独特の威圧感を繰り出し、目の前のそいつにこう言った。

「<今まで俺がどれだけの人を殺したと思ってるんだ?>」

「<何だ⁈>」

「<質問だ。この施設の情報を吐け。いいえと答えようものなら…。>」

俺は拳銃をそいつに向ける。

「<仲間に何が起きたのかを伝えるのも…。>」

「<だ、黙れ‼>」

敵がM16A4のトリガーに指をかけるのが見える。トリガーを絞るより早く、俺はそいつに近づく。一気に距離を詰める。そしてナイフを取り出して敵の人差し指を切り取る。瞬間で敵が叫びを上げる前に口を手で押さえ、足払いし、倒れたところを踏みつけ、ナイフを首元に押し付け、押し固めていた。

「<何もしゃべるな。質問にだけ答えればいいんだ。>」

…およそ十分、も経過していないが、無線機に手を出した。

「お前ら、そこから西に少し進んだ先の扉の裏に移動しろ。」

三人から了解の返答が来た。

「<もう一度言う。今すぐ情報を渡せ。>」

慌てて男は情報端末を取り出す。が、旨く掴めずに落とした。それを拾い上げ、そいつ首を締めあげる。

「<ありがとよ、じゃぁな。>」

残った遺体を四駆の荷台の中のトランクに隠した。

「情報収集に成功した。一人を尋問して、情報端末を入手した。ロックも掛かっていない。」

『随分と親切な品だな。』

「そっちの様子はどうだ?」

『そうだな、ここから巨大なガスタンクが見える。何のガスかは解らんが。特に異常はない。』

「了解。そのガスタンクについて調べてみる。そのタンクの隣東側に建物が見えるだろ?」

『確認した。』

「そこの三階に向かってくれ。道中の敵は俺が誘導する。」

『了解した。』

…さて、ここを統治しているリーダーは誰なのか。そいつから情報を盗みたいものだ。

「…単独行動に危険がないわけではない。…が、しばらく単独で行動させてくれ。」

『…理由は問わん。何人殺る気かも問わん。俺には何も解らんが、一つだけ条件を呑め。』

「それとは…?」

『生きて帰ること。』

「…お前、そればっかだな。そもそもここに来た時にその条件を呑んだじゃないか。」

『念には念を押すものだ。』

「…解ったよ。お前が一番、命の在り方について考えてきたのは知ってる。そう易々と死んでたまるか。俺には俺の生きる目的ってのがあるんだから。」

『そうか。ならいい。』

「ここからは互いの戦場だ。しばらく無線を切ろう。情報はお前の端末に送信した。後で確かめてくれ。」

『解った。こっちはお前の安全を確認次第、拠点に戻って、沙羅に援護をさせる。』

「了解。だが援護はいい。要らんものを沙羅に見せたいか?」

『…。』

「しばらくの行動の監視はお前一人でいい。情報を掴み次第お前は帰還しろ。」

『…了解。』

「最後に一つ。俺は三時間で戻って来る。三時間で俺は全ての情報を持ち帰る。」

『宣言か…?』

「いや、自分に対する命令だ。従わなければならない。お前に当事者になってほしかった。」

『なるほど。それじゃ、くれぐれも気を付けて。負傷したらいつでも来い。』

「ああ。頼りにしてる。」

『…ご武運を。』

そう言って信事は無線を切る。俺も続けて無線の電源を切った。さぁ、孤独だ。俺は走る。この地下に馬鹿広いホールがあった。その使い道についても知りたい。さぁ吐け。何しに貴様らはここに来た。暴いてやるからよ。

 俺は信事の一時撤退を確認し、例のホールに続く階段がある建物の外壁に身を潜め、内部を観察した。ここだけ警備が厳しい。…それほどして守るべき情報って一体。しかし考えても何も浮かばない。改進軍に似たような革命が他国でも起きたのか…?そしたら分かり合える人材が千頭に立つはず…。信事の様に怯えて軍事に手を出す者もいるかもしれんが、信事がそうだったように、多様はしないはずだが。ここまで大規模になると、平和団の様に国外で活動するテロ組織の可能性は高い。アメリカ絡みなら政府内通の可能性は限りなく低い。…が、用心するに越したことはないだろう。

「は…?昇降機に何名か乗ってゆく。どういうことだ。」

疑問に思ったのには理由がある。

「さっきから違う兵服が混じってるのに違和感があったが、昇降機に乗り込んだのは全員同じ兵服だ。…あの兵服、怪しいな。」

俺は敵兵が見張っていないタイミングを見て階段に駆け寄り、少しずつ下る。地上に多いのは、灰色の迷彩服を着た装備の奴ら、アスファルト系の人工物迷彩力を強めている。森林進んで奥深くの灰色要塞であの迷彩は役立つかもしれんが、道中の装が気になっていた。それに比べ、今昇降機で下ってったのは森林、対森林迷彩力を高めた装備で、むしろ外野警備に向いている。だが外野警備は一人も確認していない…。単に見落としただけかもしれんが、少なくとも半径百メートルに人間の物音はしなかった。階段を下りながら考える。彼らの指揮系統や兵服が違う理由まで。しかし解らないものは仕方ない。直接確かめるまでだ。

 最下層に降り立った俺は、辺りを観察する。昇降機の前にたどり着き、端末の地図を頼りにホールに向かう。そこでは、緑の兵団メンバーが整列し、ある一点を見つめていた。その一点からは、何者かが―恐らくこいつらのリーダーが演説をし、その声に耳を傾けていた。この中を移動したら流石に注目を浴びてしまう。屋根裏から移動しよう。思い立った俺は入り口の隣にある通路の天井に気管口があるのを発見した。そのすぐ下には消火栓設備があるボックスが都合よく整備されていたため、気管口に潜入するのは苦ではなかった。むしろ、その中が誇り塗れだったことの方が苦である。その先で、かなり綺麗な、新品とも言えようガスパイプを見つけ、そこに逃げ込んだ。そこからは、演説の内容が少し聞き取れた。…日本語訳でお送りしよう。誰が聞いてるかなどしらんがな。

「我々は今宵をもって準備が完了した。これより、日本に巣くう闇のドブネズミ共の集団を排除する。計画は今夜、一時間半後をもって開始し、日本に向けて進軍。そして日本を打ち取るのだ。前回は少数部隊の返り討ちに終わったが、今回はそうもいかない!」

…やはり奴らの残党か。

「…んで、どうやって俺たちを葬るのかな?」

「我々はヨーロッパ連合と同盟を組むことに成功した。だが敵もかなりの凄腕…すでにこの要塞の内部にネズミが入り込んだようだ。」

「何⁈」

思わず俺はパイプの天井に頭をぶつけた。

「いったたた…。」

「何名かは拘束した。だが、拷問の必要もなければ、尋問の必要もない。」

…一体だれが捕まった⁈

「我々が今から敵地へ赴くのだ。そんなものは無駄な労力にすぎん。」

「信事、聞こえるか⁈」

『やっと綱がった。くそ、敵の野郎。』

「てめぇ、何で逃した⁈」

『俺が偵察で双眼鏡に目を通してたスキに、沙羅と華林を奪い去りやがった!』

「呆気ないな‼…しょうもなすぎるわ。信事、後で説教な。」

『えげつなー。んな茶番してる場合か!』

「お前のせいだろ‼」

『だが俺も仮拠点から二十メートルも離れていない場所での偵察だ。並みの奴らなら気付く。』

「そんなにか。お前の狩りの集中力なら物音で気付いてもおかしくない。相当の凄腕か。」

『油断するな。俺はお前と合流する。』

「いや、こっちは俺一人でカタをつける。それより、改進軍から援軍を送ってくれ。」

『いや俺も加勢する。』

「ダメだ。これは政治的に収める必要がある。」

『この期に及んで国際法か?今は解散して消滅したろ!』

「ちがう。…このままだと、改進軍が危ない。」

『…そんなにか。…解った。俺は改進軍に戻る。…あの二人を頼んだ。』

「わかってる。…こうなったのはお前のせいじゃない。この場は任せろ。二人を絶対に救い出してやる。」

『頼んだぜ、相棒。』

「…任せろ。その依頼、確かに承った。」

俺は再び無線を切る。

「…我々は祖国アメリカに裏切られた。ならばアメリカを葬るために、世界最高軍事力を持つ日本を落とす‼皆、心して挑め‼」

「「ハッ‼」」

緑の兵団たちは一斉に声を上げた。

「…なるほど。三週間前のアレは彼らの少数偵察部隊だったってことか。」

俺は作戦を用意した。

「奴をつけよう。」

そう、リーダーの後を追うのだ。早速移動するリーダー。足早に後を追う。一人の側近を殺害し、俺はそいつの衣装を羽織った。そしてこいつらの後を追った。

 ただ後を追うだけなのだが、数分後、俺と側近は、ある部屋に入った。側近は壁際に立ち、門番の様に佇んだ。俺はそいつとは逆の壁際に佇む。向こうもあまり気にしていないようだ。だが多分、気付かれるのは時間の問題。俺は殺気がひどい。それに、このシチュエーションは一度経験している。この後、スパイが沢山出てきて、自分の味方をしていたスパイが寝返って俺は捕まる流れだ。だが牢獄は度と御免。世界統治してからゆっくりと佇むのがいい。牢獄に思い入れはないんでな。だがどこへ行っても俺はいつもいつも死刑。死刑に好まれた男だ。…ただ単に残念な奴やんけ。そこでは、ただ兵士長の様な人が報告をしただけで終わった。楽な仕事で、ただ単にこれまでの以上報告だけで済んだ。

 二人の側近に守られている、この名も知れぬ緑の兵団の統領は、一人の側近に話かける。

「なぁ、ケビン?今から時間とれるか?お前が得意な作戦立案について話があるんだが…。」

しかし、ケビンと呼ばれた男は返事をしない。

「ケビン?聞いとるのかケビン⁈」

男は声を荒げる。

「おいケビン、統領様がお呼び…何⁈」

「どうした⁈」

「ケビンが…いません‼」

「何だと⁈」

その先で、物音。二人は、曲がり角を曲がり、その光景を見た。

 血まみれ。ただ血まみれである。鮮血。その先に立つ人影は、その目に負の感情をため込んでいた。駆け付けた警備隊五人がその人影に向けて発砲する。しかし、その人影はその攻撃をものともせず、一瞬で五人を射殺した。空薬莢がタイルの床に反響する音。しかし、音は鈍く、同時に液体が跳ねる音がした。一瞬の出来事に何が起こったのか解らない死体は、寸秒待って鮮血を吐き出した。その目はこちらを見た。光の如くその目は鋭く、視線は統領目掛けて注がれた。そして彼はその曲がり角の先へ走っていった。

「ま…待て‼」

統領も走る。曲がり角を曲がるとそこには…誰もいなかった。

「足跡、探せば…は?」

足跡は、途中で消えていた。何が起こったのか、ここに居る誰もが解らずにいた。

「生存者は、誰もいません。」

もう一人の側近が、本当のケビンの死体を見てそう言った。

「残酷な…。」

「残忍すぎる。」

そんな感想を各々漏らし、統領はむしろ感嘆してその場に足から崩れた。

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