第41話 夏合宿一日目、防衛イベント開始
気を取り直して、合宿一日目のイベントを開始した。
会場は、この島で唯一のミュージアム。
そこを警備するのが、あたしたちのミッションだ。
で、愚地三姉妹率いる巳柳高校が、ミュージアムのお宝を盗みに来る。エドワード高校……通称『ドワ女』も、彼女たちと一緒に襲ってくる予定だ。こちらは、ドワーフの集団である。
『七星さん方、ご協力ありがとうございます。ですが、鬼怨組の襲撃も予想されます。最後まで気を抜かないように』
「心得てるっすよー」
ミュージアムの脇で、あたしは武装して警備を開始した。
「はるたーん、こっちは異常なし。そっちは?」
無線で、あたしははるたんと連絡を取り合う。
『問題ないよ。ピオニ、そっちはどう?』
『あいよ。平和そのものさ。まあ、巳柳が来ようとドワ女が来ようと、オレが平和にしちゃうけどね。物理的に』
オレ女、ピオニが、自信満々で返答した。
『来たよ、モモ! そっちにも、三人行った』
「あいっ! 洲桃、了解!」
こちらに回ってきたのは、連絡通り三人だ。巳柳とドワ女の混成チームが、一般冒険者と組んでこちらに向かってくる。成人の冒険者も、女性だ。
『敵はウチらに、一般冒険者をぶつけて足止めする模様!』
「その手に乗るかっての! ウインド、カアッタ!」
後ろの怪盗団に向かって、ドラゴンキラーから風魔法の刃を放つ。
だが、プロの冒険者の攻撃によって阻まれた。
こちらを抑えないと、後ろの盗賊団どころではなくなる。
かといって、こんなのを相手にしていたら、突破されてしまう。
そう思っていたら、助っ人が。
野呂先輩とティナが、盗賊団と戦ってくれている。
『ここは僕たちが抑えるから、キミは冒険者を逆に抑えておいて!』
「洲桃、了解! よっしゃ! お手合わせ願います!」
現役冒険者とケンカできるなんて、願ったりかなったりだ。
とはいえ、お宝を守ることも考えねば。
ちゃちゃっと終わればいいが、そこまで簡単ではないだろう。
冒険者が、ハンドガンを撃ってきた。
あたしはさっそく、今朝作った防具で銃弾を受け止める。
「さすがレア素材を用いた装備だっ! なんともないぜっ!」
ダンジョン攻略での対人戦において、重火器は決定打にはなり得ない。冒険者は、反射神経が飛躍的に上昇しているからだ。
冒険者になってまず覚えるのが、【身体強化】の魔法である。至近距離でさえ、気配で察知して回避や防御ができるようになるのだ。
基本的に、あたしたちは重火器を装備していない。たとえ装備したとしても、正確に当てられる自信もなかった。
まして、相手は多数である。
複数の弾を放つショットガンやマシンガンですら、当てられるかどうか。
なので、自分の信じた武器を使う。
女性冒険者が、ハンドガンを捨てる。脇差しを抜いて、切りかかってきた。こちらも、肉弾戦の方が得意なようだ。
重火器はある程度の火力を保証してくれる代わりに、強さが固定されている。つまり、魔力で威力を強化できないのだ。
対して刀剣などの近接武器は、魔力をどこまでも武器に注ぎ込めるため、いくらでも強化できる。
ダンジョン限定で銃の携行が容易になった時代に魔法が存在するのは、そういう背景があるのだ。
魔法を撃ち出す銃も開発されているが、杖より高額になる上に熱効率が悪い。
また、魔法にはメリットもある。
冒険者が、手裏剣とクナイを投げてきた。
よけたつもりだったが、背後からブーメランのように戻ってきたではないか。
「こいつ、軌道を曲げてきやがって!」
そう。魔法は自分の意思で軌道を変えられるのだ。
重火器だと弾速が早すぎて、コントロールできない。
これが、プロの冒険者だ。
しかしこちとら、こんなくらいの冒険者なら、いくらでも戦ってきたんだよ!
「ほっ」
足を掴んでI字開脚をして、手裏剣をよける。
そのまま、カカト落としを叩き込んだ。
さすがに、こんな大技は通用しない。
冒険者はあっさり避けて、サイドから切りかかってくる。
だが、それも布石だ。
「ウウィィンドゥ、カァタ!」
ウインドカッターを乗せた高速浴びせ蹴りを、反対の足で繰り出す。
顔面にあたしのカカトをモロに食らって、冒険者は倒れた。
「ウインドカッター・キックのバリエーションは、サマーソルトキックだけじゃないんだよな」
さて、内部の警備に乗り込む。




