第35話 島ダンジョン夏合宿、開催
「おーっ。洲桃じゃん! お前さんも、合宿に参加する生徒かよ!」
周りから責められても、ピオニは平然としている。
それどころか、あたしにまで話しかけてきた。
「お前さんには、なんかデスティニー感じてたんだよなあ。また会える気がしたよ」
「それはいいんだけどさ、怒られてるけどいいの?」
「いいからいいから。怒らせておけばいいって」
ピオニが、あたしの肩に腕を回す。
「よろしくなー」
「う、うん」
かなり、フリーダムな女だな。
「ピオニ! ちょっとあなた!」
「だからって、六時に到着して二時間も島をほっつき歩くとか、常識がなさすぎるわ!」
騎士風の女性が、ピオニを叱りとばす。
「いいじゃないですかー、副長ぉー。間に合ったんですからー」
船でピオニを呼び出していた少女が、フォローに入った。
「あなたは黙っていなさいよ、睡蓮! まったく大事なときに、あなたは!」
「わーるかったって」
当のピオニは、まったく悪びれていない。
それがより、副長とやらの女性を怒らせる。
「そ、その辺にしておこうよ、蓮川副長」
ラノベ主人公風の頼りない少年が、副長をなだめた。
しかし、副長は余計にヒートアップする。
「アスカ! 怒るのはあんたの仕事でしょ!? だいたいあんたが頼りないから、三年になっても一年にナメられるんでしょうが! まったく、どうして先輩は、アスカなんかをリーダーにしたのかしら!」
ついには、矛先がアスカというリーダーに向いてしまう。
「怒りん坊の蓮川先輩だと、誰もついてきませんからねー」
睡蓮というおっとり系レディが、辛辣なことを言い放った。
「なんですってぇ!」
「やめな、って。ほら」
まだ続きそうだなと思っていると、アスカという隊長が壇上を指差す。
『あのー。そろそろ説明会を行いますので。論争はそれが終わってから、お願いします』
メガホンを持った嵐山氏が、ケンカを止めた。
「あ……すいません」
小声になって、副長は引っ込む。
こうして、全員が整列した。
勇者連合って言っても、統率力はないんだな。
「個性的なヤツらばっかりで、楽しそうだな」
『えー。みなさんに行っていただくのは、【ケイドロ】です』
これから三日間、全員が各グループに分かれて、お宝を奪うか守るかを行う。
『それぞれの学校が【怪盗団】、【警察】、【市民】となって、ローププレイを行っていただきます』
【怪盗団】は、「警察が保管しているお宝を奪う」、「銀行や豪華客船などを襲撃し、お宝を強奪する」、「お宝を持つ主要人物を誘拐する」などが主な仕事だ。
【警察】は、怪盗団を捕まえることと、お宝を守るのが仕事である。
【市民】は、中立。怪盗団と警察、どちらに協力しても構わない。
ただ、どちらかに協力するかは固定すること。一日目に警察に協力した翌日、怪盗団に、というわけにはいかない。
いわゆる、情報屋のような扱いだ。が、自分で戦闘をしてもいい。
さらに具体的に言うと、【ちびっこギャング】【駐在さん】【村民】に分けるそうだ。
くじ引きで、どの学校がどれを担当するか決める。
「わーい。僕たち、駐在さん組だよ」
「やっぱり持ってるわね」
勇者連合高校は、駐在に回るようだ。
「おい、あたいら【ちびっこギャング】になっちまった。どういう設定にしよう?」
くじを引き、ドワ女がギャングとなった。
「では、我々と協力しましょう」
市民を引いた巳柳が、着替えの魔法で巫女服にチェンジした。
【巫女】はこの世界における、ヒーラーの役割を果たす。
「我ら巳柳は、この先にある神社を拠点にします。昼は巫女として働き、夜はギャング団に協力してお宝をかっぱらうって設定にしました」
「いいなそれ! かっこいい!」
愚地三姉妹の提案は、ドワ女のリーダー・トロちゃんにツボったようだ。
なお、ギャングに加担するのは愚地三姉妹だけ。
他の巳柳高校の女子生徒は、普通に巫女として医療に携わる。
「どうするよ、はるたん。あたしら、市民だってよ」
「じゃあモモ、ウチらは【駄菓子屋】って設定にしよう」
このローププレイにおいて、駄菓子屋は【アイテムショップ】のポジションだ。
「表向きは駄菓子屋で、裏では警察と協力するの。ウチらが腕力を提供して、姫が情報屋」
愚地姉妹がギャングだから、ちょうどよかろうと、はるたんが提案してくる。
「OK。じゃあ、これでいこう」




