第33話 妖怪学校
アフロヘアの男子生徒、嵐山 木蓮氏と玉蘭さんが、我が校にやってきた。
要件はやはり、夏合宿の関連である。
「本日は、ごあいさつに参りました。夏合宿ダンジョン攻略の場として本校を選んでくださり、ありがとうございます」
「いやあ、夏っぽい企画で素晴らしいと思いますよ」
うちの顧問である金盞花幹代校長が、二人をねぎらった。
「夏っぽい、とは?」
「七星 洲桃さんに、金盞花 晴子さんですね。我々、麝香学園が世間でどう呼ばれているかは、ご存知でしょう」
あたしもはるたんも、頭にハテナが浮かぶ。
「妖怪学校」
答えを出したのは、後ろにいたデリオン姫だった。
「そのとおりです。僕はジュボッコ族。彼女は、天狗族といいます」
トレント族とエルフ族とは、系統が違うらしい。こちらは純粋な日本産の魔物、妖怪だという。
「天狗族は通称【イーストエルフ】って言われていて、我らエルフ族とも仲良しなのだ」
「だから、知っていたんですよ」
デリオンと綿毛が、そう教えてくれた。
「実は麝香学園は、世界中にダンジョンができる以前から、異界とつながっているの」
世界にダンジョンができるどころか、人類が誕生する前から、妖怪は存在していたらしい。
やがて人間の進化発展により、住処から追いやられ、今の限界集落まで逃げ延びたらしい。
「妖怪は、日本から絶滅したって聞いたけど?」
はるたんの話に、嵐山氏は「いいえ」と答えた。
「妖怪は数が減ったというより、元の世界に戻ったと言っていい。とはいえ、人間社会に溶け込みたいという一部の村民は、今も日本で暮らし続けているんだ」
「不便じゃない?」
「僕らからすれば、むしろ元の世界のほうが不自由だよ。向こうは、思考も閉鎖的だからね。長生きだろ? 古い習慣から、抜け出せないんだ」
衰退したと言っても、やはり日本文化から学ぶことは多いそうだ。
デリオン姫が、「うんうん。わかる」と言いながらうなずく。
「金盞花は、そんな彼らを支援しているのよ」
「今回のダンジョン探索企画も、金盞花さんの企画を元に我々で作成したのです」
もちろん、あたしたちにはすべてを教えない。あくまでも麝香学園が主催であり、企画内容を全部知ってしまったら面白くなかろうと。
「簡単にご説明すると、いわゆるオリエンテーリングですね」
題目は宝探しで、各チェックポイントに隠されたお題をクリアして、お宝のカギを手に入れると。
「チェックポイントで手に入るアイテムを、「お宝のヒントにしようか」とも思ったのです。けれど以前、ヒントが少ない状態からヤマカンで宝の場所を当てられてしまって……」
玉蘭さんが、困り顔で「企画が丸つぶれになった」事情を話す。
「楽しい企画にしようと考えておりますので、ぜひご期待ください」
「こちらこそ、お願いします」
みんなであいさつをかわし、会議は終了した。
* * * * * *
「ってなことがあってさー」
自室で合宿の支度をしながら、あたしは同室の妹に話しかける。
「合宿であたしはいなくなるけど、あんたは大丈夫なん?」
下の姉貴も、もう大学寮に帰ってしまった。
「一番上のおねしゃまが帰って来るから、へいき」
そうだな。たしか、あたしがいない間は長女一家が泊まりに来るんだっけ。
「あたしがいない間、とーちゃんのことをよろしくな」
「はーい」
本格的な店の手伝いは期待できないが、ジュース瓶くらいはこのコでも提供できるだろう。
「ヨウカイさんなら、ウチのクラスにもいるー。おとーしゃんのつごうとかで、てんこーしてきたの」
小学校低学年の妹にも、同級生に妖怪がいるらしい。
魔物が普通に通学しているから、いじめとかはなさそうだが。
「トイレの花子さんと、まっさきにお友だちになってね。今ではにんきもの」
「よかったなぁ。新しいお友だちができて」
「はーい。スモモおねしゃまも、お友だちいっぱい作るの?」
「そうなるだろうな」
とはいえ、聞かされた参加校が結構すごかった。
前回の【ダンジョン攻略U18】部門で優勝した学校が、混じってるんだもんなぁ。




