第32話 ダンジョン部に、男子のお客さん
金盞花学園に、夏がやってきた。
といっても、六月はほとんどがプールの自由授業で、あたしたちはひたすら泳いでいたけど。
これが、ダンジョンが現れた世界の学校風景である。
基礎的な授業なんて受けたところで、ダンジョン攻略に役立たない。
必要最低限のモラルや文字・言語は、冒険者のレクチャーで学ぶ。
「後は好きに勉強してね」というのが、今の学校のスタンスだ。
少子高齢化や過酷労働の対策をほったらかした、ツケが回ったのである。
とはいえ、世界各国のダンジョンでもっともモラルが充実しているのが日本であることも、事実だ。
だから、あたしたちもスク水でハシャギまわっているのだが。
「モモ、テスト勉強は進んだ?」
スク水姿のはるたんが、プールサイドに胸を預けて、あたしに問いかけてきた。
「ウチはもう、復習まで済んだけど」
金盞花には一応、進級のためのテストがある。
「まあ、バッチリ。というかダンジョン部の審査のほうがヤバイかも」
ダンジョン部の登録に必要な審査が、結構厳しいのだ。
崩壊の危機に瀕しているのに、書類をごまかしていたケースもある。案の定ダンジョンが壊れて、二度と営業できなくなったダンジョンも多い。
「ウチも、古いもんねー。スク水も旧式だし」
未だに旧式スク水なんて採用しているのは、我が校くらいだろう。
それにしても、はるたんの胸がデカい。ここまでくると、犯罪的だ。
はるたんは胸こそデカいが、スタイルが特別いいわけじゃない。
あたしが「スポーツマンにしては割と胸がある」タイプなら、はるたんは「着痩せするぽっちゃり」タイプである。男子に一番ウケる体型、といっていいだろう。
隣のデリオン姫こと弾堂リオンの見た目は、ストーンとした幼女である。プールの授業ではあるが、ビート板を手放さない。
そのまた隣りにいる綿毛こと綿貫 不二菜は、スレンダー女子である。こちらは、姫に泳ぎを教えていた。
姫も綿毛も、どちらもエルフ族だ。スク水より、競泳水着のほうが似合いそう。
今日は昼までなので、着替えたら帰れる。
だが校内放送で、あたしたちダンジョン部だけが呼ばれた。
「ウチにお客さんが来たって。誰だろ?」
「さあ。多分、合宿関連の方じゃない?」
「ああ、そういえば」
金盞花学園は、各学校の合宿に出資していたんだっけ。
校長室に、パンチパーマの男子生徒がいた。
かと思ったら、頭が葉っぱのトレント族か。デッサン人形のように、あちこちの関節が丸い。
「はじめまして、金盞花学園のみなさん」
葉っぱパーマの男子生徒が、ソファから立ち上がって頭を下げる。
似たような制服を着た女子生徒も、同じように立った。こちらは、鳥人族か。
「僕は徳島県立麝香学園・世界樹ダンジョン部の代表で、生徒会長を努めます、嵐山 木蓮と申します」
「副会長の、玉蘭です」




