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ファンタズム・ファンタジア  作者: 日差丸
第二章『銀座のキリエ編』

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第22話 八百比丘尼

 自分の実力の位置付けについて聞かされた時はショックを受けたものだが、いつまでもそれを引きずる王牙ではない。脳の記憶容量が小さい分、嫌なことはすぐに忘れるのは彼の長所の一つと言っていいだろう。十分も経つころには、すでに彼は立ち直っていた。

 黄金色の紅葉が左右に隙間なく立ち並ぶ参道を進んでいくと、ようやく赤い色をした何かが頭上に見えてくる。あの門のような形のものは、おそらく鳥居だろう。

 それは正しかったようで、階段を登っていくたびに丹塗りの建築物の輪郭がはっきり見えてくる。


「はい、到着。ここが香霊町の自称管理人がいる八百神社よ」

「自称管理人って、お前……」

「事実よ。管理人って名乗ってはいるけど、陰陽師院が指名したわけじゃないし。あくまで勝手に土地に居着いて縄張りにしてるってだけ」

「まあ仕事ができるんならなんでもいいけどよ」


 王牙たちは談話しながら『八百』という看板がつけられた鳥居をくぐった。するとすぐそこに立派な境内と拝殿が目に入った。

 浮世にあるものとはずいぶん違う。本来ならこの山を登った先にあるのは人気が全くない寂れた神社だった。

 しかしこの異界のものにはその面影は一切見られない。構造は同じだが、よく手入れされている。それが黄金の木々と相まって、神聖な領域を作り出していた。

 王牙は境内を見渡していると、巫女装束を着て箒で落ち葉を掃いている黒髪の少女を見つけた。あちらも気づいたようで、元気よく手を振りながら走り寄ってくる。


「夜美ちゃーん! よく来たっスねー! 歓迎すっ!?」


 だがその途中、若干突き出ていた石畳がつま先に引っかかった。勢いよく走っていた少女はその場でこけることができず、前方に顔から飛び込む形となる。いわゆるロケットずつきの体勢である。

 夜美はさらっと体を横に開き、少女を受け止めることを拒否。ひらりと身をかわす。

 ――そして後ろにいた王牙の腹に、少女の頭が突き刺さった。


「ごぶへっ!? ……あっ」


 当然の出来事に王牙は反応できず大きく後ろに吹き飛ぶ。そして空中に浮いている途中、下を見て気づいた。

 彼が立っていたのは階段の側にある鳥居の前。

 では、そこから後退したらどうなるか?

 答えは決まっている。


「テメェェェェ!?」

「にゃっ!? ごめんなさいごめんなさい!」


 王牙の体が少女を抱きながら空中に飛び出していく。

 そして少女の下敷きとなったまま階段に落下し、どこまでも滑落していくのだった。



 ♦︎



「死んでたぞ!? 今俺じゃなかったら間違いなく死んでたぞ!?」

「まーまー。許してほしいっス。この可愛いウィンクに免じて」

「どうやらその目ん玉ほじくり抜かれたいようだな……?」

「わーん! 暴力反対っスー!」


 パチンと可愛らしく片目を閉じた少女をアイアンクローで掴みながら、王牙はようやく境内に戻ってきた。

 疲れた……。まさか中腹まで落ちていくとは思わなかった。おかげで背中がズキズキと痛い。それもこれも全部こいつのせいだ。そう思いながら乱雑に彼女を投げ捨てる。


「そのそそっかしさ。相変わらずね」

「夜美ちゃんいらっしゃいっスー! っで、そっちのお兄さんは誰? もしかして、これかにゃー?」


 謎の巫女少女は小指を立てながら、ニマニマとした生暖かい笑みを浮かべて夜美に顔を寄せる。

 しかし彼女は躊躇いもなくそのウザそうな顔面に拳をめり込ませた。

 どうやら彼女には人をイラつかせる才能があるようだ。


「にぎゃー!?」

「どうやら殺されたいようねこの猫もどきは」

「嘘です嘘です! ごめんなさいッス!」


 猫もどき、と言われて王牙は納得する。

 見た目は同年代と思える少女そのもの。喋り方からして後輩がいたらこんな感じなのだろうかという気分にさせる。しかしその頭と尻からは、人間では決して持ち得ない猫のような獣耳と、二股に分かれ先っぽに炎を宿した黒い尻尾が生えていた。


「ウチは夏転! 火車夏転ひぐるまかてんっス! しくよろねー!」

「これは火車。死体を好み、自身の荷車に乗せて奪っていく猫の妖怪よ。趣味通りに陰気な性質してるからあなたも気をつけることね」

「お兄さんが死んだら死体はウチが回収して食べるんで、よろしくでーす!」

「……苗字がまんまだな」

「そ、そこは気にしないでほしいっス!」


 どうやら本人も気にしていたことらしい。ピンッと彼女の尻尾がまっすぐ逆立つ。

 ……というか、だ。


「妖怪、だよな? お前は大丈夫なのか?」


 大丈夫か、と言ったのは彼女の心情についてだ。ご存知の通り、夜美は陰陽師であることに異常にこだわる。なぜならそれが、幻魔となってしまった彼女が彼女であることを定義できる唯一の鎖だからだ。


「……仕方ないじゃない。人間の術師組織はだいたい陰陽師院との関係を持ってるし。陰陽師院の目を避けるには陰陽師院と敵対している組織と手を組むしかないのよ」


 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる彼女を見るに、どうやらこの関係は彼女も望んで作ったものではないらしい。



 彼女は数週間前のことを思い出す。

 独立術師として依頼を受けようと走り回ったはいいが、信用できそうな斡旋者はなかなか見つからない。

 夜美は幻魔だったとはいえ両儀宗家の出だ。生け取りにできれば莫大な報酬が期待できる。そんなわけでうかつに術師関係者に顔を晒すわけにはいかなかったのだ。

 そうやって途方に暮れていた時、夜美の前に『彼女』は現れた。そして先ほど夜美が語ったようなメリットを提示し、最終的に夜美は『彼女』の手を取ることにした。

 妖怪は気に食わない。しかし人間も信用できない。ならば、『もう一つの種族』に頼る他ないだろう。それが最終的な彼女の結論だった。



「……『彼女』は今いるかしら?」

「ヤオ様だったら境内裏の湖でくつろいでるはずッスよ。案内するッス」

「――なら、そこにいるもう一人の方にもお願いしようかしら?」


 夜美は凍てつくような殺気を境内を囲う木々の一つに向けた。凄まじい圧だ。普通の人間だったらこれだけで息ができなくなるだろう。

 そんなものを向けられて観念したのか、突如木の枝が揺れた。そして昼間ではむしろ目立ってしまう黒い装束を着た男が姿を現す。


「もー! 春水さんダメっスよ! 夜美ちゃんはヤオ様のお客人なんスから!」

「……そいつとは手を組んでまだ日が浅い」

「だからひっそり監視してたと?」

「……肯定」


 その二十代後半にも見える男は目を閉じながら、つぶやくようにそう答える。

 だが、そんなことは些細な問題だった。それよりももっと重要なことがある。それは……。


「忍者だ! マジモンの忍者だ!」


 闇世に紛れる黒い装束に頭に巻かれた鉢金。

 間違いない。その男は紛れもない忍者であった。


「何驚いてるのよ。忍者だったら陰陽師院にもいるわよ?」

「マジか。実在したのか忍者。えーと……あんた、名前は?」

「……答えられぬ」

亀甲春水きっこうしゅんすいさんッス! こう見えて河童の忍者なんスよ!」

「……」


 夏転はあっさりと謎に包まれた男の素性を明かしてしまった。

 えぇ……。

 これには王牙もドン引きである。身じろぎ一つしないで沈黙を守り続けている春水の姿が少し哀れに思えた。


「……と、とにかく。監視は気にしないから、さっさと湖に連れていってちょうだい」

「わっかりましたーッス!」


 夏転は元気よくそう答えると、拝殿の裏の方に走り去っていってしまった。案内とはなんなのか。

 幸い春水が無言のまま先導してくれたので、王牙たちはその後に続いていく。


「そうそう王牙。もしここで妖怪も見かけても、退治するのはやめなさい。それがこの山でのルールよ」

「……まあ、妖怪がいる組織だしな。当然そうなるか」


 妖怪。名前だけ聞くと恐ろしいイメージがあったのだが、夏転を見ているとどうにも同じ人間のように見えてならない。まあ妖怪についてはさんざん教えられたので、彼女が逆に珍しい部類なのだろう。

 そのまま王牙たちは森を抜け、自然に囲まれた広大な湖にたどり着いた。


「ここも浮世とはずいぶん違うな。あっちじゃゴミだらけで水が汚れまくってるのに」


 それに比べると、ここの水は透明感があってよく日差しを反射し、キラキラと輝いていた。ゴミは一つも見当たらず、少し覗けば色とりどりでカラフルな魚たちが泳いでいるのが見える。さらには湖にはいくつかの小島があり、そこを繋ぐように架け橋がいくつもかけられている。まるで昔教科書で見た寝殿造の庭をそのまま拡大したかのようだ。


「あ、遅いっスよー! 何してたんスかー?」

「……」

「ああ!? 春水さん! 無言で殴らないでください! 痛い! 痛いっス!」

「ああ、やっぱり声に出してないだけでストレス溜まってたのね……」


 春水は無表情のままだったが、その握られた拳は怒りで満ち溢れていた。夜美たちはその様子に若干同情してしまう。

 無理もない。出会って数分の王牙ですら殴りたくて仕方がない気持ちになってくるのだ。あれと毎日顔を合わせなければならない彼の苦労を考えると、涙が溢れて止まらない。


「ところで、その管理人ってのはどこにいるんだ? 湖見渡したけど、人っぽいのは見えねえぞ?」

「……もっと水辺に寄れ」

「どういう意味だ?」


 疑問を口にしながら、とりあえず足を進めた。

 特に変化はない。しかしもう一度春水に聞こうと思ったその時、ふと王牙は目の前の水面にいくつもの泡が浮かんできていることに気づいた。

 それを不思議に思い、水の中を見ようと目を凝らす。

 ――その時だった。目の前水面から勢いよく何かが飛び出してきた。

 ……ついでにその水しぶきで王牙の体をぐっしょり濡らした。

 謎の影はそのまま王牙の頭上を飛び越えると、空中で一回転し、その美しい尾鰭を翻す。

 ――そして顔面から地面にグシャッと激突した。


「へべぎゃっ!?」

「……」

「……」

「……」

「や、ヤオ様ー!」

「ふぇーん! 痛いよ痛いよー!」


 ……いやどう反応すればいいと?

 池から飛び出してきたのは、美しい顔立ちの人魚だった。

 彼女を一言で言い表すなら、竜宮城の乙姫だ。

 顔立ちからして王牙たちとおそらく同年代。真珠色に光り輝く長い髪。海の底の景色を思わせるような、さまざまな色が混ざったマーメイドドレス風の着物が目を惹く。そしてその髪の一部で輪っかを作り、頭上に乗せるという奇妙な髪型をしていた。王牙は知らないことだが、その髪型の正式名称は飛仙髻。仙女や天女などの典型的な髪型の一つとされているものである。

 そんな外見だけなら見惚れてしまいそうな人魚が、夏転に支えられて涙目になっている。王牙はこの組織が別の意味で大丈夫なのか不安になってきた。


「だから成功率半々ぐらいなのにカッコつけようとするのやめたほうがいいって言ったのに……」

「だ、だって第一印象が全てを決めるってよく言うじゃないですか! この前読んだ本にもそう書いてありました!」

「タイトルは?」

「『猿でも友達百人できる隠キャコミュニケーショントレーニング』です」

「……で、管理人はどこなんだ?」

「あれが今後の生命線になるのを認めたくないのはわかるけど、現実を見なさい」


 夜美は気がつけば遠い目をしていた。取引相手としてあの人魚を選ぶなんて、いったいどれだけの苦悩を抱えたのだろうか。その心情は察するに余りある。

 人魚はその後ようやく落ち着きを取り戻したようで、歩いて王牙たちの前にやってきた。歩いて、というのは比喩ではない。いつのまにか尾鰭が人間の足に変わっていたのだ。しかし夜美の反応は特にない。まあ妖怪なのだし、これぐらいできてもおかしくはないのだろう。


「ようこそ皆さん、八百神社へ。そちらのお方は初めてなので、改めて自己紹介を。私、この町を守護している者、八百比丘尼(やおびくに)と申します」

「お、おう……我道王牙だ。……その、大丈夫か?」

「……お気遣いなく」


 彼女は先ほどの痴態を思い出したのか、顔を若干赤らめて伏せてしまう。それっきり気まずくなり、お互いの言葉が続かなくなってしまった。


「ま、けっこう有名な歩き巫女よね。まさか精霊になってるとは思ってなかったけど」

「……そうなのか?」

「……あなたは今度異類の勉強をしたほうがよさそうね」

「お兄さんはあんま頭よくないんスねー」

「……無知は罪なり」

「るせぇ。まだこの業界入って一ヶ月だぞ? よってたかってトーシロいじめてんじゃねえよお願いします」


 なんかだんだん自分が情けなくなってきた。この夏転にバカと言われる俺っていったい……。

 夜美はそんな王牙に呆れながら、ちゃんと八百比丘尼について解説をしてくれた。


 八百比丘尼とは人魚の肉を食べたことで不老不死となった少女のことである。本名は知らない。そこは重要でないらしい。

 彼女が人魚の肉を得たきっかけは父であった。入手経路は伝説によって異なるが、彼はある日偶然人魚の肉を手に入れる。しかし家に置いておいたところ、その娘が肉をつまみ食いしてしまったのだ。

 そうやって意図せず十六歳で不老不死になった彼女は村で暮らし続けたが、知り合いが次々死んでいく孤独感と周囲の化け物を見るような目に耐えきれなくなり、出家して旅に出てしまう。そして八百年日本を彷徨ったのち入定……つまりは永遠の瞑想に入ったことで彼女は『八百比丘尼』と呼ばれるようになったという。

 これが八百比丘尼伝説の大まかな内容である。


「……で? その永遠の昼寝中の八百比丘尼がなんでこんなとこにいるんだ?」

「ヤオでいいですよ。その、私の話が広く伝わったせいか信仰心が送られるようになって……いつのまにか精霊として復活していたんです。それも話が誇張されたせいでまんま人魚の姿で。それでこうやって自分の神社を建てて過ごしているというわけです」

「精霊?」

「妖怪と同質でありながら正反対の存在ね。この国では国津神とも呼ばれて、天津神同様神として祀られているわ。妖怪が人間の負の感情によって生まれるのに対して、精霊は正の感情から生まれてくるの。だから反対の存在ってわけ」

「ま、人間の感情で生まれるって点じゃどっちも似たようなもんっスね。だから精霊が忌み嫌われるようになれば妖怪に堕ちますし、妖怪も信仰されるようになれば精霊になるっス。実際河童や鬼の一部が精霊になった例もありますし。あとは座敷わらしなんかもイメージしやすいかもっス」


 夜美と夏転の説明を聞いて、とりあえず王牙は精霊がどういうものなのか理解した。

 妖怪の反対の存在。なるほどわかりやすい。

 しかしここでふと新たな疑問が浮かび上がってくる。


「その国津神と天津神ってのはなんなんだ? どっちも神様じゃねえのか?」


 どっちも神扱いされているのなら同じなのではないか?

 なんとなく、あのジェネシスとヤオが同格ではないということはわかる。しかしそれは力の差であって、別種族として分ける必要はないはずだ。

 その疑問に対して夜美とヤオはわかりやすく解説してくれた。


「さっきも言った通り、国津神というのは人間の感情によって生まれてくるわ。言ってしまえば自然や物、人間のような元々神ではなかった存在が信仰されることで変質して生まれるの。だけど彼らは天津神ほどの力を持たないし、海外では神と認められていないことも多いわ。だから国際的には『精霊』と呼んでいるの」

「対して天津神は世界の意思によって生まれた存在のことです。各国の神話に出てくるような主要な神々はたいていこの分類です。日本で言うとイザナギやイザナミ、アマテラスなどが有名ですね。彼らは妖怪や精霊のように人間の感情に依存せず、世界に依存しています。だから世界を守り、存続させていく使命を持っているのです。国際的に神と見なされるのはこっちだけですね」

「人間を作ったのも天津神よ。だから人間の感情には妖怪や精霊を生み出す力があるのかもしれないわね」


 ちなみに、神話では神同士の結婚によって新たな神が生まれることもあるが、あれも世界の意思が関わっている。世界が認めなければいくら神同士が性交をしようと、子どもは生まれないのだ。


「世界を守るって……じゃあジェネシスが来た時に助けに来てくれりゃよかったのに」

「無理よ。だって神々はもういないんだもの」

「はっ?」


 唐突の爆弾発言に思わず王牙は目を見開いた。

 思わず夜美の方を見る。巫女として絶対に言ってはいけない発言だったと思うのだが、彼女は気にした様子はない。いつも通り冷たい表情だった。


「言ったでしょ? 神は人間ではなく世界に依存しているって。この世に伝わっている神話の世界、言ってしまえば旧世界はもう滅んでいるのよ。今私たちがいる地球は新世界と呼ぶべきもので、滅んだ旧世界の断片が融合して生まれたものよ」

「だから旧世界の歴史が神話として色々な土地に伝わっているわけです。もっとも、神々は完全に滅んだわけではありません。今もこの地球の裏にある旧世界の名残りが残っている世界で力を失いながらも、大人しく暮らしています」

「……もしかして、そこが『幻想楽土ファンタズム・ファンタジア』ってとこなのか?」


 王牙の問いかけに二人は頷いて答えた。

 『幻想楽土』。その名前だけはやけに記憶に残っていた。たしか、あのジェネシスが封印されていた場所だったはずだ。もっとも、この前倒したのは分霊なので、本体は今でもそこにいるのだろう。


「『幻想楽土』は浮世とは完全に隔離された別次元にある世界で、お互いに干渉することはほぼ不可能になっているわ。だから人間が祈ってもそれは神には届かないし、神が加護を人間に与えることもできないってわけ」

「あー、困った時に祈っても助けてくれないのはそういう理由なのか。納得」


 結局、昔はどうであれ、都合よく助けてくれる神など今のこの世には存在しないのだ。自分を助けられるのは自分しかいない。ジェネシスという本物の神と出会ったことで、王牙は別の神に少し期待していたのだが、改めて己を鍛える覚悟が固まったのであった。


「国津神と天津神の説明はこれでいいわね? ならさっさと本題に入るとしましょうか。私、あまりここが好きじゃないし」

「元陰陽師だった夜美さんには複雑な場所かもしれませんね。ではお話は本殿でするとしましょうか」


 ヤオは精霊とはいえ、夏転や春水のように妖怪の部下を抱えている。だから夜美としては居心地が悪いのだろう。珍しく顔を少し歪めて嫌そうな表情をさらけ出していた。

 ヤオもそれを理解しているのか、仕方がないと言うように苦笑いを浮かべていた。

 そうして王牙たちはヤオに連れられ、来た道を戻っていくのであった。

 

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