戦い
海達は、市場での買い物を終えるところだった。
「買い物は、済んだ?」
「うむ」
「大丈夫だよ」
「わかった。帰ろう」
海達は、城門を出て、集落に向かった。
海達が、出発した後、オニキスの仲間が冒険者を装い、海達の後を付けた。
その後を、領主の私兵50名が後を追った。
海達は、普段なら自分達しか通らない道に来ても
冒険者が多くいる事に不安を感じた。
「ミウ、リリ、何かおかしいね」
「そうじゃのぅ、この辺りに人がいる事が不思議じゃ」
「ねぇ、海、私達、狙われているんじゃない」
「うん、そうだね。シンギは先に戻ってくれる?
山羊やコッケイが暴れたら大変だから」
「わかりました。ご武運を」
シンギは、荷馬車を曳いて先に集落に戻った。
「これから、どうするの?」
「うん、取り敢えず魔物の森の所迄、行こう。
それでも付いて来るなら討って出よう」
「了解じゃ」
内心、戦う事になりそうだなと思った。
結局、魔物の森に近づいても冒険者達は付いてきた。
「確定だね」
「そうじゃのぅ」
「戦う準備をしよう。相手の人数が分からないから遠慮は無しで」
「いいの?」
「うん、殺されたくないから」
「海よ、そろそろのようじゃ」
海達に、1組の冒険者が近づいてきた。
「おい、ガキ!殺されたくなかったら黙って従い、抵抗せずに女を渡して大人しくしろ」
「嫌です」
「なら、死ぬ事になるぞ。
それでもいいのか」
「負けるとは限りませんから」
「口の減らないガキだ。
仕方ない、死ね」
男は海に切り掛かった。
海は剣を抜き、相手の腕を飛ばした。
「ウギャァァァア!!」
男は叫び、のた打ち回った。
その様子を、見ていた冒険者達も集まって20人程になった。
また、後方からも兵隊がやって来て、相手の人数が70人程に膨らんだ。
「多くない?」
「うん、多いね。本当に僕を殺して、ミウ達を攫うつもりだね」
「ハハハ、無理じゃ。わらわは負けぬわ」
海達が会話をしていると兵隊の間からオニキスが現れた。
「貴様は私に恥を搔かせたんだ。ここで死んで詫びろ」
「そちらが勝手に絡んできたんでしょ、知りませんよ。
それに、死にたくもありません」
「何を言うか、この人数相手に歯向かって勝てるとでも思っているのか」
「やってみないと分かりませんよ」
「なら、死ね」
魔法使い達は遠距離から攻撃を仕掛けてきた。
「ファイヤーアロー」
「ウインドアロー」
リリは火の壁で防いだ。
「ファイヤーウォール」
海が魔法を放つ。
「エクスプロージョン!」
冒険者達は爆発と共に吹っ飛んだ。
ミウも攻撃を始めた。
「ダークアロー」
先頭にいた冒険者達に突き刺さった。
敵の魔法使いが海を狙ってきた。
「ウインドエッジ」
複数の風の刃が、海に襲い掛かって来たが、海も魔法で返した。
「ウインドストーム」
同じ属性の風を起こし、攻撃を無効にした。
オニキスの兵士達がミウとリリに迫り、切りつけて来たがかわした。
そして、ミウとリリは、敵の首を飛ばしながら、敵に近づいて行った。
海も、2人が敵に接近したので剣で攻撃を始めた。
海、ミウ、リリは無双して回り、70人程いた敵の数は
既に10人を割っていた。
「何故だ!何故、俺が負けるんだ!」
「オ、オニキス様、お逃げ下さい。
ここは我々が死守いたします」
「おのれぇーーーこのガキが!
このままで済むと思うなよ」
オニキスが、馬に乗って逃げようとした時に
ダイゼンの街の方から20騎の馬が走って来た。
「ハハハハハ、援軍だ!貴様は絶対に逃がさん」
オニキスが、高笑いをしている間に騎馬は到着し、
その中から、1人の男が海に近づいてきた。
「まずは、剣を収めてくれないか。
私の名はナハマ ドラ シジコだ」
「父上、こ奴らは私の兵を根絶やしにしました。
すぐに捕らえて下さい」
「・・・・・・」
「父上・・・・」
ナハマは海の方に向かい話掛けた。
「名を教えてはくれないか?」
「僕は海です」
「そうか・・海とやら、この状況を説明して貰えまいか」
海は、後の事はどうなろうと構わないと思い、すべてを正直に話した。
「僕が初めてダイゼンの街に行った時にオニキスと仲間のチンピラに
絡まれて、お金を全部置いて行けと言われました」
海は、この後、オニキス達に奴隷にされかけた事。
今日、死にたくなければ女を置いて行けと言われた事。
70人で殺しに来た事を話した。
「そうか、オニキス、弁明はあるか」
「父上、違います。こいつは殺人犯です。
周りを見て下さい、こいつが犯人です」
「海よ、私に付いて来てくれないか」
「はい・・・・・」
「全員、戻るぞ」
海は黙ってナハマに従った。
「海・・・」
「海よ、何故じゃ、何故なのじゃ」
「ミウ、リリ、ちょっと行って来るよ。
集落の事をお願いね」
海は2人に微笑み、集落の事を頼んだ。
その後、馬に乗せられてダイゼンの街に連れていかれた。
リリは、その光景を茫然と見つめ、
ミウは、何物にも代えがたい物を失った様な虚無感に襲われていた。
時間が経ち、2人はゆっくりと集落に向かって歩き始めた。
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