20話 残った聖女の権能、『封印』の力の代償
ルアナとの話し合いを終えた翌日。
私は礼拝のために、初代聖女が祀られている聖堂へクラヴィスとともに足を運んだ。
「こちらが邪神を封じた初代聖女様の御像です。彼女の存在があったからこそ、この国が今も存続していると言っても過言ではありません」
「……偉大な方なのね。私も少しでも彼女に近づけるように励まなくちゃ」
私は初代聖女の姿を模した石像の前に立ち、ひざまずいて祈りを捧げた。
この祈りが、いつか彼女のように人々を救う聖女となるための糧となるように。
祈りを終え、私は立ち上がってクラヴィスを振り返った。
「クラヴィス、本当の聖女として認められるには、あと二つの権能が必要なのよね」
「ええ。『治癒』と『封印』。それらの力が揃ったとき、初代聖女のような……大聖女になれるとされています」
クラヴィスは、いつも通りの穏やかな微笑みを浮かべて答えてくれる。
しかしその言葉に、先日聞いたルアナの情報とのわずかな違和感を感じた。
「四つではなくて? 確か『召喚』という力もあると聞いたのだけれど」
その言葉を口にした瞬間、クラヴィスの微笑みが凍りついた。
どこか悲しげに、そして沈痛な色を帯びて、淡い緑の瞳が微かに揺れる。
「……どちらでそのお話をお聞きになりましたか?」
「ええと……風の噂で、少し……?」
私を推し量るように、クラヴィスがじっと視線を注いでくる。
今までに見たことのない彼の真剣な眼差しに、思わず気圧されそうになった。
「ええ、確かに聖女の権能には『召喚』が存在します。しかし、この力は術者の命を削る力です。寿命にも関わるほどに、生命力を捧げることになります」
「命を……」
「『聖域』『治癒』『封印』さえあれば、十分に聖女としての役目を果たせます。『召喚』のことは忘れてしまうのが賢明でしょう」
まさか四つ目の権能が、それほどまでに危険なものだとは知らなかった。
せっかく教えてくれたルアナには悪いけれど、この件は胸の奥に秘めておこう。
「それでは、残るは二つの権能ね。優先するべき権能の順序はあるのかしら?」
「まずは『治癒』を目指すことになるでしょう。『封印』は邪神が眠る地で祈りを捧げることで発現するため、他の権能のように特別な契機を必要としませんから」
「わかったわ。何か自分にできることがないか、また手がかりを探してみるわね」
私は初代聖女の像を見上げて、改めて決意を固める。
その横顔を見つめていたクラヴィスが、静かに声をかけてきた。
「エリシア様、お体の具合はいかがですか?」
「え? ええ、十分に休ませていただいたので、体調はすでに元の通り元気になりました。いつもお気遣いいただきありがとうございます」
「……そうですか。もし何かあれば、いつでもすぐに私へ相談してください。レイフには話しづらい内容もあるでしょうから。その際は、私があなたの支えになります」
彼は聖職者らしい、見るものを安心させる表情で微笑んでみせた。
私はそれを彼の純粋な優しさだと受け止め、何も疑わずに微笑みを返したのだった。
ご愛読ありがとうございます。
★評価・ブックマーク・リアクション・感想などを頂けると、今後の投稿の励みになります。




