17話 淡白な食事、妹ルアナの処遇
三日間の眠りから覚めたばかりの体を労るため、まずは食事を摂るよう勧められた。
卓上には、新鮮な野菜を主軸とした聖教会特製の料理が並べられている。
「あら……?」
一口運んでみたものの、味付けが淡白すぎるように感じられた。
決して不快な味ではないのだが、少し物足りないような気がする。
「エリシア、味付けに違和感があったか?」
「ううん! そんなことないわ」
向かいの席では、レイフが同じように食事を進めていた。
彼は私との時間を求めてくれるようになり、食事の席もこうして共に囲むことになったのだ。
「意識が戻ったばかりのせいかしら……。薄味なのも、きっとお腹を労るための配慮よね」
普段の聖教会の食事は、とても美味しく洗練されている。
早くかつての味を楽しめるよう、回復に努めようと心に決めたのだった。
「目覚めた直後だから無理もない。体調が万全になった暁には……いずれ、私の好物である魚料理を用意させよう」
「レイフは魚が好きなのね。また一つ、あなたの新しい一面を知ることができたわ」
「このようなことで君が笑ってくれるのなら、いくらでも話そう。私達には、これから多くの時間を共に過ごすのだから」
穏やかな談笑とともに食卓が片付けられると、レイフはわずかにためらうような様子で言葉を紡いだ。
「そうだ、このことを共有しておこう。……君の妹の処遇が決定した」
「ルアナの……」
胸の奥が不意に脈打つ。
私は姿勢を正し、彼の次なる言葉を待った。
「神殿における一定期間の労働奉仕を経て、爵位が彼女の元へと返還される運びとなった。実の父母が捕縛された現状、実質的に君か妹が家督を継承する形となる」
「そうなのね。私には聖女としての責務があるから……可能であればルアナに家を支えてもらいたいのだけれど」
しかし、これまでの彼女の自由奔放な振る舞いを顧みると、男爵家の事業を円滑に牽引できるとは到底思えなかった。
その上、不祥事を起こした直後の家格を立て直す苦労は、筆舌に尽くしがたいものになるはずだ。
「ねえ、レイフ。ルアナと直接面会できないかしら?」
「君が、あの妹と……? 一体なぜだ?」
彼は怪訝そうな表情を浮かべ、私の真意を測りかねるように視線を巡らせた。
私は手元の紅茶の液面を見つめ、過去のルアナの動向を脳裏に浮かべながら、複雑な笑みをこぼした。
「あの子は少し奔放が過ぎる面もあるけれど、本来は優れた資質を備えていると思うの。だから、可能であれば、私の助言をあげたくて」
私を遅刻させた悪戯は、流石に行き過ぎだと今でも少し思う。
けれど、もしかしたら彼女の側にも、私に対する割り切れない不満が存在したのかもしれない。
何より、本来の歴史であればルアナこそがこの世界の中心となる存在なのだ。
可能であるならば、歪んでしまった道筋を正し、然るべき場所へと戻してあげたい。
「わかった。君の希望というのなら、場を調整しておこう」
彼は渋々といった様子ではあったものの、私の懇願を受け入れてくれた。
こうして私は、本来の物語の中心人物であるルアナと、再び対峙する機会を得ることとなったのだ。




