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【Amazonで発売中!】妻殺しの冤罪で七年間独房に閉じ込められた俺、脱獄後にダンジョンガチャで復讐を果たす  作者: 月瀬 リュカ


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第39話 骨の森



 魔物たちが一斉に冒険者へ飛びかかった。


 俺は左手を前へ向ける。


 距離はある。


 《氷塊》では止めきれない。


 魔力を集め、細長い氷の芯を作った。


「《氷槍》」


 氷の槍が灰色の霧を切り裂く。


 先頭を走っていた魔物の脇腹へ突き刺さった。


 白い骨の板を砕き、そのまま身体を地面へ縫いつける。


 狼に似た魔物だった。


 灰色の毛を覆うように、肋骨や頭蓋骨の破片が貼りついている。


 墓喰い大蜥蜴と同じ。


 骨を鎧として利用している。


《骨鎧狼を初めて討伐しました》


《ガチャ券を一枚獲得しました》


《灰霧谷討伐記録:3/?》


《所持ガチャ券:三枚》


 群れの半分が、俺へ顔を向けた。


 黄色く濁った目。


 骨の隙間から黒い涎が流れている。


「こっちだ!」


 声を上げ、剣を骨の柱へ叩きつけた。


 硬い音が霧の中へ響く。


 六体の骨鎧狼が、冒険者たちから離れた。


 こちらへ向かって走ってくる。


 残る七体ほどは、まだ三人を囲んでいる。


 一度にすべてを引きつけることはできなかった。


「倒れている仲間を運べ!」


 生き残っている冒険者の一人が、こちらを見た。


「だが、あんた一人で――」


「早くしろ!」


 骨鎧狼が迫る。


 話している時間はない。


     ◇


 先頭の一体が地面を蹴った。


 巨大な肋骨の間を縫い、正面から飛びかかってくる。


 首を狙って剣を振る。


 刃が白い骨へ当たった。


 浅い傷。


 首まで届かない。


 骨鎧狼の爪が胸へ迫る。


 身体を横へずらす。


 爪が革鎧の表面を引き裂いた。


 すれ違った魔物の後ろ脚へ剣を振る。


 そこには骨の鎧がない。


 刃が肉へ入った。


 骨鎧狼が地面を転がる。


 追撃しようとした瞬間、左右から二体が来た。


 一体は頭。


 もう一体は脚。


 剣を振る余裕はない。


 俺は正面へ踏み込んだ。


 頭を狙った個体の下へ潜り込む。


 腹へ肩をぶつける。


 巨体が持ち上がった。


 そのまま、脚を狙っていた個体へ投げつける。


 二体が衝突した。


 白い骨の板が砕ける。


 俺は先ほど脚を斬った個体へ向かう。


 立ち上がろうとする首の下へ剣を突き込んだ。


 二体目。


 背後から唸り声。


 《危険察知》に従い、身体を沈める。


 骨鎧狼が頭上を飛び越えた。


 背中にも骨の板が並んでいる。


 だが、腹は無防備だ。


 下から剣を振り上げる。


 灰色の毛と肉を深く切り裂いた。


 三体目。


 残る三体が、俺を囲むように広がった。


 骨鎧狼はただ突っ込んでくるだけではない。


 互いの位置を見ながら、一体ずつ距離を詰めている。


 正面の一体が低く唸る。


 左右の二体が動いた。


 俺は足元へ視線を落とす。


 巨大な獣の骨が、地面から何本も突き出している。


 狭い場所なら、同時に来られない。


 肋骨の間へ入った。


 骨鎧狼が追ってくる。


 一体目は通れる。


 二体目も身体を横にすれば入れる。


 三体目は、先の個体に塞がれている。


 先頭の骨鎧狼が口を開いた。


 牙が迫る。


 俺は左手を地面へ向けた。


「《冷気》」


 前脚が踏み込む場所だけを凍らせる。


 骨鎧狼の脚が滑った。


 頭部が下がる。


 骨で覆われた額へは攻撃しない。


 開いた口の中へ剣を突き入れた。


 刃が喉まで届く。


 四体目。


 剣を引き抜く前に、後ろの個体が死体へ噛みついた。


 仲間ごと押し込んでくる。


 剣を手放すわけにはいかない。


 俺は死体を蹴った。


 骨鎧狼の身体が後ろへ動く。


 剣を抜き、すぐに左へ避ける。


 敵の頭が肋骨の柱へ激突した。


 白い骨板が割れた。


 露出したこめかみへ剣を振り下ろす。


 五体目。


 最後の一体が後退した。


 逃げるのかと思った。


 違う。


 地面へ落ちた仲間の骨板を噛み取っている。


 割れた骨を、自分の首へ押しつけた。


 黒い粘液が骨の隙間から伸びる。


 新しい骨板が、魔物の身体へつながった。


「鎧を補充するのか」


 骨鎧狼が走る。


 首を守る骨が二重になっている。


 正面から斬る必要はない。


 俺は剣を構えたまま待った。


 魔物が跳ぶ。


 直前で身体を横へずらす。


 脇腹へ剣を振る。


 骨板がある。


 刃が弾かれた。


 骨鎧狼の尾が、鞭のように顔へ飛んでくる。


 左腕で受ける。


 革鎧の上から強い衝撃。


 腕が痺れた。


 骨鎧狼が着地し、すぐに向きを変える。


 今度は低い。


 脚を狙っている。


 俺は後退せず、前へ出た。


 魔物の頭へ左手を向ける。


「《氷塊》」


 尖らせた氷が、右目へ突き刺さった。


 骨鎧狼の身体が傾く。


 それでも走り続ける。


 俺は頭部を避け、横から首へ腕を回した。


 骨の板で刃は入らない。


 なら、凍らせる。


「《冷気》」


 首を覆う骨と粘液だけへ魔力を集める。


 黒い粘液が白く凍った。


 骨鎧狼が暴れる。


 爪が革鎧を掠める。


 俺は離れない。


 凍った骨板の継ぎ目へ剣を振り下ろした。


 一撃。


 亀裂。


 二撃目。


 骨板が割れた。


 三撃目で首を断つ。


 六体目。


     ◇


 冒険者たちを見る。


 二人が倒れた仲間を引きずり、肋骨の陰へ移動させている。


 だが、残った骨鎧狼が追っていた。


 七体。


 俺は走る。


「後ろだ!」


 冒険者の一人が振り向く。


 長剣を持った男。


 もう一人は短い槍を構えている。


 二人とも傷だらけだった。


「倒れている者を守れ」


「一人で戦うつもりか?」


「動けるなら、横から刺せ」


 俺は群れの正面へ入る。


 骨鎧狼たちが足を止めた。


 先ほど六体を倒した俺を警戒している。


 だが、退く気はない。


 一体が空へ向かって吠えた。


 霧の中から、別の唸り声が返ってくる。


「仲間を呼んでいる!」


 槍の男が叫んだ。


「なら、来る前に倒す」


     ◇


 七体が一斉に動いた。


 俺だけではない。


 二体が負傷者へ向かう。


 長剣の男が間へ入った。


 骨鎧狼の爪を剣で受ける。


 もう一体が横から飛ぶ。


 槍の男が脇腹を突いた。


 骨板に阻まれ、穂先が滑る。


「腹を狙え!」


 叫びながら、正面の一体と剣を合わせる。


 牙が鋼鉄の刃を噛む。


 強く引かれる。


 別の一体が背後へ回る。


 俺は剣を奪い返そうとせず、自分から魔物へ近づいた。


 左手で上顎を掴む。


「《氷膜》」


 刃を覆った冷気が、口内へ広がる。


 舌と歯茎が凍りつく。


 噛む力が弱まった。


 剣を引き抜き、口の中へ突き刺す。


 七体目。


 背後から爪。


 前へ転がる。


 革鎧の背中が浅く裂けた。


 起き上がりながら、追ってきた前脚を斬る。


 骨鎧狼が倒れる。


 首の骨板へ足をかけ、動きを止める。


 同じ場所へ二度剣を振り下ろす。


 八体目。


 右から二体。


 一体が低く走り、もう一体がその背中を踏んで跳んだ。


 上下から同時に来る。


 俺は左手を向ける。


「《氷塊》」


 狙うのは上の個体ではない。


 下を走る骨鎧狼の前脚。


 尖った氷が関節へ刺さる。


 脚が折れた。


 足場を失った上の個体が、空中で体勢を崩す。


 俺は頭部を避け、腹へ剣を突き立てた。


 九体目。


 脚を傷つけた個体が地面を這う。


 それでも牙を向けてくる。


 首の付け根へ剣を入れる。


 十体目。


《骨鎧狼を十体討伐しました》


《ガチャ券を一枚獲得しました》


《所持ガチャ券:四枚》


 残り三体。


 長剣の男が一体を押さえている。


 槍の男も、負傷者へ向かった個体の腹へ槍を刺していた。


 最後の一体は、俺へ走ってくる。


 それまでの個体より大きい。


 骨板も厚い。


 群れを率いていた個体だろう。


 俺は剣を構える。


 骨鎧狼が跳んだ。


 正面から受ければ押し倒される。


 避ければ、背後にいる冒険者が狙われる。


 左手へ魔力を集める。


 氷の芯。


 その周囲へ氷を重ねる。


 生成には時間がかかる。


 骨鎧狼が迫る。


 まだ完成していない。


 俺は一歩だけ横へ動いた。


 魔物の爪が左肩を掠める。


 革鎧が裂け、血が流れた。


 それでも魔力を切らさない。


 氷の槍が完成する。


「《氷槍》」


 至近距離から放った。


 氷槍が骨鎧狼の胸へ突き刺さる。


 白い骨板。


 灰色の毛。


 肉。


 すべてを貫き、背中から先端が飛び出した。


 巨体が俺の横を通過する。


 地面へ落ち、骨の柱へぶつかった。


 動かない。


 十一体目。


 長剣の男が戦っていた個体へ近づく。


「離れろ!」


 男が横へ跳ぶ。


 骨鎧狼の首へ剣を振り下ろす。


 一撃では骨板を割れない。


 二撃目。


 亀裂。


 長剣の男も反対側から剣を突き入れた。


 骨鎧狼が倒れる。


 十二体目。


 槍の男は、最後の個体に押し倒されていた。


 槍を横向きにして、牙を防いでいる。


「もう保たない!」


 俺は走った。


 骨鎧狼の後ろ脚を斬る。


 身体が傾く。


 槍の男が下から穂先を突き上げた。


 腹へ深く入る。


 俺は露出した首の下へ剣を振った。


 十三体目。


     ◇


 骨の森が静かになった。


 長剣の男が、その場へ座り込む。


「助かった……」


 槍の男はすぐに倒れている仲間へ向かった。


「息はある。だが、腹を深く裂かれている」


 地面へ横たわっているのは若い男だった。


 革鎧の腹が破れ、血で濡れている。


 俺は近づく。


「回復薬は?」


「もう使い切った」


 傷を確認する。


 深い。


 このままベルガンまで運んでも、途中で死ぬ可能性が高い。


 俺は《収納》から下級回復薬を一本取り出した。


 腰の革袋から出したように見せる。


「飲ませろ。残りは傷へかけろ」


 槍の男が小瓶を受け取る。


「いいのか?」


「死なれれば、助けた意味がない」


 負傷者の口へ少量を流し込む。


 残りを腹の傷へかけた。


 開いていた傷が少しずつ塞がる。


 完全には治らない。


 だが、出血は弱まった。


「本当に助かった」


 長剣の男が立ち上がる。


「俺はダリオ。こっちはセイン。倒れているのがロルフだ」


「シュナイダーだ」


「一人で谷へ入ったのか?」


「ああ」


 ダリオの顔が強張る。


「この先へ行くつもりなら、やめた方がいい」


「何がいる」


「分からない」


 ダリオは骨の森の奥を見た。


「霧の中に、巨大な何かがいる。俺たちは姿を見る前に、骨鎧狼の群れに追われた」


 霧視を使う。


 巨大な肋骨のさらに奥。


 灰色の霧が、不自然に渦を巻いている。


 その中心で、岩のような影が動いた。


 ゆっくり。


 地面を這う形。


 ギルドの掲示にあった素材を思い出す。


「岩殻蛞蝓か」


 だが、影は一つではなかった。


 小さな岩のような塊が、霧の中をいくつも動いている。


 十体以上。


 さらに、その奥には何倍も大きな影がある。


「三人で町へ戻れるか」


 俺が尋ねると、ダリオが頷いた。


「ロルフを二人で運べば何とか」


「なら、すぐに戻れ」


「あんたは?」


 俺は骨鎧狼の魔石を回収する。


「先へ進む」


「今の戦いを見たあとで止めても無駄だろうが……死ぬなよ」


「お前たちもな」


 三人が骨の森を離れる。


 俺は骨鎧狼の状態のいい牙と骨板を切り取った。


 魔石は十三個。


 すべて《収納》へ入れる。


《所持ガチャ券:四枚》


 霧の奥から、湿ったものが地面を擦る音が聞こえた。


 岩に見えた影が、一つずつ近づいてくる。


 灰色の霧の中から現れたのは、背中を厚い石殻で覆われた巨大な蛞蝓だった。


 その後ろ。


 骨の森そのものを押し倒しながら、さらに大きな影が動いている。


 俺は鋼鉄の剣へ氷膜をまとわせた。


「次だ」


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