アマチュアは突撃する。
我音が心廻と確信した俺は休み時間になったら、即七理のクラスと生徒会室がある上階に向かった。
上階はゲートがあり、許可なく入ることは不可能になっている。
だが今の俺には関係なかった、とにかく真相を知りたいという気持ちだけで俺は動いてしまっていた。
……それが何故なのか俺には分からなかった。
「権利行使……扉を開ける権力の付与」
そうしてゲートを無理やり突破し。
教室の前までくると……。
「てめぇ……! 俺から逃げる気か……? 卑怯な手で俺を倒しやがって……!」
「へー? 私に勝つつもりなんだ? でも不意打ちとはいえ、準強化殴打で一撃で沈む奴が勝てるとは思えないけどねー?」
「2人ともやめなさい……私達は学園のトップであり国王の護衛……もっと正しいプライドを持ちなさい……!」
そんな喧嘩に見えるが楽しそうな風景を見て俺の心が何故かドキッとした……。
それは多分お化けを見た時の様な恐怖心……それを……何故この状況で抱いて居るのかも分からなかった。
それでも一つだけ言えるのは……心廻を今すぐ、ここから連れ出したいという感情だった。
そうして扉の前で恐怖心に支配され立ち尽くして居ると……。
「あれ? 亡!? 何でここにいるの!?」
妹の藍が奥のトイレから出てきて俺に声をかけてきた。
「亡……?」
「……ふふっ」
その瞬間、姉さんと心廻が反応し、何故か心廻は少し妖艶な色気を感じさせる笑みをして俺は更に恐怖心が強くなった。
この時、俺から見ると仮面はつけていなかったのだが……どうも周りは心廻の笑みに気付いていないようだ。
「亡……だ?? あの雑魚が何でこんなところに居るんだよ!!!」
龍波が声を荒げるが、そんな事はどうでもよかった。
今の俺の頭にあるのは心廻の事だけだった……。
「お前に話はない……」
「あ??? 何だと?」
「亡……貴方……ここは立入り禁止なのにどうやって……!」
「姉さんも龍波も少し黙れ……! 俺はそこの我音に話がある!」
今の俺はとにかくこの場に居たくなかったはずが……。
とにかく心廻に何があったのか聞ければ、それでいいとしか思わなくなってしまっていた。
「へー……? 私に話って何かな?」
「……俺はお前に決闘を申し込む……お前が負けたら七理から抜けろ」
「……いいけどそれって……私に何かメリットがあるのかな……?」
「俺が七理に入る……これでどうだ?」
「亡!? 貴方何言って……?」
正直、今の俺には立場とか、状況とかはどうでもよくなりすぎていた。
「おいおいおいコイツはお笑いだな!? 俺に負けた雑魚が、俺を倒した女と戦う上に、負けたら七理に入るだ?」
「そうだよお兄ちゃん!!! 亡は弱いんだから変な事言ってないで早く帰って!!!」
藍が珍しく声を荒げる。
それによって俺は冷静さを取り戻し、焦りから面倒事を自分から引き寄せたと……思ったが。
分かっていたのだ……この俺の感情も……今回のコイツの罠も……。
結局、心廻は俺をおびき寄せるために俺に弱点を作り出したのだ。
そう俺に再び誰かと親密になる光を、そしてその光を失う恐怖を……。
まんまとコイツに人生を彩り直されたのだ。
そうして……冷静になった俺は……。
「悪かった……今のは忘れてくれ、だけど一つだけ言ってから帰る……いつもの場所で待ってる……」
「おい! 逃げるのか? 勝手に入ってきて場を荒らして? 逃がすかよ……!?」
龍波が俺を静止しようと近づいてくるが、それを心廻……我音が止める。
「待って……いいよ……さっきの発言は忘れてあげる……だけど……いつもの場所って何処かな? 私達初対面だよね?」
そう冷酷な言葉を言われた俺は……。
「……ふぅ〜……分かったよ……来なくていいよ……だけど、俺は必ずお前を取り戻す……それだけは覚えておけ……」
□ □ □
そうして自分のクラスがある階まで戻りトイレに駆け込む。
「はぁ……馬鹿だ……俺は……」
これからどうするかなんて何も考えてない。
なにせ俺は、やるべき事から逃げてきたせいでとっくにこの世界のプロじゃなくアマチュアだからな……。




