アマチュアは悪夢を見せる。
俺は今実家に帰ってきていたが……厄介な事になっていた。
それは……七理である俺の姉妹と、幼馴染姉妹の声が実家の中から、聞こえてきたので入るのを躊躇っている。
俺が実家に帰ってきた理由は……家系図から俺を消してないかの確認だ。
ちゃんと合格して、学園生活をしている以上それはないだろうが、いつまでもその危機があっても困る。
だから完全にリスクをゼロにする為交渉しに来た。
「困ったもんだな……はぁ……仕方ない、あの手を使うか……それとも帰るか……」
幸いここは田舎で、実家と幼馴染姉妹の家そして、数軒の家、そして森に囲まれたのどかな村と言ったところだ。
まあ学園からそこまで遠くないうえに、実は王都も近いので、そこまで不便でもない。
だから今学園に一旦帰っても、そこまで問題はないのだが……。
取り敢えず準備だけはしようと、飲み物を飲んで、俺は一旦実家と学園の中間辺りまで引き返して様子を見ようとすると、扉が開いてしまう。
「あれ? 亡! 亡も帰ってきたの?」
妹の藍に見つかってしまった。
「あー……そうだな……」
その声を聞きつけたのか姉と幼馴染姉妹もやってくる。
「亡……貴方……良く帰って来れたわね……」
「ちょっとお姉ちゃん……そんな言い方ないでしょ? 亡は弱くていいの!」
「藍、それじゃいけないのよ? あの学園は、実力がないものには厳しい……なら実家に帰ってこないで、とにかく強くなってもらうのが本人のためなの」
その通りだな、正論過ぎて言葉も出ないぞ姉さん。
まあ……だからって言う通りにはしないが……。
「まあ……それは間違いねぇな……だがどうあがいても弱者は生まれる、それが亡だったってことだろ?」
幼馴染の姉、葉森明がそう続いて肯定した。
「姉様……亡君だって頑張ればきっと強くなりますよ……まあ本人にやる気はないんですが……」
幼馴染の妹、葉森暗がそう擁護してくれるが大分苦しそうだ。
「とにかく亡、せっかくだから丁度いいわ、私が稽古をつけてあげる、来なさい」
「……あ、お断りします!」
迷いのない笑顔でそう言い、とにかく逃げ出す。
「待ちなさい……私から逃げられると思ってるの?」
「ちょっとお姉ちゃん! そんなに厳しくしなくても……」
「黙りなさい……あの子は私が育て上げ――!」
「アァァ…!!!!!」
その瞬間、森の方で男の悲鳴が聞こえた。
「姉様……」
「ああ……これは行くしかねぇな」
「亡! そこにいて! 私達七理が確認してくるから! 行くよ! お姉ちゃん!」
「……ええ……」
そうして厄介な人達は去ったが、あれは俺の囮の罠だ、これで母さんとゆっくり話ができる……。
そうあれは頭を撫でられてた時に……。
□ □ □
「はい! 亡! これ持っててよ」
「なんだ? これ?」
「これは、亡が実力を隠すのに便利かな〜と思って用意したジュースです!」
「ああ……ジュース買いに行くとか言ってたなお前……俺が大変なのに……呑気に……ねぇ……?」
「ごめんごめんって! でもこれもきっと役に立つよ!」
「ただのジュースだろ? 何の役に立つんだ?」
「何と! これを飲むと1個だけ改変を起こせるの!」
「改変? お前がよくしてる?」
「そう! つまり私の腕時計の力のお試し版、ジュース編って奴!」
「そんなもん、どっから購入したんだよ……」
「まあ、それは秘密! とにかくこれを飲んどけば厄介事を避けられるかもでしょ?」
「まあ、そうかもな」
「あ、ちなみに今は一本しか用意出来ないから安易に使わないでね?」
「はいはい……ありがたく貰っておくよ……俺のために用意してくれたんだしな……」
□ □ □
俺はこれを飲んで、誰かが襲われているという状況を改変で起こしただけなのだ。
そして実際には誰も襲われていない。
「さて……母さん、ただいま」
「あら、亡も帰ってきたの? 今日は皆帰ってくるわねぇ……!」
「そうみたいだな、何かあったらしく、皆そっちに向かった」
「そう? 気をつけて欲しいわね」
母さんはとにかく優しそうに見えるが正直……無茶苦茶怖い。
例えば、俺がニートになりたいと言った時も、家系図から消すと脅してきただけじゃなく、普通に土下座するまで、説教をされた。
だけども……怒らせなければ特に脅威でもないのだ。
「取り敢えず母さん……俺、頑張ってるから家系図から消すのは止めてください!」
「はぁ……? 何それ?」
「は? いやだって……合格しないと家系図から消すって……」
「あぁ……そんなの冗談に決まってるじゃない……? バカなの?」
は? は? は? はぁ〜???????
俺あんなに頑張ったのに????????
「えーと……ハハッ! 馬鹿でした……」
膝をつき、うなだれる。
暫く落ち込んだ後……。
気を取り直して……。
あれが冗談なら取り敢えず平穏には暮らせたルートもあったということだが……。
まあ別に……心廻との生活も悪くないしな……まあまだ一日目だけど……。
やっぱり俺チョロインだ……。
そんなふうに思ってると扉がノックされる。
「はーい? ……どちら様?」
「お前らは……!」
母さんが扉を開けて出てきた人物は紛れもなく、俺がこの世界に来てほしくなかったと昔から思ってる相手……食媒だった。
「母さんどけ! そいつらは敵だ! 俺がやる!」
「ワレワレハ、食媒……! ……をフッカツサセル……!」
食媒、奴らの目的はとある存在たちを復活させること……。
そして奴らがここに来た理由は……もちろん俺の二本の鍵だろう……。
「ハッ! まさか今日という日が始まりだったとはな……」
こうなるとあの2人も生きてるか怪しいな……。
「数はざっと5人……舐めるな……食媒ごとき何人屠ってきたと思ってるんだ!」
そうして速攻でケリをつけるために力を解放する。
「宣言……お前らの筋力を手にする権利を剥奪する……」
そう俺が宣言すると食媒は、体が崩れ落ちる様に足元から全員倒れたので後は俺が……。
――殴る。
――蹴る。
――殴る。
――蹴る。
――敵全員の息の根を止める……止めた。
「亡……貴方……今のは……」
「母さん……気にしないで……これはただの悪夢だから……」




