プロは暗躍する。
龍波荒己に負け、心廻に慰められた後、教室に戻り、学園での説明を受け放課後になった。
ちなみに周囲からの視線や教師からの視線は最悪だった。
哀れみ、見下し、優越感、等色々な感情の視線をぶつけられた。
まあそんな視線を受け流し、心廻と寮の部屋に帰還した。
「そういえばお前……なんかちゃっかりこの部屋にいるけども……女子寮に行かなくてもいいのか?」
この学園には女子寮と男子寮、そして七理の寮に分かれており、俺はもちろん男子寮なのだが……心廻は女子だからな……。
まあ、七理は男女別じゃないのだが……。
「え? 何言ってんの? 改変したから亡と同じ部屋、つまり同棲だよ!!!」
今絶対に聞きたくない単語が聞こえたが、心廻との付き合いが短くてももう分かる……これガチだ……。
「んで……これからどうするんだ、プロ」
少し嫌味気味にプロと呼んでみる。
「そうだねぇ……取り敢えず、七理がどれほどの実力なのか、もうちょっと知っておこうかなって……!? 私のこと、今プロって呼んでくれた!?」
いや正直嫌味だったんだが喜ばれると罪悪感が……。
「で……どうやって七理の実力を調べるんだ?」
七理はこの学園のトップだ、だからこそ、七理だけのクラスが用意される。
そのうえ、生徒会も兼任しているため、生徒会室という名の豪華な部屋も与えられるのだ。
そして接触は非常に難しいのだ、何故なら七理は七理達だけで関係性が完結している。
明確に七理と一般生徒がいる場所が分かれているのだ。
更に通常七理入れ替え戦は、学園に申請すれば誰でも受けられるが、それ相応の実力と成績がない状態で負けたら、結果主義のこの学園ではリスクが高すぎるだろう。
接触するとしたら、前回の龍波荒己との一件みたくあちら側からの接触を待つのが一番安全だと思うが……心廻だからな……。
「調べ方が知りたいの? ふふっそれは秘密♡ それに亡はまだ今のプランでは、七理の実力を知る必要はないからね」
「今のプランか……まあ、くれぐれも問題だけは起こすなよ……」
ぶっちゃけ俺は、心廻には逆らえないし、逆らう気力もないのだ。
なんだかんだ認めてるのかもな心廻のこと……。
もしかして俺ってチョロイン?
「……取り敢えず俺は実家までひとっ飛びしてくるがお前は?」
「うーん……行きたいけどね……今日はいいや! てか普通に移動には本当の力使うんだ……」
「当たり前だろ、誰にも見せないだけで楽になるなら普通に使う」
「そっか……やっぱり力は使用できるみたいで安心したよ! じゃ、行ってらっしゃい!」
□ □ □
――そうして亡が行った後……俺は……。
「う、うーん……心の中も俺から私に変えた方がいいのかなぁ〜?」
そんな事を考え、私は一人称を完全に変更する。
私がこの学園でまずやる事……それは亡と勝負した相手……龍波荒己をボコして実力を確認することだ。
「さて! 私の格闘見せちゃうよ!!!」
亡の事を考えると、そのままの姿で行くのは得策とは思えないので、腕に着けてるデバイス、その名もワールドエディタを起動し仮面を着けてる様に相手に認識させる改変を起こす。
仮面を本当につけてもいいけど邪魔だしね……。
□ □ □
そうして私は龍波荒己を呼び出す。
「神殺剣畏怖! 空間格解錠! 召喚状申請・貴方のいる場所」
空間格を使い、龍波荒己をこの場所に強制召喚する、場所は学園から離れた森の開けた場所だ。
「あ? ここどこだ……?」
呼び出された龍波は困惑しながらも、直ぐさま背中の大剣を握り警戒を忘れない。
確かに戦闘のプロではあるのかもしれない、だけど甘い、実力差がある相手にはどんなに警戒しようと被害は出る。
ならばどうするのか?
……答えは単純だ、逃げる、とにかく恥を捨てて警戒しながら逃げ続ける。
それをしなかった時点で、龍波の敗北は決定していたのだ。
「強化格……準強化殴打……」
龍波の腹に私の重い拳が入る。
「ぐっ!? 何者だっ……!」
龍波はその場に横たわった。
「ふっーまだまだだね……」
格闘……それはとある世界の力。
その世界では万物を格として閉じ込め、誰しもが自分の力として操る。
それが私が今使った戦闘技能、格闘だ。
神殺剣畏怖は、その中でも格として閉じ込められない力を私の剣に込めた特別製なのだ。
だが、この話は別の世界での出来事であり、別の世界の力だ、今はこれについて詳しく語る必要はない。
「まあ、七理と言っても所詮、多次元世界的に見れば地区大会のプロ程度しかないのよね!」
相手の実力も把握したし亡の仇も取った。
やる事は終わったので帰ろうとするが……。
「そこで見てるのは誰かな?」
「ブラボー、ブラボー、私には分かるよ、姿を隠してても、私の学園の生徒だろう?」
「一体何のこと? 私はこの学園に強い生徒が居るって聞いたから、ちょっかいかけに来ただけだよ?」
そこには、この世界に来てまず学園を調べた時に見た女性が居た。
あのフード着きの白衣の女は、学園長だ。
「とぼけなくていい……私には真理の眼があるからね、君が誰なのか分かるんだ」
「へー……で? だから?」
実際このワールドエディタの改変は万能ではない。
あくまでその世界ごとのルール内にあるものでしか、改変が出来ない。
その点は私の他の力とは明確に劣るポイントだ。
ただし他の力も劣りはしなくても厄介な状態ではあるが……。
だからこそ、その世界のルールに介入できる相手達には認識改変等が通じないのだ。
「君、この世界を勝手に改変しまくっているだろう? どうだい? その力を見込んで七理に入らないか?」
やれやれ面倒なことになったなー……ごめん亡。




