プロはアマを見捨てない。
「さ、着いたね、教室がある階に……!」
心廻と教室までやってきたが……。
正直、俺は嫌な予感しかしない……。
なにせ初日からサボる時点で変に目をつけられるのは分かっていたからだ……。
だがそれでも退学になる方法を探そうとしてしまったからこんな奴といるハメに……。
「失礼します! 2人ともサボってました! 許して?」
そんな事を言ったら火に油を注ぐ様なものだと思ったが、もうこいつの扱いは無理だと諦めたので最早流されるままだ。
「貴方達は確か……ああ、草羽亡君と、心廻さん……許してくださいもなにも、私はこの学園の教師ですが、この学園は結果が全て……結果が出せるなら咎めはしませんよ? さ、席に座ってください、2人は一つの机に二席ありますから」
ん? 一つの机に二席……???
「……おい……どういう事だ……?」
「え? そっちの方が話しやすいでしょ? だからそこも改変でどうにかしたよ!」
もう本当に何でもありなんだな……。
そうして席に着くと教師が話をしだす。
ちなみに周りの生徒はほぼ、俺達の事を気にしていない。
まあこの学園は結果主義。
結果さえ出せれば生徒間でもどれだけ荒唐無稽でも悪感情を抱かれるわけではないのだろう。
それに今日が入学初日、そこまでカリカリしてる様な余裕のない奴はそもそも合格なんざ不可能だからな。
「さて皆さん知ってると思いますが、この学園には七理という学園のトップ層が居ますね?」
七理……隣にいるこいつには目指せと言われたが……俺は目指す気はない……。
「七理はそれぞれが理の様に絶対不動であり、歴代のメンバーが卒業しない限り、変わらないからそう呼ばれてきました」
理の様に絶対不動だから七理か……。
理……それは本当に絶対不動なのか……俺はいささか疑問だがね……。
「しかし今年は違いました、既に2人落ちています、そこの草羽君の妹ともう1人中等部の葉森暗さんによって七理が入れ替わったのです……しかもお二方とも姉は既に七理だそうです」
「は?」
衝撃の事実を聞いてしまった……既に藍が七理になった!?
しかも暗まで……?
「何だか面白そうな事になってるね! 亡!」
「いや面白くないだろ……無駄な注目を浴びるのが確定してしまった……」
くそ! 藍まで七理なら、家族で七理になってない俺が白い目で見られて、面倒事に巻き込まれるかもしれないのか……!!!
大体いつ七理になったんだよ……。
「あ、そういえば……」
「どうしたの?」
「いや……そういえば藍の奴、学園に見学に行くとか言って、ボロボロになって帰ってきた時があったなと……その時に既に倒してたのか……」
なら納得がいく、藍がこの学園に入れたのも、母さんが藍にだけ家系図から消すと言わなかったのも、既にエリート街道を歩くのが確定していたからだ……!!!
「なるほどね〜君の家族と幼馴染達は能力者として優秀なわけね〜まあわたしからしてみれば、本気の君には叶わないけどね……」
「そんな褒めても何も出ないぞ……まあなんか悪くない気分でもあるけど……」
そんな愉悦に浸りかけそうになった、その瞬間に教室の扉が開く。
「ここか……あのムカつく女の弟が居るクラスってのは……」
柄の悪そうな赤い服の男が教室に入ってくる。
「貴方は……どうしてここに……」
「教師が口出しすんな、俺より弱い雑魚に用はねぇ……おい……居るんだろ? 草羽家の弟さんよ〜」
「どうする? なんか異世界だったらよくいる様な人出てきたけど……せっかくだしそろそろ名乗り出て勝負しかけて本気出してみたら……?」
確かに相手はよくいそうな、柄の悪さを感じる……が俺の見立てではこいつは……圧倒的な強者だ……。
立ち振る舞いから分かる、荒々しく見えても、こいつには歴戦の猛者たる警戒心がある。
「俺は七理の龍波荒己だ! 俺と勝負しようぜ! 草羽家の長男さんよ〜!」
教卓から龍波が大声で呼びかける。
「はぁ……」
「お……? ふーん……なるほどお前らしいな……」
そうして龍波は近づいてきて、俺に話かけた。
「そうだとしても……何で勝負とかいう面倒事をしなきゃならないんだ……?」
「決まってるだろこの学園では実力が全てだ! なら早々にサボったらしいお前もあいつや、新人の妹レベルがあるのか、確かめてやろうとな!」
「何でサボったの知ってるんだよ……」
「俺達七理は、生徒が出席してるかしてないかくらいはアクセス権があんだよ……それで逃げるか? 雑魚」
確かに七理には、その権限が付与されていたのを俺は思い出す。
「ええ……逃げさせて頂きたいですね……本当に……!」
「ちっ! 俺は同じ無能力者として、お前みたいな努力しない奴が大嫌いなんだよ! いいから俺と勝負しろ、さもないと妹をボコるぞ……」
はぁ……何だか面倒事に巻き込まれてそうだな……妹も……姉も……。
こんな奴が七理にいるなんて……さっきのカリカリする奴は合格出来ないって認識は改めないとな……。
「分かったよ……圧倒的な力を見せつけられてやる」
「よし、なら移動しようぜ、戦闘訓練場にな……」
□ □ □
「勝負はこの円から出るか、戦闘不能になった方の負けだ、始めるぜ!!!」
戦闘訓練場の中央にある、巨大戦闘スペースにて俺と龍波は対峙する。
「何だか大変だね、まあ私はジュース買ってくるから、それまでに終わらせといて」
「お前な……」
そうしている内に周りに野次馬が集まってきていた。
今授業中だろ! この学園の校則や教師はどうなってるんだ……?
「何事ですか……! 亡!? それに龍波まで……」
「おう! 雫! 今からお前の弟ボコるからな」
久しぶりに見たな姉というものを……それにちゃっかり、藍と幼馴染のあいつらも来てる。
「……亡、今すぐ龍波君に謝罪して許してもらいなさい」
姉さんがそう言うが、まあ謝る道理など無いわけで……。
「悪いけど、普通に謝る必要はないから……やるよ俺は……」
「……そう、好きにしなさい……私達七理がどれほど強いのか、無能力者という底辺にいる貴方は思い知りなさい」
姉さんが苦しそうに言いながら、後ろで幼馴染姉妹と藍も、少し申し訳なさそうに頷いている。
「はいはい……思い知りますよ」
思い知るのも何も、俺は初めからこの勝負負けるつもりしかない!
なにせ俺は……フッ、文字通り格が違うからな……。
「行くぜ! 火炎葬哀愁! 俺の大剣、火炎葬哀愁だ!」
火炎葬哀愁か……全く懐かしい名だな……。
「俺はこの一本と腕っぷしだけで七理まで上り詰めた! 俺の大剣は斬った相手の能力を哀愁漂う雑魚能力にする力が宿ってる、まあ無能力者のお前には単純な炎剣でボコるだけだけどな……!!!」
相手がそう言いながら突っ込んで斬りかかってくる、もちろん俺はそれを受けて……。
――ドゴッ!!!
気を失った。
「ハッ! 弱すぎるな、まあ峰打ちだ安心しろ……」
「おいおいおい、アイツ初日からサボった癖に一撃かよ……」
「亡……これで身の程を知ることね」
「まあ、これがアイツの実力だったってことだろ? まあ幼い時から無能力者だって知ってたから分かってたがね……」
「姉様……私達幼馴染なんだからもっと優しくしてあげないと……」
「お兄ちゃん、仕方ないよね……このまま弱いままでいてね」
そうして目を覚ますと……。
「うわっ!」
「あ、起きた!? やられちゃったね〜」
「お前……膝枕って……何してんだよ!?」
正直……性格を除けば美女に膝枕されるのは悪くないがそんな事より……。
「あいつは?」
「もう皆帰ったよ……やっぱり本気出さなかったね……君は……」
「見損なったか?」
「いや……あそこで本気を出せばイヤでも注目される……今の君の性格から本気を出さないのは分かってたからね……それに……プロはアマチュアを見捨てない! ってね! さ、よしよし頑張ったねぇ〜」
「ちょっ! やめろって!!!」
そのまま膝枕されながら暫く頭を撫でられ続けた。
少し加筆しました




